前楽の『ルパン -ARSÈNE LUPIN-』『Fantastic Energy!』を2階B席で観劇。
新作の『ルパン』を、開演2日目に観た時は、個々人の巧さが目立っていたが、1か月近く経つと演者同士の間合いやセリフのテンポが揃い、物語の流れの中で強調されるべき所がきちんと強調されるようになった。舞台としての質が安定して、ストーリーが理解しやすくなった。2階席からだとスポットライトを浴びて踊るルパン+ルパンの影(コロス)の姿がよく見えて良かった。
『Fantastic Energy!』は、相変わらずハードでパワフルなショー。テーマソングが耳に残る。
本日の千秋楽おめでとうございます。越乃 リュウ組長、こころさん(妃鳳 こころ)、みつこさん(紗那 ゆずは)、お疲れ様でした。東京公演も順調に運びますように。
【★ネタバレ警報】
- オチ
『理の書』オチはもう少し説得力が欲しい。脚本が原作に忠実なのは理解しているのだが、冒頭の場面から、「400万ポンドの金貨」が強調されたので、そちらに気を取られてしまう。原作では冒頭で、アルセーヌ・ルパンの曾祖父のルパン将軍が、『理の書』を手に入れた経緯が描かれているのだが、舞台ではカットされているので、『理の書』の重要性がピンとこないで終わってしまうのだった。
- キャスト
カーベット@沙央 くらまの部下エメット役の鳳月 杏の演技が目を引いた。カーベットに、大公令嬢カーラを誘拐するように指示されて、部屋を下がろうとするのだが、その前に優雅に右手を体の前方に添えて一礼をする(貴族のお辞儀)。その動作と声音がなんとも言えず皮肉っぽくて、頭ごなしの命令にやや不満げな内心が現されている。ほんの一瞬の動作に、鳳月 杏の表現力を感じた。カーベット@沙央 くらまは、黒のアイシャドウに、緑のハイライトを入れているのかな。メイク一つで印象がものすごく変わる。
みっちゃん(モーリス・ルブラン@北翔 海莉)は間の取り方が絶妙に巧い。アルセーヌ・ルパン@龍真咲が、徹底的にシリアスで他人行儀を崩さないのに対して、モーリス・ルブラン@北翔は臆さず、その実直さでもって、丁寧にルパン@龍の「最後の物語」を聞き取っていく。他人に対して心を閉ざしているアルセーヌ・ルパン@龍を見守り、伝記作家としての第三者的立場と友人としての立場の兼ね合いを上手に保っている。
ルパン@龍も、そのルブラン@北翔 の気遣いを感じているからこそ、私室にルブランを招き入れ、悩みを打ち明ける。このおずおずとはしているが、固い絆がある限り、この二人はまた邂逅するのでは、と思わせてくれる。ルパン@龍は笑わないヒーローなのだが、最後にカーラ@愛希れいかと結ばれて、やっと笑顔になるのが嬉しい。
発明家(?)ヘリンボーン @越乃 リュウが、妻・ビクトワール(ルパンの乳母)@飛鳥 裕に、「おまえが俺をモノにしたんだよ」というシーンは忘れられない。ナイス、組長!! お疲れ様でした。