WWSの奥深いところは、人種差別問題や貧困問題のほかに、性別役割分業、性差別への提起も入っているところですね。
[Zuka] 宙組『WEST SIDE STORY』~彼らの居る場所
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女たちの”America”
ダンス・パーティでマリア(星風まどか)がトニー(真風涼帆)と踊ったことに対して、白人男性がプエルトリコの女性に目を付ける理由はひとつと警戒と怒りを抑えられないベルナルド(愛月ひかる)にアニータ(桜木みなと)は「アメリカでは女も自由なのよ」と皮肉交じりに異を唱える。
そしてアニータが、ロザリア(花音舞)やエステーラ(里咲しぐれ)達シャークスの女たちと歌い踊り出すのが ”America”。ここは桜木みなとのアニータがアメリカ大好きな、めっちゃ踊るいい女で、きゃのんちゃん(花音)のロザリアが、どんなにひどいところでも、プエルト・リコにいつか帰る、と歌うのが可愛いんですが、シャークスは台詞のある男性はベルナルドとチノ(蒼羽りく)とぺぺ(美月悠)くらいで、どちらかというと女性陣にスポットが当たっている。シャークスの女たちがアニータかマリアを取り囲む場面が多い。
マリアが今夜は結婚初夜なの、とロザリアやコンスエーロ(小春乃さよ)、フランシスカ(水音志保)に打ち明けて、恋バナ(歌)する場面。ここのまどかちゃんのマリアの表情や動きが、奔放で情熱的で、日本人の女性とは思わせないものがあって、惹きつけられました。台詞回しも以前あった性急で焦った感じが出てこなくなっていた。次も楽しみです。
そうだ、前記事に書き忘れていた。私が小春乃さよちゃんの名前を覚えたのは、『うたかたの恋』の悠未ひろさんとのカゲソロでしたが、今回のSomewhereのカゲソロも素晴らしかったです。
女であるゆえの相克
ドク(英真なおき)の店を訪れたアニータに降りかかった災い=ジェッツによる性暴力は、その場面で頭を抱え騒ぎに背を向けて座り込むエニボディーズ(夢白あや)と共にWSSの性差別(性暴力)問題の象徴とも映ります。華奢な夢白ちゃんが演じるエニボディーズはジェッツの仲間になりたがっている女の子(生物学的女子)。女性性を拒否しているようにも見えますが、将来を聞かれた時にヤケクソのように「コールガール!」と答える。このままの貧困だとコールガールだよ、という先読みなのか。理由は描かれない。ジェッツには、女を入れないというトニーとリフ(澄輝さやと)の方針は正しいと思うのです。なぜならジェッツは暴力集団だから(トニーとリフがどう思っているかは知らない)。だけれど、女でいたくなくて女たちの仲間には入りたくない、でも自分の居場所は作りたいエニボディーズはそれが理解できない。
エニボディーズが、アクション(留依蒔世)に手柄を認めてもらって、連絡係として仲間に入れたと思ったジェッツは、白人・貧困層のジェッツという分類で、アニータの災厄場面は性暴力だから、分類が違うわけです。暴発したアクション達に、いきなりジェッツの分類を変えられたエニボディーズ(とベイビージョン(秋音光))の動揺たるや。暴力と性暴力というのは隣同士だという事実が観る者全てに突きつけられた残酷な場面。
そして傷ついた愛の使者アニータ。後々にエニボディーズが、アニータを気遣ってくれないかなと思ったりしたのです。女であるゆえの相克というのは、男には判りがたい。エニボディーズはLGBTではないかと書いたブログも見かけましたが、いずれにせよ、エニボディーズはアニータのような女性と知り合うと良いと思いました。これはずんアニータ限定です。そらアニータは観てないので判りません。ずんちゃんのアニータはそういうキャラでした。夢白ちゃんは化粧映えする。化粧がうまいのは良いことです。
ドクの店を飛び出したアニータはマリアに会って、黒いショールを渡したのでしょうか(マリアの部屋にあったのは白いショールだった)。アニータにとってもマリアにとっても寡婦の象徴となった黒いショール。ベイビージョンがマリアの肩ではなくて、頭にかけてあげるんですよね。ジェッツ最年少のベイビージョン、あきも(秋音)がうまかったです。エイラブ(七生眞希)とのコンビも目立つ。まりなちゃん(七生)はもうちょい押し出しがあれば良いなと思います。
ヤワなチビもすぐに逞しい男に!
