[Zuka] 花組+専科『蘭陵王—美しすぎる武将—』

ロマンス
『蘭陵王—美しすぎる武将—』

専科の凪七瑠海主演公演『蘭陵王—美しすぎる武将—』を初日15時公演と2日目を梅田芸術劇場ドラマシティで観劇してきました。「蘭陵王」は田中芳樹氏の小説で知りました派で、予習で久々に再読し始めたのですが途中までしか読めてない。w

楽しかった!シリアスな内容ですが、キャラクターの個性と結末の処理がうまく前向きに終れるという佳作。心情や説明を歌で表現することが多い木村作品らしく、歌唱力と演技力が要求される作品で、楽曲がなかなかに難しく、殺陣や人数が要求される戦場場面が多いので娘役まで甲冑を着込んで総動員というハードルの高さでしたが、専科3名+花組19名の蘭陵王チームががんばってました。

「あまりの美貌ゆえ、兵士たちの士気が下がることを恐れ、戦場では仮面を付けて戦った」という伝説の蘭陵王(らんりょうおう)は美貌と高い技量を誇るカチャ(凪七)にはぴったりで、当たり役となりそうです。

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蘭陵王とは高氏によって建てられた国・北斉(550年 – 577年)の皇族のひとりである実在の人物、高長恭(こう・ちょうきょう)を指す。高長恭は武勲により徐州の蘭陵を賜り、蘭陵王と呼ばれるようになった。

1幕では意表をついた設定に驚くが、2幕の展開は伏線が生き、見事な人間ドラマに帰結する。曼荼羅をモチーフにした舞台装置と左右の壁に掛けられたたくさんの仏像が描かれたタペストリー、中華風の豪奢なお衣装が異国情緒をもたらして、ベテラン座付き作家の妙を感じる改変歴史もの。

本作では高長恭が蔑まれながら育った捨て子で、北斉の軍師・段韶(だん・しょう)(舞月なぎさ)によって北斉の王子と見抜かれて救い出されたと設定する。

物語の進行役に語り部(京 三紗)を置き、背景説明や人物関係などを淡々と語る。ややハスキーな声に時に心情を込めながら、その語り口は滑らか。語り部がいるためにキャストのほうは自分の心情だけを話すことに集中できる。ナレーターにせず、語り部という人物を登場させた意味はラストに明らかになる。

類まれな美貌を持つ蘭陵王こと高長恭(凪七瑠海)は、幼少時代、生きるためにその美貌に惹かれた男たちの稚児とならざるを得なかった。それゆえに長じてからは、その美貌をものともせず、生きるために強くあらねばと武術の訓練に励んで勇猛果敢に戦を戦い抜き、強いということは生き残るということである、という境地に至る。

幕開き、床にへたりこんで高くか細い声で、己の境遇を歌う白皙の美少年(凪七)。透明感あふれ、悲しみと寂しさのこもった演技で惹きつける。

子どもたちの中で最も虐げられていた少年は自分が捨て子だったことを知り、一人逃げ出す。彷徨っている少年を拾った村の長者(航琉ひびき)は、温かい食べ物と寝床を用意してくれたが、その代償で体を求められた。ある日、村を盗賊が襲い、村人は殺され、少年は盗賊に犯される。彼は盗賊(澄月菜音)がなぜ「美しい」と自分を抱くのかわけもわからず、盗賊征伐に来た北斉の将軍(和礼彩)に目をつけられても「次はこいつか」と諦観が漂うのみ。

完全に虐待されている子どもなんですが、赤子の頃に失われた高一族の王子・高長恭(こうきょうけん)であることが判って救われる。処刑に向かう盗賊は捨て子に「愛していた」というが、「愛」とは何かが、少年にはわからないのだった。

(ここで王子ではなかったら彼がどうなるのかと考えるとヘビー)。

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古代中国では男色や稚児が盛んだったらしく、紅楼夢など記載のある文献も多いらしい。

