[diary] COVID-19パンデミック雑記(61)メッセージはわかりやすく

8月31日のうろこ雲


東京2020パラリンピック閉幕

東京2020パラリンピックは、9月5日に閉幕。車いすテニスや車いすラグビー、車いすバスケットボール、陸上競技、ボッチャとテレビ放送を見ました。さまざまな工夫を重ねながら、競技に挑むアスリートにはエールを送りましたが、内心は複雑でした。感染拡大は進行し、医療はひっ迫しています。

競技が終わると日本の選手達が、不織布マスクの上に選手団共通の赤い布マスクの二重マスク姿でインタビューに答えていて、選手達も厳しい規律を守って競技に挑んでいるのだなとしんみりして見てました。

ががが、NHKサラメシの、(15)「東京2020組織委員会で働くオトナの奮闘!」で組織委スタッフが、ウレタンマスクや布マスクで登場してちょっと拍子抜け。

とにもかくにも選手団、スタッフ関係各位の皆様、お疲れ様でした。パラリンピックの発展とバリアフリーの共生社会が大きな目標として国民のコンセンサスになった大会でした。感謝。

矛盾したメッセージだらけだった6月

オリンピック・パラリンピックは、開催する土地の活動を活性化させ、巨大な人の波を起こす超特大の国際イベントです。

この夏、東京2020オリンピック・パラリンピックの開催はさまざまなイベントや活動を誘発したのではないか?

6月、政府と組織委員会は、オリパラ開催に向けて、都内で取られていた感染拡大防止策とは相反する社会活動の活性化案を流しました。

6月20日、沖縄を除く9都道府県の緊急事態宣言を解除

6月22日、東京オリンピックの国内観客を全会場の上限を「収容定員の50%以内で5000人」から「収容定員の50%以内 で1万人」に見直すことに決定

この決定に先立つ6月18日、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身会長を中心とする専門家有志が、「無観客開催は、会場内の感染拡大リスクが最も低く、望ましい」とする提言を政府と大会組織委に提出していました。

無観客の提言はどうなるのか。

オリンピックではスポンサーや大会関係者は1万人定員とは別枠と報道されたことで、尾身先生は矛盾したメッセージへの懸念を表明

東京五輪の開会式に、政府などが「最大1万人」で観客上限を検討しているのとは別枠でスポンサーなど大会関係者を入れる調整をしているとの一部報道について、政府の対策分科会の尾身茂会長は18日、「運営や準備をする人でない人がいっぱい来れば、矛盾したメッセージになる」と懸念を示した。

五輪観客の別枠は「矛盾したメッセージに」 尾身会長:朝日新聞デジタル(2021年6月18日) 

パブリックビューイング準備の報道(6月19日都内全て中止)や会場内で酒類の販売や提供を検討(6月22日見送り)など、矛盾したメッセージに国内のざわめきは相当なものでした。

国内のイベント制限はどうなるのか。

東京オリンピックが、専門家有志の提言を受けて、1都3県一律無観客に決定したのは7月8日。

東京都に4度目の緊急事態宣言が発出されたのが7月12日。

緊急事態宣言下で東京2020オリンピックは開催され、感染爆発が起こります。


有観客上限1万人で開催していたらどうなっていたのだろう

東京都の小池百合子知事が下記のように会見で、東京2020オリパラ開催が「感染爆発につながるというのはなかった」と発言されたそうです。

「私どもは五輪パラリンピックが人流をあげて、それによって感染を増やすということは前提としておりません。むしろオリパラが感染を増やすとおっしゃっていた方が、エビデンスとともにお示しいただきたいと思います」

小池都知事、新型コロナ実効再生産数は五輪開催前日がピーク「このファクトを理解いただきたい」 : スポーツ報知 

オリンピック・パラリンピックを開催して、感染爆発が、”ある意味”「この程度で済んだ」のは、海外からの観光客を入れず、選手団や海外からの関係者もギリギリまで人数を絞ってワクチン接種を進め、バブル方式で行動制限を課し、パブリックビューイングを中止して、緊急事態宣言下で(首都圏)無観客開催にして、総人流を抑えたからです。