上のタイトルは、Jet Songの一節ですが、あきらかにマチズモ(マッチョイズム)と呼ばれるものですね。男性優位主義という訳がつけられているのですが、性別関係なしにマチズモに陥ることはあるので、私的にはアンサイクロペディアの解説が近い気がします。
マッチョイズムとは要するに「とにかく強ければいい」という考えであり、ゴリラやライオンなどの野生動物では最も大事なボスの条件である。すなわち、誰よりも強くあればほかの要素は要らんということだ。
マッチョイズム – アンサイクロペディア
マチズモに関連して、「マチズモ」は白人男性の恐怖心の裏返しだ 社会の多様化に追い詰められている | (2018/05/05)グローバルアイ – 東洋経済オンラインという記事を見つけちゃって、 「「マチズモ」の象徴的存在であるトランプ米大統領」と書いてあるのですよ。相変わらずホワイトカラーには人気がないんだね。どうなるんだろうアメリカ。
ジェッツはみんな細身で、逞しいのはディーゼル(風馬翔)くらいのような気がしますね。眼鏡をかけたビッグディール(星月梨旺)はパンフに「エキスパートを自称」と書いてあるんですが、ディール(取引)のエキスパートなんですか??ビッグディールやスノウボーイ(春瀬央季)はアクションよりは、冷静そうに見えたけれど、暴発してしまったのは、それだけリフの存在は大きかったと言うことでしょう。”COOL”と宥めてくれた、リフは二度と帰ってこない。彼らは希望を失った。
トニーは”Something’s Coming 今にも何かが”と歌い、奇跡が起こる希望を抱くことが出来た。リフの希望(居場所)はトニーだったんでしょう。トニーがそうなれたのは、ドクの力があったためとすると、少年たちにはリフではなく、大人の力が必要だったのかもしれない。ただ大人がドク1人では無理だったんだろうな。大人達は為す術もなく、手をこまねいてしまった。
舞台という仮想の現実で、私達は知識を得て、肝に銘じておくべきなんだと思いました。愚かしさはいつでもどこにでもある。自らの内にも。
おまけ
【数量限定】25ans9月号 宝塚宙組トップスター・真風涼帆さんの限定表紙版が登場!という、25ans9月号(7月27日発売)を購入いたしまして、まかぜさん(真風涼帆)とキキちゃん(芹香斗亜)とすっしー組長(寿つかさ)のインタビュー記事に加えて、美人なまぁ様(朝夏まなと)が、「フワフワで美味しい!」とざる豆腐を召し上がっている記事(『薩・長・土・肥のご当地美容旅)』が載っているお徳号です。まぁ様が表紙の婦人公論2018年8月28日号(8月10日発売)も発売中。
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ヘア&メイク&スタイリストさんがきっちり入っているであろう2人(まかぜ・きき)のポートは美がド迫力で迫ってくる感じなんですが、組長の外部媒体でのインタビュー記事は珍しいので、いそいそと読みました。
タカラヅカを観ていると各組に自分なりのイメージが出来てくるのですが(花組は華やか、星組だと熱いとか濃いとか)。宙組はいつも表現に困る。あの明るさ、素直さ、開けっぴろげさ、それからきらめきの透明感(七海ひろきも宙組生だったときはそうでした)。それがね、すっしー組長のインタビューで合点がいきました。
組のカラーはトップさんによって変わるもの。宙組は組替えでいらした方がトップになることが多かったので、組の色を固めすぎるのも…と感じてきました。のびのびとした空気をベースに、その時のメンバーでつくられる最高のものを。宙組カラーが何かと言えば、そういうものなのかもしれません。(寿つかさ組長)
おお、無色透明感。「星組は体育会系」らしいんですが、「宙組がアスリート」なんですね。うん。星組はオラオラ感とむんむんの熱気。宙組はキラキラしていて明るい。競技の種類が違うんじゃないかとか思う。
真風さんが星組に居たときは薄いと思っていたけれど、宙組に来たら自分の濃さに気づいたらしいですが(ニュアンス)、その通りなんだと思います。だから真風さんも芹香斗亜さんもこれからも濃さ全開でお願いしたいです。それがブレンドされて宙組カラーが熟成していく。きっとね。
私はネコバス派だから判らないんですが、真風さんは星組にいるときは正当派二枚目だったので、トトロでもいいので正当派二枚目でいて貰えると嬉しいです。
そして宙組は組として生え抜きのトップスターを輩出するという意識を持って欲しいです。新公主演からのトップスターへの道が、男役スターの大きな目標である以上、現状のままでは、宙組の新公主演者達は組替えか退団の道しかなくなります。その状態が組子の士気に影を落していないか私は懸念します。
私は組替えあり派なので、2番手の芹香さんには宙組でトップになってねと思っていますが、それと同時並行に宙組生え抜きのトップスターを見たいという気持ちもあるのです。代々に組替え組のトップスターもいれば、生え抜きのトップスターもいる。それが他組では普通です。20年だろうが、100年だろうが、組としては何ら変わりは無いはずなので、宙組も早く普通の組になって欲しいです。
澄輝さやと、愛月ひかる、桜木みなと、和希そら、留依蒔世、瑠風輝、鷹翔千空、男役達のがんばりにどうか報いられる宙組でありますように。20周年に願いを込めて。
娘役の新公ヒロイン経験者は、遥羽らら、天彩峰里、夢白あや、だけ?え?あ、星風まどかは除いてますよ。華妃まいあは?え?ちょ、ヒロイン候補が少ないよ!!!!いま真剣に危機感を感じました。宙娘はできる人ばっかりだけれど、せーこ様(純矢ちとせ)を入れても少ないよ…。