北斉の皇太子の高緯(瀬戸かずや)も逍遥君(帆純まひろ)を愛人にもつ、同性を愛する男性であった。

瀬戸かずやの演じる高緯。黄色地の着物に青の打ち掛けを羽織り、ショッキングピンクのもふもふショールで、華やかな中国風の娘役群舞に囲まれて登場し、「美しいものが大好き」とか「自分の色を出すのよ」とか、やや高めの声で歌う。これには度肝を抜かれたが、魅力的で目が釘付けになった。

宝塚で憧れの男役像の一角を担う瀬戸が、オネエの皇太子役を演じるとこんなに骨太で可愛くなるのかという驚き。愛人の逍遥君を失ってからの愚かさは立場的にはまったく許されるものではないのだが、人間味が溢れていて、人の愛と愚かしさを考える。本作のキーパーソン。フィナーレで赤い甲冑を着込た兵士姿で踊り、蘭陵王と切り結ぶのもカッコよかった。

その高緯は美しいものが大好きで、強くてみにくいものばかりが残るのもいや。強くて美しいものだーいすきという。なんというシンプルな説得力。このまま生きていければよかったのだが、「だって私こうたーいしぃ」とはちまき姿で戦場で先頭に立つことになる。ここ哀愁を誘う。

捨て子から皇族の高長恭として成長した青年は、鍛錬を積み、武術の師である段韶(舞月)にも勝つほどになり、自信を得る。高緯に呼ばれて、さっそうと登場する高長恭の姿は誇り高く強い。白と金のお衣装を来た凪七が、捨て子時代と段違いに晴れやかで、その立ち姿の美しさにハッとする。

高緯にしたがって長恭は出陣し、初陣で大いなる武勲をたてる。大喜びの皇帝(航琉ひびき)は長恭に蘭陵の領地と20人の美姫を下賜することにする。

だが彼は選びに選び、洛妃(音くり寿)一人を望む。

喜ぶ洛妃に、長恭は北斉と敵対する周国からの間者であろうと見抜く。死を望む洛妃に、長恭は大事なものからすべて捨ててただ生きよという。何も持たずに逃げた捨て子だった長恭は大事なものを持たずにここまで生きてきたのだ。ここの大ナンバーは後の伏線ともなっていて、凪七の重みのある歌唱がいきる。

生きるために美しさより強さを選んだ蘭陵王は、将軍・斛律光(こくりつこう)(悠真 倫)と段韶(舞月)らと共に周の大軍に囲まれて洛陽城に立てこもる斉軍の救援に向かう。蘭陵王が戦場に立つとその美貌に見惚れた兵士の戦意が落ちるため、彼は洛妃から捧げられた面をつけて戦い、勝利する。城に立てこもる兵たちを開放するため蘭陵王が面を取って呼びかけると、その美しさの噂を聞いていた兵士たちが一斉に姿を表し、蘭陵王に駆け寄ったのだった。

しかし、その美貌と強さは諸王や廷臣たちの妬みの的となっていく。

「美しかったが、悪いか」。そりゃ、言いたくなるね!!

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洛妃役の音くり寿は歌うまを今回も遺憾なく発揮。大ナンバーを熱唱して涙を誘う。身を挺して長恭の命を何度も救うが、身分違いゆえに長恭への報われぬ愛を歌うナンバーと蘭陵王が皇帝・後主となった高緯から賜死を命じられると、「捨ててただ生きよ」と説得するナンバーでの熱演が素晴らしい。メイクも美しく中華風の衣装を着こなして、大人の女性が似合うようになってきた。

洛妃も長恭と同じく囲われ者の過去を持ち、2人が「与えられていたと思っていたが実は奪われてきた」と呼応しあい、惹かれ合う。ラストで何もかも捨てて愛を得た2人が微笑ましい。フィナーレで雅楽師の東儀秀樹氏が作曲した曲で、京劇風のお衣装を身に着け、蘭陵王と洛妃として舞う2人も美しかった。

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蘭陵王という題材は、雅楽「蘭陵王」や京劇の演目で有名ということで、本編の楽曲演奏(録音)・フィナーレの作曲を雅楽師の東儀秀樹氏が担当。エキゾチックな楽曲の数々が場面場面をドラマティックに、ソウルフルに、ユーモラスに盛り上げ、ミュージカル音楽の多様性を感じる。

