[Zuka] 2013年宙組新人公演(1)

宙組新人公演『風と共に去りぬ』を観てきましたが、新公は初観劇なので、本公演との演出の違いを楽しんでしまいました。

全体感想として、宙組下級生(第93期生の研究生7年目以下)いっぱいいっぱいの所もありましたが、がんばってた!! 『風と共に去りぬ』は、ストーリーがギリギリまで簡略化されているので、キャラクターの背景や人物像を創り上げて気持ちを乗せていくが難しいのでは、と思っていたのだが、みんな自分の役を理解しようと取り組んでいました。ひとまずお疲れ様でした!大劇場公演もあと2週間です。

レット・バトラーは蒼羽りく(そらはね・りく)、スカーレットは花乃まりあ(かの・まりあ)で、銀英伝に続いての主演コンビ。

黒塗り+髭のレット・バトラースタイルが決まっている、蒼羽りく(93期)。1幕目は陽気なレット・バトラーだったが、2幕目の泥酔シーンで一転した。2幕目の「愛のフェニックス」は悲哀が籠もり、胸に響いた。ミュージカルの歌は情感の出し方でずいぶんと印象が変わる。りくちゃんは、よく通る良い声なので、歌は場数を踏むともっと良くなりそう。兵士を従えて踊る戦闘シーンでのダンスは、動きに切れがあり、見応えがあった。

花乃まりあ(96期)は、育ちが良さそうな愛らしいスカーレット。気は強いのだけど、何かに対抗して「強い」のではなく、弱い者を守るための「強さ」があった。娘役芸の基本が身についているので、動きや仕草が自然で、舞台度胸がある。歌は、声を低めの音域にして頑張っていた。プロローグがカットされたので、わっかの白いドレス+緑のサッシュ姿がないのが残念だったが、新築披露パーティーのデコルテを出した白いお衣装が似合っていた。

  • 2幕目のレット・バトラーの泥酔シーンで、二人の相乗効果が起こった。スカーレット@花乃が、「嫉妬しないで」と冷静に冷たく言い放った瞬間、レット@蒼羽が怒りの表情を見せて立ち上がった(←うわ、キタコレ!)。このシーン以降の蒼羽は役に入り込んでしまい、スカーレットに無視された後など無言で立ち去る表情が陰鬱として、レットの心の中でなにかが壊れたことが伝わってきた。

桜木みなと(95期)のアシュレ・ウィルクスは、金茶の髪とアイシャドウのブルーグレーが、薄いブルーグレーの軍服に映えて、凛々しい青年士官ぶり。薪割り場面がなく、アシュレの心理的変化を出すには出番がやや少なかったが、メラニーの死を受けての慟哭は熱演だった。

メラニー・ハミルトンの怜美うらら(95期)は、華やかだけど落ち着いた強さのメラニーで、任せて安心見ていて安心の演技だが、欲を言えば(?)もう少し庶民的なところがあってもいいかもしれない。優雅で高貴なイメージに、茶目っけが出ると、幅が広がると思うのだ。

ベル・ワットリングの愛月ひかる(93期)。実は新人公演で2番目に意表を突かれた配役(1番はエルシング夫人)だったが、アトランタ駅での登場時点から落ち着いた演技で、とても安定感があった。さすが新公長!メラニーとレットが話し始めたので、苛ついた表情で髪の毛をいじったり、スカーレットの名前に反応してレットに絡んだりと、恋する女っぷりを発揮していた。愛月ひかるのベルはどこか繊細で、エルシング夫人に引き倒された後のソロは、「女性としての魅力」を傷つけられた1人の女としての哀愁がこもっていた。

スカーレットIIの彩花 まり(95期)は華があり、スカーレットの白いドレス+緑のサッシュ姿がキリリとしていた。「あなたと私は裏表」のソプラノが美しく、歌でも活躍できそう。スカーレットとの関係は、「遠慮なくものを言える女友達」という感じで、友人の恋バナを盛大にけしかけるという風情だった(笑)。

  • 娘役がスカーレットとスカーレットIIというのは、男役のスカーレットと娘役のスカーレットIIの間柄とは異なる感じがした。スカーレットIIは本体に本音を迫る立場なので、どうしても立ち位置が強くなりがちで、その加減が難しそうである。男役スカーレットだと学年も背丈も上なので、娘役スカーレットIIの勢いに負けないんだけどね(笑)。
  • スカーレットが力強い声で「明日になれば」を歌う姿は、戦争でずたずたになったタラ復活の象徴となっている。ソプラノでは、立ち直る逞しさが表しにくい。娘役スカーレットは、歌い方を考えたほうが良い気がする。

終わらなかった…あとはまた後日。

主な変更点(割愛された場面)

  • プロローグ前の銀橋でのレットのソロをカット
  • プロローグとフィナーレをカット
  • 2幕冒頭の「南部魂」の群衆芝居をカット→New Generationの歌で始まる。
  • アシュレの薪割りシーンとソロをカット
  • レットとスカーレットが結婚した経緯(スカーレットとスカーレットⅡの会話)をカット