宝塚市では、宝塚歌劇100周年と合わせて市制60周年+市立手塚治虫記念館20周年の3つで「トリプル周年」と銘打ち、グッズが出回り始めています。武庫川の周辺の村が寄り集まり、最終的に1954年に宝塚町と良元村が合併して出来たのが宝塚市。宝塚駅があるのは「川面村」だった所で、ヅカファンの間で宝塚大劇場周辺が、「ムラ」と呼ばれる所以だそうです。下の写真は、ソリオ宝塚でつり下げられているポスター。紙製ランチョンマットとかお土産の包装紙とかも配布されています。ランチョンマットは好評で増刷の勢いだとか(某筋より)。
「宝塚トリプル周年」を盛り上げろ! 〝汚したくない〟ランチョンマットが完成 – MSN産経ニュース
『眠らない男・ナポレオン ―愛と栄光の涯(はて)に― 』は、ナポレオンの副官であったマルモン(紅 ゆずる)が、その晩年にグランマルモン元帥(英真 なおき)としてナポレオンの息子であるナポレオンⅡ世(天寿 光希)に会いに行くところから始まる。
ナポレオンⅡ世は、母マリー・ルイーズ(綺咲 愛里)とは引き離され、ボナパルト家の後継者ではなく、ライヒシュタット公としてハプスブルク家の監視下で育てられた。彼は孤独のうちに、父ナポレオン(柚希 礼音)への敬慕の念を強く抱くようになり、グランマルモン元帥(英真)に父のことを教えてくれるように頼む。退位したナポレオンから「裏切り者」と呼ばれたマルモンであるが、ナポレオンのことはずっと尊敬していると、ナポレオンⅡ世の願いに応えて語り出す。
マルモン(紅 ゆずる)はナポレオンの秘書を務めるブリエンヌ(壱城 あずさ)と共に、士官学校でナポレオン(柚希)の後輩として学び、王党派が反乱を起こしたトゥーロン攻囲戦において24歳のナポレオンの副官となる。ナポレオンは故郷コルシカ島の独立運動に挫折し、パリで兄ジョゼフ(十輝 いりす)と共に世に出るチャンスを窺っていた。総裁バラス(一樹 千尋)がナポレオンの軍事能力を重用したため、マルモン(紅)とミュラ(真風 涼帆)は側近として付き従うようになる。そしてバラスの夜会でナポレオンはジョゼフィーヌ(夢咲ねね)に出会う。
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物語の語り部は、若きマルモン(紅 ゆずる)とグランマルモン(英真 なおき)だが、この(二人の)マルモンがしみじみと良くて、全体の芯になっている。(べにと英真じゅんこさんの)顔は似ていないのだが、真面目で思いやりがあり忠実という人物像は共通していて違和感がない。ナポレオン(柚希)を側で見守り支えてきたが、どんどん飛んでいく荒鷲ナポレオンを理解できず、追いかけきれなくなっていく。最後にはナポレオンの意に反して、ジョゼフ(十輝 )の決断に従い、対仏同盟軍に首都パリを明け渡す。
皇帝退位を決めたナポレオン(柚希)が、マルモン(紅)にパリを明け渡した理由を尋ねると、マルモンは「大勢を守るためです」と答える。ナポレオンは「お前らしいな」と苦笑し、がっくりと肩を落とす。その意気消沈ぶりが、「マルモンにまで見捨てられたら終わりだな」という内心を表しているようで、痛々しい。そしてマルモン率いるフランス軍が、アカペラで「我らがナポレオン 共和国の守護神 フランスの英雄」と歌う場面も、どれだけフランス国民がナポレオンの変貌と凋落を哀しく残念に思っているかという象徴のようだった。
柚希 礼音の演じる英雄ナポレオンがあってこその紅ゆずるのマルモンで、ナポレオンⅡ世(天寿 光希)に穏やかで温かく接するグランマルモン(英真 なおき)と見事に呼応している。この物語はほかでも、ジョゼフィーヌ(夢咲)の息子ウジェーヌ(礼 真琴)がナポレオンに父のサーベルを返してくれるように頼む歌「僕の父は偉大だった」を、グランマルモンがナポレオンⅡ世に歌ったりと工夫が凝らされており、人の心の複雑さと繊細さを描き出す。史実的な実際は知らんが、こうだったら良いなぁと思う関係が舞台上では築かれている。さすが宝塚歌劇である。
終わらなかった(汗)。キャストの感想はまたいずれ。