[Zuka] 星組『眠らない男』-植民地の生まれ女王

100周年は驚きを連れてくる。いやいやいろいろ起きていますな。1月6日のSMAP×SMAPにタカラジェンヌ100人が登場したり、雑誌にガンガン掲載されたりしているのは知っていたのですが、今度はJR東日本の山手線をタカラヅカ仕様の電車が走ったり、阪急梅田に大階段が登場したとか。これこそ、やれば出来るじゃん的ななにか。いやもう全く。阪急宝塚線でも小豆色の電車にステッカーがついているのは見たのですよ。急行だけですけどね。普通には貼ってませんでした。ええ。………まぁいいや。

阪急電車(宝塚線)
阪急電車(宝塚線)

『眠らない男・ナポレオン ―愛と栄光の涯(はて)に― 』で私が一番印象に残っている場面は、第1幕第4場の総裁バラスの夜会である。ここは、まさしく役者が揃った!と言いたい名場面で、ジョゼフィーヌ(夢咲 ねね)、タレーラン(北翔 海莉)、ナポレオン(柚希 礼音)のそれぞれが登場した途端に舞台の空気が変わる。それを支える周囲の演技も素晴らしく、華やかな中に火花が散る役者対決となっている。

前場の牢獄から打って変わって、革命が終わったわとタリアン夫人テレーズ(音花 ゆり)が艶やかに登場し、ミュスカダン(伊達男)とメルヴェイユーズ(伊達女)が華やかに恐怖政治の終焉と新しい時代の幕開けを歌い踊る。

ジョセフィーヌ(夢咲 ねね)が、バラス(一樹 千尋)に浪費をたしなめられながら現れる。彼女は肩を大きく出した葡萄色のドレスに真珠のネックレスを肩から首元に幾重もにまき付け、エレガントで馥郁たる香気を漂わせている。愛人バラス(一樹)は、テレーズ(音花)に心を移しており、ちょうど現れたタレーラン(北翔 海莉)とその愛人のスタール夫人(万里 柚美)の前に、ジョゼフィーヌ(夢咲)を置き去りにしていく。

亡命から帰国したばかりの大貴族タレーラン(北翔)は、ジョゼフィーヌ(夢咲)に、彼女の逸話を語るように促す。ワインを傾けながら、ジョゼフィーヌを値踏みするタレーランとスタール夫人を前に、ジョゼフィーヌは話し出す。

「私は植民地の生まれなの」。

故郷のマルチニークの海でおぼれたあの日、占い師は言った。「生きる。女王になれるその日までお前は生きていく」。冷やかすように見ていたミュスカダンやメルヴェイユーズが静まる。斜め目線で見ていたタレーランの顔つきが変わる。ジョゼフィーヌは毅然として歌い上げる。私は、ジャコバン派に処刑されそうになったときも恐れなかった。占いを信じていたから。「生きる。女王になれるその日まで、私は生きていく」。

ジョゼフィーヌに対する態度が明らかに変化したタレーランに、スタール夫人は「今夜の女王はテレーズのようね」と牽制するが、タレーランは明日の王は判らないと告げる。そんなところに、総裁政府を救った”コルシカの大砲男”ナポレオン(柚希 礼音)が兄ジョゼフ(十輝 いりす)や副官マルモン(紅 ゆずる)やミュラ(真風 涼帆)を伴って到着する。

続く