[Zuka] 2016年宙組『エリザベート-愛と死の輪舞-』

宙組公演 『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』 が、7月22日に始まって、2週間が過ぎました。

宙組のエリザベーは、朝夏まなとを頂点とする組のピラミッド構造が見事に反映された座りの良い舞台になっていました。初見はやや物足りなかったけれど、3回目(8月7日)はそれぞれのキャストの解釈が深くなり、ボルテージが上がっていて、大劇場千秋楽、そして東宝では更に素晴らしいものになっていく予感がします。

花組の時に何を書いたかと思って、読み返しみたのですが、やはり組の個性で受ける印象が全く違う。花組は「孤独と狂気」だったけれど、宙組は「危険な愛/禁じられた愛」です。

一部、削除・修正し、追記しました。(更新:2016/08/10, 修正:2016/08/11)

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宙組エリザベートを象徴するのは、やはりポスターとパンフレットの表紙です。

宙組エリザベート
宙組エリザベート

見よ、トート(朝夏まなと)に抱かれるエリザベート(実咲 凜音)の魅入られ、陶然とした顔!そして闇の中にスタイリッシュにマントを翻して立つ、黄泉の帝王トート(朝夏)の優美な姿。

朝夏まなとのトートは、人と同じ目線でもって、エリザベートを愛する。クールでいて、内心は熱い。

朝夏トートには、人に対する理解があるが、それゆえに愛するエリザベートの抵抗には人ならざるものである己への苛立ちと苦しみがある。

生きたお前(エリザベート)を愛したいのに、その生命を奪わなければ、黄泉の世界には迎えられない。黄泉の帝王が抱いた愛の苦しみ、その苦しみに乗じて立ち上がる、暴力性と冷酷さ。

(*修正箇所)
オーストリィ皇帝フランツ(真風 涼帆)の浮気現場の写真をエリザベート(実咲)に見せ、彼女に絶望を与え、死を迫るが拒絶される。この時のトートのお衣装は、赤地にマントの裏には炎の柄まで入っている。トートにとって、エリザベートに生きる希望を与えたのは、フランツであって、フランツとエリザベートの間を引き裂けば、自分の、「死」の元に来るという読みだったのだろうか。トートの嫉妬の業火は、エリザベートの「生きてさえいれば」という決意を燃やしただけのように見える。だが、徐々にエリザベートの心をトートに引き寄せて行ったのだろう。

エリザベートが死を欲したのは、皇太子ルドルフを亡くした時だ。ルドルフを見捨てた罪悪感から、死にすがりつくエリザベートをトートは、「死は逃げ場ではない」と拒否して、突き放す。朝夏トートは、エリザベートの命を望み、彼女と皇帝の結婚に激しい怒りを持っているが、自立心と誇りを持って自分の人生を歩み始めたエリザベートを愛している。

”お前の生命奪う替わり 生きたお前に愛されたいんだ” (愛と死の輪舞)

誇りを失い、死に逃げ込むようなエリザベートを、黄泉の帝王は選んだのではない。
何という矛盾!だが、懊悩する朝夏トートには、実咲エリザベートが生きる姿への愛を感じるのもまた事実である。

 

 

日を重ねるごとに、作品全体を朝夏まなとの演じるトートの愛が覆っていく。この舞台が熟成すると、どんな姿になっているのか。いま、これを書きながら、『エリザベート』を演じきった宙組の進化を思い、胸を高鳴らせている。(東宝に遠征予定がないのだけれどね。いやその。)

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三井住友VISAカード ミュージカル 『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』

脚本・歌詞/ミヒャエル・クンツェ
音楽/シルヴェスター・リーヴァイ
オリジナル・プロダクション/ウィーン劇場協会
潤色・演出/小池 修一郎 演出/小柳 奈穂子

ウィーンで誕生したミュージカル「エリザベート」が、黄泉の帝王トート(死)を主役に置き、宝塚独自の装置、衣装、振付による宝塚版として初めて上演されたのは1996年。独創的なストーリーと美しい旋律で彩られたミュージカルは多くの人々を魅了し、宝塚歌劇を代表する人気作となりました。日本初演から20周年を迎えた2016年、朝夏まなとを中心とした宙組が、その歴史に新たな1ページを刻みます。