[Stage][Zuka] 慰霊のラ・バヤデール・鎮魂のエリザベート(2)

宙組『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』東京劇場公演初日おめでとうございます。20周年エリザベートを宙組一丸となって深化させて行ってくれる事を願っています。まだ暑さが残りますが、千秋楽の上演回数1000回を目指してがんばってください。

[Zuka] 2016年宙組『エリザベート-愛と死の輪舞-』
[Stage][Zuka] 慰霊のラ・バヤデール・鎮魂のエリザベート(1)

宙組のエリザベート(実咲 凜音)は、努力と愛の女性であった。

実咲凜音 エリザベート役は「神様のプレゼント」 (日刊スポーツ 2016年9月1日)

シシィ(エリザベート)は、16歳でオーストリー皇帝フランツ・ヨーゼフ(真風 涼帆)と結婚し、オーストリア皇后となる。未来の皇后として母ルドヴィカ(美風 舞良)の期待を一身に受けていたのは姉のヘレネ(桜音 れい)であり、次女であったシシィ(エリザベート)は、父マックス(悠真 倫)の旅行や狩りにでかけ人生を謳歌する姿に憧れ、勉強嫌いで乗馬や外遊びを愛好する少女だった。

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フランツ・ヨーゼフの誠実な言葉を信じ、ハプスブルク家に輿入れしたシシィだったが、これまでに大勢の他人の目が自分に集中する経験もなければ、第三者に時間を管理され、慣習と礼儀作法に縛られた経験もなく、シェーンブルン宮殿での生活はシシィの未知の世界であった。そして結婚式翌日の朝5時に皇太后ゾフィー(純矢 ちとせ)による、強烈なしきたりの洗礼を受けることになる。

宮廷で圧倒的な権力を握るゾフィー皇太后によるお妃教育は、いくぶんか姑の嫁いびりが混じっている。シシィが唯一の頼りとするフランツ・ヨーゼフ(真風 涼帆)は、ゾフィーのこれまでの苦労も、ゾフィーの性格も知り尽くしており、皇太后を尊重する姿勢を崩さず、フランツは、まだ若く幼いシシィに皇太后の助言に従うように勧めた。

未知の世界は16歳のシシィの柔らかな感性に脅威をもたす。シシィは「私が生命を委ねる それは私だけに」と声を上げ、シェーンブルン宮殿での闘いを始める。

実咲凜音の「私だけに」は、幼かったシシィの自我の目覚めと自己を発見した喜びに満ちていた。初めて外の世界を知った恐れと、その自分自身の恐れを克服しようと努力を始めようとする自分を知る。自分自身を手放すことは出来ないけれど、求められるものに対して見合うように努力もしよう。皇帝フランツ・ヨーゼフを愛し、妻として共に歩いていくと決めたのも自分なのだから。

家族を愛し、夫である皇帝フランツの助けとなるハンガリーへ赴き、自分を愛してくれたハンガリーの民を愛し、忍び寄る死の影と戦う。シシィの命を助けた黄泉の帝王トート(朝夏まなと)は、彼女が始めた生きるための闘いへの怒りと妬みで懊悩する。

踊る愛と死。
高揚する魂と魂。
高ぶる心を抑えられるのはただ相手の魂のみ。

皇帝フランツ(真風)は、母ゾフィー(純矢)のこれまでの苦労も彼女が宮殿内で有する権力もハプスブルク家の長い伝統としきたりの頑強さも知り尽くしているだけに、一方的にシシィの味方をすることがない。結婚をし、跡継ぎを儲け、ハプスブルク家の後継者として一人前になれば自分の時代も来よう。真風涼帆の演じる24歳の若き皇帝フランツ・ヨーゼフは、誠実さと自分自身を見失わない強さを内面に持つ人であった。オーストリー帝国内で荒れるハンガリーを平定し、「いつかは」、「善良で寛容な君主に」。

皇后エリザベートの力を借りて、オーストリア=ハンガリー二重帝国を成立させるも皇太子ルドルフは急進派に組して死を遂げ、エリザベートの心は離れていくばかり。

すれ違うたびに 孤独は深まり 安らぎは遠く見える(夜のボート)

真風さんの表現力、歌唱力が急上昇。すばらしいフランツでした。

純矢 ちとせの皇后ゾフィーは、威厳と威嚇と美しさに満ちていた。初見はけっこう怒りんぼさんだったんですが、だんだん変わりました。怒りの表現にもいろいろな表情がある。

愛月ひかるのルキーニは見ていて変化がすごく楽しかった。とても面白い。というわけで次に。