[stage] りゅーとぴあプロデュース『人形の家』

演目『人形の家』は古典ということは知っていましたが、「りゅーとぴあプロデュース」と「大空ゆうひ」に惹かれて観に行った全くの初見です。りゅーとぴあプロデュース公演、去年は『エレクトラ』だったから趣が異なりました。

[stage] りゅーとぴあプロデュース『エレクトラ』 (2107/05/03)

【作・演出作】ヘンリック・イプセン
【訳】楠山正雄訳『人形の家』より
【上演台本】笹部博司(りゅーとぴあ演劇部門芸術監督)
【演出】一色隆司
【場所】兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
【期間】2018年05月23日18時30分、2018年05月24日13時
【主催】公益財団法人 新潟市芸術文化振興財団

観劇は5月23日(水)の18時30分公演でした。新潟市民芸術文化会館で1回公演→東京芸術劇場シアターウエスト10回公演→兵芸2回公演で、兵庫に来てくれるのでうれしいです。兵芸とりゅーとぴあに繋がりがあるんでしょうね。

青空文庫でも(『人形の家』島村抱月譯(HTML版)が読めます。

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(あらすじ)

ノラ(北乃きい)は、お手伝いのヘレーネ(大浦千佳)とともにクリスマス・プレゼントの準備に余念がない。3人の子どもと夫ヘルメル(佐藤アツヒロ)の分、友人たちの分。クリスマスツリーの飾りつけも済み、ヘレーネとマカロンを頬張って、うきうきと部屋を片付ける、幸せな奥様ノラ。

結婚して8年のノラの夫のヘルメルは弁護士であり、来年には銀行の頭取になり、弁護士業よりは安定した収入が得られる。ノラは自分用のクリスマス・プレゼントを買わずにヘルメルにお金をくれとねだる。

そのノラのもとに、古い友人であるクリスティーネ・リンデ夫人(大空ゆうひ)が訪ねてくる。リンデ夫人は母を看取り、女一人で生きるために、仕事を求めてノラの住む町までやってきた。自分たちの境遇を話し合うノラとリンデ夫人。

リンデ夫人は、生活に疲れて、年をとったことを気にし、ノラは苦労なんかしていないでしょうと言う。それに対しノラは、そんなことはないと少しムッとし、秘密を話し出す。昔、夫ヘルメルが病に倒れた時に、その治療のための転地療養費を父に用立ててもらったことを。しかし真実は、保証人に父の署名を偽造して夫の友人クロクスタ(松田賢二)から借金をし、今も夫に内緒で返済しているのだ。ノラはどんな手を使ってでも夫を助けたかった。

ノラはリンデ夫人のための仕事を夫ヘルメルにお願いする。ヘルメルは銀行で不正を働いたクロクスタを首にして、リンデ夫人を代わりに雇おうと考える。安定した生活に思いやりのある夫。幸せなノラのところに、クロクスタが借金の秘密と引き換えに、自分を銀行に残すよう夫に頼むように脅してきた。

毎日訪ねてくる医師のランク(淵上泰史)は夫妻の友人であったが、ノラに恋心を抱いていた。だが彼は病を秘めており。。

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主演は北乃きいさん。初主演舞台のようです。芸能界は元々疎いのに加え、最近は宝塚中心に舞台ばっかりみているので、キャストはゆうひさん以外はさっぱり判ってないです。

観劇中はヒロインのノラに理解も共感もできず、観劇後に『人形の家』ってこんな作品??と首をひねりました。ヘルメルのほうもあんまり、ピンとは来なかったけれど、私にはノラという女性が子どもっぽく、人の機微にうとく見えた。自立心の芽生えと言うよりも、夫の社会的立場への理解に乏しく、自分の言い分を聞かない夫、自分の愛を否定した夫への当てつけで出て行ったようにも思えた。

岩波文庫のKindel版で原作の『人形の家』(原 千代海訳)も読んでみました。原作に忠実に脚本化されているような気がする。ノラの一本調子でまくし立てるような話し方には心が動かされず、ヘルメルと子ども達を残して出て行ったラストには呆然としてしまった。

観劇後は、ゆうひさんのリンデ夫人が浮き上がるように思い出された。

「あの二人は、すっかり打明けて理解し合はなくちゃ駄目ですよ。こんな小細工や隠しごとばかりしていた日には、二人ともきっと今にやり切れなくなります」。(『人形の家』島村抱月譯(HTML版

リンデ夫人は、自分の信念通りに過去に付き合っていたクロクスタに自分の思いの丈を打ち明けて、クロクスタと復縁し、2人で寄り添って去って行った。ノラとヘルメル、リンデ夫人とクロクスタの対比であれば、後者のほうが、女性の自立への示唆を指し示しているように思えたのだ。

ゆうひさんは、立派な肩幅にショートジャケット+くるぶしまであるロングスカートが似合っていて薄いメイクだが、相変わらず美人だった。刺繍や編み物する姿が新鮮で(いやマジで新鮮だった(*゚∀゚*))、そういうのも楽しかった。あと初生キス?

北乃きいさんは、髪型はお団子にまとめ上げたほうが顔と首元がすっきりして見える気がするし、あと流行の花刺繍のチュールワンピース(ノラのお衣装)がだぼついて野暮ったく見え、もっと似合うものはなかったのだろうか、とか。

会場でたまたま、某さんにお会いし、2008年の宮沢りえと堤真一の『人形の家』の存在を教えていただいた。見たかった、それ。