月組公演ミュージカルとショーの2本立てを堪能しました。ミュージカルのほうがミステリアスで緊迫した物語なのに対し、レビューは歌いまくり踊りまくりのエネルギー発散タイプ 。2本立てって、こういう組み合わせが出来るので、一粒で二度美味しい気分になれて好きですね。ミュージカルとショーの双方で、配役がうまくなされていて、主要スター(上級生)達は、見せ場が必ず1回はある。こういう配慮も嬉しい。
■グランド・レビュー『Fantastic Energy!』の感想
55分間の月組全力疾走 レビューだった。最初から最後までアップテンポで、極彩色のラメラメの衣装【→デイリー写真】に身を包んだ月組生たちが、入れ替わり立ち替わり歌い踊る。『歌劇』7月号の座談会で、龍真咲が「体力的にも限界を迎えるショーになるんじゃないかなと思うので(笑)」と言っているが、観ている側も、こりゃ大変だわと思う、はじけっぷり。プロローグの猛スタートには、楽しいというより、呆気にとられたという感じだった。
龍真咲・愛希れいかトップコンビは、どちらかが必ず舞台で歌うか、踊っている。龍真咲の周囲では、星条 海斗・美弥 るりか・珠城 りょうなどが踊り、そして、龍がはけると、北翔 海莉が出る。その両脇には、凪七 瑠海と沙央 くらま。北翔 海莉はソロが数曲あるので、歌声を堪能できる。
ちゃぴ(愛希れいか)が、とても可愛い!!パンツルック、レオタードにフリンジがついているタコ足ダルマ【→デイリー写真】、ピンクのキュートなロングドレスとお衣装をどんどん変えながら、踊りまくり。きびきびとした切れの良いダンス。ソロで美しいソプラノも響かせてくれた。ラテンの”薔薇伝説”は、まさお(龍真咲)が、黒い鬘に赤と黒のお衣装でお耽美に歌うのだが、背後に十字架が浮いているあたり、個人的には、ヴァンパイアのイメージ。トップコンビのデュエットダンスも素敵だった。
主要キャスト(上級生)すべて、ソロの場面があり、銀橋を渡る。この公演で退団の越乃 リュウ組長もソロあり、組長独特の艶っぽさで踊る。この辺りの配慮があるのが、中村一徳演出の嬉しいところ。珠城 りょうも銀橋のソロがあり、バウ公演『月雲の皇子』【→感想】主演の成功で、月組若手トップの扱いになった印象。娘役では咲妃 みゆ がランクアップ。憧花 ゆりの副組長も踊りまくっていたぜ。
娘役達の華やかな群舞あり、黒燕尾の男役群舞あり、山場てんこ盛りレビュー。最後のほうは、みんな汗だくで、メイクも崩れかかっていた(オペラグラスで見るとわかってしまう)。おつかれさまです!
■ミュージカル 『ルパン -ARSÈNE LUPIN-』の全体感想
舞台は、アルセーヌ・ルパンが、自分の最後の事件を伝記として残すために、モーリス・ルブランに起こった出来事を語るという形式で進められる。アルセーヌ・ルパンを演じるのは、月組トップスターの龍 真咲、モーリス・ルブランは専科より特出の北翔 海莉。ルパン@龍の語る回想シーンが、舞台で繰り広げられ、ルブラン@北翔は、その場面に立ち会い、書き留めながら、時折、ルパンと二人で向かい合っている現実に戻り、回想の続きを促す、という入れ子構造で物語は進んでいく。
ルブラン@北翔は、ルパン@龍の回想を聞き、伝記を記す立場であり、ルパンの「最後の事件」にはまったく介入していない。北翔 海莉のルブランは、ルパンを「我がヒーロー」と呼び、英雄譚を聞くように、ワクワクして、ルパンの回想に没頭する。みっちゃん(北翔)ファンのわたくしは、完全にルブランに共感してルパンの活躍を見てしまった。
ヒロインは、”アルベール・ド・サヴリー大尉”として、ルパン@龍が後見人になっているレヌル大公令嬢カーラ@愛希れいか。カーラ@愛希の後見人は、ルパン/アルベール@龍と、ヘアフォール伯爵@美弥 るりか、ドナルド・ドースン@凪七 瑠海、ウィリアム・ロッジ@煌月 爽矢の4人である。
これに、オックスフォード公@宇月 颯とその秘書のカーベット@沙央 くらまを加えたキャストがストーリーを引っ張っていくのだが、この人たちがあくまでシリアスなので、笑いとウィットを添える役目をガニマール警部@星条 海斗と予審判事フラヴィ@憧花 ゆりのが担っている。
