ようやく観た。
なんだ、ふつーじゃん。
グラフィックの美しさはまぁジブリの質が保たれているし、監督第1作目にしてはよくやったほうだと思いました。
テーマを台詞だけで説明しきっちゃおうとするところとか、間が空きすぎたり、テンポがとろかったりするところとか、世界観がみえないとか、いろいろ気になる点はあるけど、まぁ、素直な感性がにじみ出ていて、悪い出来ではない。というより、素人が監督になったにしてはよく出来ていると思います。
印象に残ったシーンは、テルーが歌うところ、アレンが剣を鞘から抜くところ。好きなところ、ゲドの声(菅原文太)、テルーの唄(作詞:宮崎吾朗、作曲:谷山浩子、歌:手嶌 葵)。
テルーが歌うところは挿入歌が延々と続いて長いなぁと思っていたのに不思議に印象強いのだ。歌うテルーの横顔から目をはなせないアレン。不安定なアレンの心にテナーがしっかり根を下ろした瞬間がくっきりわかるシーンだ。
キャラクター造形があまりにも宮崎駿ちっくなので、紛らわしいが、これは、【雑誌『インビテーション』4月号採録 「鈴木プロデューサー ゲド戦記を語る(1)」】によると鈴木敏夫プロデューサーの提案らしい。これだけじゃなくて、【世界一早い「ゲド戦記」インタビュー(完全版)】を合わせて読むと、あちこちに鈴木プロデューサーが仕掛けを施していることが判る(この2つのインタビューをジブリ公式サイトに公開して、仕掛けの内幕を見せることを含めて!)。
例えば、原作にはない「父親殺し」のモチーフ。これもある意図を持って挿入されたという噂がたっているが、映画の話題作りにはいいネタでしょうが、ストーリー的には余分。『原作「ゲド戦記」、原案「シュナの旅」』とクレジットしてある時点で、もはやル=グウィンの原作とは別物なんだから、「父親殺し」とかの余計な部分を削って、クモとアレンの対決を中心の勧善懲悪ものにしちゃって、もう少しに絞ればもっとすっきりしたものになったんじゃないだろうか(私はル=グインの原作を読んでないので、原作には思い入れがないののだ)。
プロデューサー的には映画の完成度よりネタ作りをとったんだろうなぁという印象を強く受けました。宮崎駿や高畑勲のジブリ作品より作品の質が落ちるのは最初から判っていることだから、何より話題を作って客を呼んで、興行的に成功させることを目指した。だって、作品もダメ興行的にもダメじゃ、事業は成り立たない。しかしここで興行的には成功しておくと次に繋がる。と、考えると、なんだか戦略としてはとっても正しいのかもしれませぬ。
というわけで鈴木プロデューサーに座布団1枚。宮崎吾郎監督にはエールを送ります。