[movie] マイケル・ムーア「SICKO」

公開初日のマイケル・ムーア監督「SICKO」を見てきました。
いきなりブッシュ大統領のアップで始まった。マイケル・ムーアはよっぽどブッシュ大統領を愛しているらしい(笑)。

さて、「SICKO」はアメリカの医療制度をテーマとしたドキュメンタリー。シニカルなコメディとパロディを交えて笑いを取りながら、アメリカの医療制度の悲惨な現状を露わにしていく。マイケル・ムーアらしく恣意的な構成や統計的なデータ抜きにした扇情的な煽り、ドン・キホーテのごとき突撃精神とヒューマニズムにあふれている。社会保障制度との比較での他国の取り上げ方も、カナダ、イギリスときて、フランス、とどめにキューバ!を持ってくる辺りもあざとい。

アメリカは国民皆保険ではない。医療サービスを受けるには、健康保険を民間保険会社から商品として購入(契約)することが大前提となる。健康保険プランには種類があるが、メジャーなのがマネジド・ケアであるHMO(Health maintenance organization)である。マネジド・ケアにより医療費に厳しく制限を設けているHMOの悪評は高く、「SICKO」で取り上げている事例はHMO のものがほとんどだと思われる。

アメリカでは過去に、ヒラリー・クリントンによる国民皆保険の導入提案を、「社会主義的管理医療」とよってたかって弾劾して潰している。マイケル・ムーアは、カナダ、イギリス、フランスを回り、「国民皆保険」=「社会主義的管理医療」というイメージを崩していく。

そして、真打ちはバリバリの社会主義国キューバである。アメリカが長年、経済制裁を行ってきた仮想敵国!その国の制度とアメリカの医療制度を比較。どう見てもアメリカの医療制度がキューバに負けているのである。アメリカ人のショックは想像に難くない。
構成も脚本も良く錬られていて、エンターテイメントとしてもプロパガンダ映画としては面白い。マイケル・ムーアは確信犯だよ。