また脇役にルパンの乳母ビクトワール@飛鳥 裕 とその夫ヘリンボーン @越乃 リュウなど、芸達者の上級生をバランス良く配置し、スムーズにストーリーを展開していく。下級生達も人殺し三人組やルパンの部下や敵の手下役などで、随所に登場して、個性を光らせていた。この配役の妙は、劇団専属作家としての風格を感じる(脚本・演出/正塚晴彦)。
ただ、事件は、謎めいてはいるのだが、大きな殺陣や見せ場があるわけではない。全体として、物語は静かに粛々と進む。笑いの取り方も、「大喜利(だじゃれ)」や「コメディタッチの言動」などではなく、役者の表情や演技力で笑わせるという手法を取っている。←要はちょっと地味。
それでも、キャストの独白が交差する回り盆を活用した場面や暗転に次ぐ暗転で舞台を切り替え、謎めいた雰囲気を盛り上げるという巧緻さが、正塚作品のハードボイルドテイストなんだなぁと観劇歴の短い身でも、感じ入りました。
各キャストの感想は(2)にします。 【→原作 『ルパン 最後の恋』感想】
■主演・・・(月組)龍 真咲、愛希れいか
- ミュージカル『ルパン -ARSÈNE LUPIN-』
- モーリス・ルブラン作「ルパン、最後の恋(ハヤカワ・ミステリ刊/ハヤカワ文庫近刊)」より
- 脚本・演出/正塚晴彦
- グランド・レビュー『Fantastic Energy!』
- 作・演出/中村一徳
宝塚大劇場公演:公演期間:7月12日(金)~8月12日(月)
『ルパン -ARSÈNE LUPIN-』 主な配役
- アルベール・ド・サヴリー龍 真咲 :カーラの後見人の1人・アルセーヌ・ラウール・ルパン
- カーラ・ド・レルヌ 愛希 れいか :大公令嬢
- モーリス・ルブラン 北翔 海莉 :ルパンの伝記作家
- ビクトワール・エルヌモン 飛鳥 裕 :ルパンの乳母
- ヘリンボーン 越乃 リュウ:ビクトワールの夫
- ジュスタン・ガニマール 星条 海斗:フランス警察警部
- フラヴィ 憧花 ゆりの :予審判事
- ドゥーブル・チュルク 綾月 せり :人殺し三人組
- フィナール 光月 るう :人殺し三人組
- プス・カフェ 紫門 ゆりや :人殺し三人組
- ドナルド・ドースン 凪七 瑠海 :カーラの後見人の1人
- ヘアフォール伯爵 美弥 るりか :カーラの後見人の1人
- ウィリアム・ロッジ 煌月 爽矢 :カーラの後見人の1人
- オックスフォード公エドモンド 宇月 颯 :次期イギリス国王候補
- トニー・カーベット 沙央 くらま :オックスフォード公の秘書
- エメット 鳳月 杏 :カーベット の部下
- ジョゼファン 珠城 りょう :ルパンを尊敬し、手伝う
- マリ・テレーズ 咲妃 みゆ ルパンを尊敬し、手伝う
(あらすじ)
パリの街では、イギリスから送金された金貨400万ポンドが盗まれ、それが死んだはずのアルセーヌ・ルパンによるものであるという噂で持ちきりであった。金貨強奪はアルセーヌ・ルパンを騙った偽者の仕業であったが、それ知っているのは本物のアルセーヌ・ルパン@龍 真咲だけである。ルパン@龍は、自分の誇りにかけて、盗まれた金貨400万ポンドを取り戻し、真相を解明することを誓う。
ルパン@龍は、亡くなったレヌル大公から依頼され、”アルベール・ド・サヴリー大尉”として、レヌル大公令嬢カーラ@愛希れいかの後見人になっている。カーラ@愛希には、アルベールのほかに、3人の後見人(ヘアフォール伯爵@美弥 るりか、ドナルド・ドースン@凪七 瑠海、ウィリアム・ロッジ@煌月 爽矢)がいる。
カーラ@愛希が、4人の後見人の中でもアルベール/ルパン@龍を最も信頼しているのは誰の目にも明らかであったが、彼はカーラ@愛希に、オックスフォード公エドモンド@宇月 颯と結婚するように勧める。その裏で、ルパン/アルベール@龍は、カーラ@愛希を巻き込んだ国際的な陰謀の存在に気づき、正体の分からない敵との謀略戦を始めようとしていた。