有観客開催だったら

有観客で開催した場合、人流はどうなったでしょう。

無観客開催となったため、払い戻されるチケットの枚数はオリパラ計436万枚。

プロ野球に課されているイベント制限条件(「最大収容人数の半分」かつ「5千人」以下)を適用した試算では、期間中の観客数は312万人(試算)

千葉県資料によると立候補時の試算では、

大会期間中観客動員数 1,010万人
1日あたり 最大92万人(東京都立候補ファイル)
年間訪日外国人の増大1,000万人⇒2,000万人(政府目標)

大会組織委員会の発表によると東京オリンピック(五輪)の観客数は、首都圏以外(宮城県、茨城県、静岡県)で「計4万3300人」だったそうです。北海道の競歩とマラソンについては公道に見物の人出はあっても、無観客開催なのでノーカウントです。

「五輪パラリンピックが人流をあげて、それによって感染を増やすということは前提」(小池都知事)としてるから、これでもかこれでもかと政府と組織委と開催地が対策を講じたのではないのですか。

有観客1万人上限で開催していたらどうなっていたのか。新規感染者数1日3万人コース?5万人コース?もっとかな。本気で”ぼくはこわい”し、今も大勢の方たちが治療・療養中であることを考えると、無観客開催だったからセーフとはとても思えません。

ファクトは那辺にあるのか。再検討をお願いしたいところです。


さらなる科学的な分析を待つ

小池都知事が、東京2020オリパラ開催が「感染爆発につながるというのはなかった」と発言された、その根拠は、「実効再生産数のピークが開会式前日の7月22日とされていること」だそうです。

実効再生産数(effective reproduction number: Rt)とは、「感染状況を示す指標の1つで、1人の感染者から何人に感染が広がるかを示す」(NHK特設サイト)指標で、「1」を上回ると感染拡大が持続し、「1」を下回ると減少に向かうとされています。⇒参考)新型コロナウイルス感染症の感染性 (IASR Vol. 42 p30-32: 2021年2月号)

東京都の小池百合子知事は10日の定例記者会見で、「東京五輪・パラリンピックが新型コロナウイルスの感染爆発につながるというのは結果的になかった」との認識を示し、関連を改めて否定した。

小池知事「ピークは開幕前」五輪とコロナ拡大、関連を否定 ただ資料上は…:東京新聞 2021年9月10日

小池都知事が使った発症日ベースの厚生労働省アドバイザリーボードのデータというのは西浦先生の提出資料(9月8日)だと思われます。実効再生産数のピークに、7/22の文字とマーカーを入れてみました。


第51回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年9月8日)

7/22はオリンピック開会式前日、オリンピック用に今年だけ祝日を変更して作った4連休の初日です。以降は、Rtがガクンと下がってるのはなぜなんでしょう。予防接種効果?オリンピックはおうちでテレビ効果?緊急事態宣言効果?

西浦先生も「科学的に明確でない」と指摘されています。

実効再生産数は、計算式と加味する要素で変わってくるので、東京都モニタリング会議の9月9日資料(上段は夜間滞留人口推移、下段は実効再生算数)の実効再生産数のピークは7/31です。

新型コロナデータサイトでも実効再生産数ピークは7/31です。

第5波の災害レベルの感染拡大は、なんとか減少に向かいつつあります。その理由についてはさらなる科学的な分析が必要でしょう。

(第62回)東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料(令和3年9月9日)

行動制限の緩和は緊急事態宣言の解除後

変異ウイルスの流入があり、人の移動や交流という活動性を抑えたい夏だったので、やっぱり、この夏のオリパラ開催は厳しかった。そういう思いは拭えません。関係各位の方々は大変お疲れ様なのですが、手放しで楽しめないオリパラ開催でした。

尾身先生の9日会見での発言は、緊急事態宣言下で開催したオリパラを踏まえての言葉に思えました。文字修飾してみました。

行動制限の緩和は緊急事態宣言が解除されることが前提だ。

宣言が出ている中で人々の行動を緩めることはすべきではない。間違ったメッセージになるからやめましょうと国にも伝え、そういうことはないということを何度も確認した」

「3回目のワクチン接種検討 専門家から政府に提案」尾身会長 | NHKニュース  2021年9月9日

矛盾したメッセージ、間違ったメッセージは避け、

公衆へのメッセージはわかりやすく!!