12月20日は、星組トップコンビ(北翔海莉・妃海風)の退団公演であった『桜華に舞え』-SAMURAI The FINAL-『ロマンス!!(Romance)』(公式)東宝千秋楽を観劇し、さやかさん(美城れん)のフェアウェル・パーティに参加して見送り(見送られ)、夜行バスで帰阪した。あれから1か月が経ち、北翔海莉はすでにクリスマス・ディナーショーを終え、来年のスケジュールも、レコーディング、全国ツアー、コンサート、9~10月『パジャマゲーム』(日本青年館、シアタードラマシティ)まで発表されている。北翔海莉オフィシャルWEBサイト
その退団後の生き生きした様子を見て、誰かを思い出した思い出した。ああ、北翔海莉も解き放たれたんだろうな、という思いに囚われた。
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何度も書いているが、私の宝塚歴は4年ほどで北翔海莉の出演作を観劇し始めたのは、北翔が専科に組替えになった直後の雪組『JIN-仁-』からだった。月組でスター街道をまっしぐらに進み、宙組で3番手を務めた北翔海莉の専科への組替え…。北翔にとって試練だったと思う。
専科での3年「必要な試練」 宝塚退団する北翔海莉さん:朝日新聞デジタル (2016年4月28日)
専科に組替えしてから、北翔は途切れることなく公演に出演し続け、全組出演を達成した。のちに主演男役に就任することになる星組に初めて出演することになり、以下のように話していたのが印象に残っている。
私は星組さんへは初出演で、これで5組全部を制覇することになります。スケジュール的には大変なんですが、専科は呼んでもらわないと出られないし、呼んでもらえるような役者にならなければいけない。100周年の幕開けの失敗できない作品(『眠らない男・ナポレオン ―愛と栄光の涯に』)に呼んで頂いたので、期待に応えられるように頑張ります。
【ベテラン記者のデイリーコラム・平松澄子の麗しの歌劇】2013.11.16
謙虚さでカバーされてはいるものの、この危機感はなんだろう。各組公演に引っ張りだなのに、この危機感で休みもなく、公演に出演し続けるのだろうか、と観る側として一抹の懸念を覚えたことを思い出す。北翔の出演作は、必ず面白いものになると私は信じていたので、観劇を欠かさないようにしていたが、この記事を読んだ後は、この人はどこへ行くのだろうとも思いながら観ていた。専科のままで突き進むのか、あるいは退団か、あるいは…、と。
そして発表された星組のトップスター就任(2014/12/09)。ようやく先が見えた瞬間だった。
お披露目公演の星組公演 『大海賊』『Amour それは・・・』は、同じく星組公演『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(→2015/06/21)を追っかけてたので、梅芸での千秋楽しか観劇できなかったが、初日から大喝采の大好評だったと記事で読んで、そりゃ、みっちゃんだものと思っていたのを思い出す。
自分がつけているということよりも、皆さんがそれを客席から喜んでくださることが嬉しくて、毎回感動していますね。支えてもらっている感謝の気持ちでいっぱいです(大劇場で大羽を背負った感想は?という質問に対して)
トップに就任した北翔から出てくる言葉は、「支えてもらっている」、「恩を返したい」というファンへの感謝の言葉だった。スターとファンの関係は相互作用だ。活躍を観たい、笑顔を観たい、幸せそうな姿を見たいと願うファンと、舞台に立ちたい、頂いた役に相応しくなりたい、ファンの期待に応えたいと願うスター達。支え、支えられ、支え合い、引っ張り、引っ張られ、引っ張り合う。年月を重ね、思いが深まるにつれ、その繋がりを変えるのは容易ではなくなってくる。
「トップスターに就任し、円満に退団する」のは、全方面が満足する繋がりの変え方である。そのポジションに就くことは誰にでも出来るわけではなく、全方位に配慮した花道を手に入れられる者はわずかだが、北翔海莉は3年という試練の時を経て、そのチャンスを手に入れた。
だが、実際のところ、トップスターになってからの北翔の芝居(ガイズ&ドールズ)には迷いも見えた。彼女が光り輝いたのは、やはり歌…『LOVE&DRAEM』だった。北翔は、身体を楽器のように使う人、使えるように鍛錬してきた人である。2016年1月『LOVE&DRAEM』で、北翔はタカラジェンヌとしての魂をかけて歌っていた。「シナーマン」の絶唱は記憶に残る。その魂の込め方、自らのリミッターを外してのエネルギーの注ぎ方に、私は「生き急ぐ」という思いを抱いた。
そして発表された退団(2016/04/27)。相手役の妃海風との同時退団となり、コンサート『ONE VOICE』や『桜華に舞え』『ロマンス!!』の演目が発表され、中身が明らかになるにつれ、北翔海莉はどんどん幸せそうになっていった。
宝塚歌劇団においての、これまでの彼女の道程を思うと、それも道理だと思う。北翔海莉のサヨナラ特別番組のタイトルは、退団公演『桜華に舞え』に合わせて、「義・真心・勇気」であったが、「義」というのは、「道。人の行うべき正しい道」であり、「人道のために尽くすこと」であるという。そう、彼女は筋を通す人である。用意された、自分の意とは、異なる道であろうと、全力を尽くす。そして全力で、宝塚歌劇を愛し、星組を愛し、相手役の妃海風を愛し、ファン・観客を愛する。
彼女が退団公演で演じた桐野利秋はまさしくそういう人物であった。西南戦争を起こしても、もはや歴史は変えられない、明治幕府は倒れない、そんなことは百も承知。だが、怒濤の歴史の中で、命を賭けうる人(西郷隆盛:美城れん)に出会い、世界が変わる瞬間に真ん中に立っているだけでも奇跡であろう。桐野利秋はここで果てても、衣波隼太郎(紅ゆずる)が歴史を生きて行く。悔いは無い。
そうやって彼女は飛び立っていった。
株式会社KAIRIの法人番号指定の日付が4/28更新というのに、なんだか微苦笑だったが、彼女の人生の第二章のために、彼女自身が用意した道である。「タカラジェンヌはつぶしがきかない」という危機感を常に持っていた人が、自分のやりたいことのための道を用意し始めるとどうなるか。
北翔海莉は、己の信じる正しい道、正しい芸の在り方を模索し、険しい道をこれからも行くであろう。だが、その道は明るい。これからもあなたの舞台で輝いてください。きっと叶う。「開拓者」(→2016/04/29)でOKっぽい(笑)。
ブリはね、回遊魚でもあるし、出世魚(wiki/出世魚)でもあるんだよ、みっちゃん。さすが岡田先生。→【橋本奈実の芸能なで読み】「泳ぎ続けるブリのように休まない」北翔のサヨナラ公演 演出家・岡田敬二氏7年ぶり新作レビュー語る – 産経ニュース
株式会社KAIRIスピリッツと株式会社KAIRIは別会社なのだな。