[Stage] [773] 科白劇 舞台『刀剣乱舞/灯』(3)神の国の盟主ガラシャ

科白劇かはくげき 舞台『刀剣乱舞/灯』ともしび
綺伝きでん いくさ徒花あだばな
改変 いくさ世の徒花の記憶
(脚本・演出:末満健一)公式サイト

感想です。


[あらすじ]すでに粗筋じゃないです(; ・`ω・´)ごめんなさい

歴史を守ることは刀剣男士の本能

「神の国」慶長熊本のキリシタン大名達に刀剣男士達は接触を図り、その思惑を探る。歴史改変を見逃せというキリシタン大名と歴史を守ろうとする刀剣男士達は最後まで相容れることはなかった。物事の捉え方が根底から異なっていた。

山姥切長義(梅津瑞樹)と亀甲貞宗(松井勇歩)に相対した、摂政のドン・フランシスコ、大友宗麟は言う。

わしらはただ生きたいだけじゃ。

神の国が正史から分岐した1857年(天正15年)に豊臣秀吉はバテレン追放令を発布している。正史では、以降、徐々にキリシタン迫害の動きは激しくなり、キリシタン達は棄教を迫られ、信仰を捨てぬ者たちは弾圧され処刑された。

キリシタン大名達は正史でのキリシタン弾圧の未来を知ってしまった。だが、刀剣男士が「神の国」を見逃せば、大勢のキリシタン達が助かる。ドン・フランシスコとドン・シメオン、黒田孝高(山浦 徹)は刀剣男士二振りに、見逃してほしいと慈悲を乞うた。

それに対して山姥切長義と亀甲貞宗の返事は取り付く島もなかった。

歴史を守るのは僕たち刀剣男士の本能。

改変された歴史は歴史ではない。

斬れるか斬れないかの話ではない。斬る。

お前たちの願いは十分にわかった。だから斬るしかないんだ。

ここの会話はすれ違いの平行線だった。キリシタン大名達は、刀剣男士を「物にして物にあらず」と言い、人のことわりを説こうとする。それに対し、山姥切長義と亀甲貞宗の二振りは、「俺たちは人ではない」と言い切り、決してキリシタン大名側に寄ろうとしなかった。

刀剣男士達にとって、歴史を守ることが本能。使命でも正義でもなく、本能であると彼らは言う。それが刀剣に宿りし付喪神「刀剣男士」。

本能とはなんだろう、という疑問はさておく(専門的には定義がややこしいらしい)。

要は歴史改変を企む者と時間遡行軍には問答無用というのが刀剣男士なのだ。


神の国の盟主・細川ガラシャと刀剣男士・地蔵行平

不思議だったのは地蔵行平である。刀剣男士である地蔵行平(星元裕月)は歴史改変の因果である細川ガラシャ(七海ひろき)に生きてほしいと言った。

せめてこの世界でだけは、そなたに生きていて欲しい

「この世界」というのは、放棄された世界のことだろう。

1857年は細川玉が洗礼を受け、ガラシャ、神の恵みという洗礼名を授かった年である。父・明智光秀が本能寺の変で織田信長を弑してから5年。仲睦まじかった夫・細川忠興(早乙女じょうじ)によって味土野に幽閉され、夫婦の間柄は変質した。彼女はそして時間遡行軍に出会い、自分の未来を知る。

どうしてあの人は私の死を命じたのでしょう。

私の死はきっとあの人の望んだもの。

ならば自分のその手で切ればいいのに。

彼女はその問いを何度も胸の内で繰り返しているのだろう。近い未来の自分の死を知った彼女はキリシタンの集う神の国を作り、世界は放棄された。憎むほどに愛した夫・細川忠興を彼女は捨てた。

それなのに彼女は細川忠興に囚われたままだ。神の国を作って生きながらえたが、今だに、あの時、なぜ夫は自分の手で私を切らなかったかと考えている。

地蔵行平は、そんなガラシャをここにいてはダメだと熊本城から連れ出し、せめてこの世界で生きていてほしいと願った。

なぜ地蔵行平は刀剣男士の歴史を守るという本能に逆らってまで、改変世界の因果であるガラシャに生きてほしいと言ったのか。

鎌倉時代に作られた太刀である地蔵行平は、若き細川忠興が妻・玉の父である明智光秀に献上したとされる。刀剣男士は語り継がれる物語で成り立っている。

妻である玉を愛した若き細川忠興の物語を語り継ぐ地蔵行平
衆生を救おうとする地蔵菩薩の加護を受ける地蔵行平

結局のところ、神の国の盟主・細川ガラシャは死にたくなっていたのかもしれない。そんなガラシャに地蔵行平は、忠興はそなたを愛していたと言う。「われは細川忠興の刀だから」。ガラシャの手を取って逃げ出した地蔵行平の心には、玉と仲睦まじかった頃の忠興の心が宿っていた。

自分の言動に戸惑う地蔵行平に、ガラシャは姉上と呼ぶようにねだる。

※地蔵ちゃんの困った顔を見て微笑む強気なガラシャ様がめっちゃ可愛かったです。

続きだ続く。メモの時系列がわからなくなってたので勝手に再構成しています。