ソロナンバーがメインキャストはもちろん、盗賊役の澄月菜音、村の長者/皇帝役の航琉ひびき、軍師・段韶(だん・しょう)役の舞月なぎさ、逍遥君役の帆純 まひろらにもあり、大劇場ではなかなか聞けないソロを聞かせてもらえた。

逍遥君の帆純は高緯を籠絡し愛する美しい野心家という男性を演じ、蘭陵王との激しい応酬も見もの。何かを企んでいそうな目つき、目線使いが効いていた。

蘭陵王に下賜される妃ちゃん達(美花梨乃、若草萌香、桜月のあ、詩希すみれ、美里玲奈)にも短いながらソロがあり、花娘たちの歌唱と華やかさを堪能できる。この第7場「斉 宮廷」がすごい良かった。皇帝役の航琉ひびきが威厳を出しながらもコミカルさも随所に見せて面白い。

副組長の花野じゅりあは、洛陽城を治める広寧王の妻役でこの場面のみ語り部を務めるが、美し!めっちゃ現役の花娘ですね。花娘ここにあり、という立ち姿でした。

将軍・斛律光の悠真 倫は蘭陵王の結婚式で段韶の舞月なぎさと対になって歌い踊るお祝いソングがユーモラスでまりんさんの明るさが光る。『燃ゆる風』での「秀俊とおね」ソングを思い出しました(これも聞き込んでいる)。

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専科・凪七瑠海様、東上付き公演の単独主演おめでとうございます。2月の星組中日劇場公演以来の登板。ブランクがあると何が気になるかというと、舞台度胸というか観客の前に身を投げ出す覚悟のほどです。意表を突く設定に殺陣も多い作品ですが、どうぞ千秋楽まで進化していってください。

初日のキャスト・スタッフ全員での舞台成功祈願のお祓いのときに東儀さんが笙を生演奏をしてくださったと、初日挨拶でカチャが感動していました。(Twitterで東儀さんが「サプライズ」とコメントされてました☆)

凪七瑠海をもっと大劇場公演や別箱公演に出演させてほしい。もったいない。

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ロマンス『蘭陵王(らんりょうおう)—美しすぎる武将—』

  • 作・演出 木村 信司
  • 作曲・編曲 長谷川雅大
  • 雅楽師・作曲・編曲・録音演奏 東儀秀樹
  • 編 曲 萩森英明
  • 振 付 花柳寿楽
  • 振 付 麻咲梨乃
  • ファイティング・コーディネーター 渥美博
  • 装 置 稲生英介
  • 衣 装 有村 淳
  • 照 明 勝柴次朗
  • 音 響 秀島正一
  • 小道具 市川ふみ
  • 歌唱指導 飯田純子
  • 所作指導 熊倉飛鳥
  • 舞台進行 岡崎 舞
  • 舞台美術進行 株式会社宝塚舞台
  • 録音演奏 宝塚ニューサウンズ
  • 制 作 井塲睦之
  • 制作補 恵見和弘
  • 制作・著作 宝塚歌劇団
  • 主催 株式会社梅田芸術劇場
    (梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ)
  • 主催 阪急電鉄株式会社
    (KAAT神奈川芸術劇場)

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初日の20日(火)は薮下さんと席が近くてご挨拶。初日に行くとよくお会いします。

2日目の21日(水)11時公演には、星組の万里柚美組長、ひろきさん(七海ひろき)、はるこちゃん(音波みのり)、しどりゅう(紫藤りゅう)、たくてぃー(拓斗れい)が3列目下手で観劇でした。

私が2列目でタオルハンカチを握りしめて泣きの体制に入っていたので、カチャとあきらさんに気を使わせてしまったような。ありがと。ななみひろきがいけないんです。

16時公演は、なっちゃん(白妙なつ)、れんた(如月蓮)、みっきぃ(天寿光希)、ひーろー(ひろ香祐)が、3列目下手。桃ちゃん(桃堂純)、クリスティーナ(颯香 凜)、せいらんちゃん(星蘭ひとみ)ほか、5~6列目くらいの上手席だったかな。