[Zuka] 『風共』考(4)-君はマグノリアの花の如く

12日から風共役替わり公演Bパターンが始まりましたね。Bパターン鑑賞前にAパターンの感想を。ややネタバレ。

宝塚歌劇では、男役が「芸」であるとの同様に、娘役も「芸」なのであるが、男役がいきなり娘役芸をやるのは難しい。男役がスカーレットを演じる場合に、娘役をスカーレットⅡに当てるというのは、スカーレットの胸の内を観客に向けて説明することのほかに、「娘役芸」の補完でもあるんだね。

朝夏まなとのスカーレットで印象的なのは、1幕の終わりにアトランタから荒れ果てたタラに帰り着く場面。お墓の側で嘆く、マミー@汝鳥 伶に、両親が亡くなったことを知らされ、まだタラがある、この土地がある、と再起を誓う。乱れ髪で泥だらけの姿で眼光鋭く、すくっと立つスカーレット@朝夏は、気性の激しさの中に凛とした美しさがある。タラと愛する者立ちを守るために立ち上がったスカーレットの意志の強さが、レット・バトラー@凰稀 かなめとの関係では、「頑迷」となり果ててしまうのが、悲しい。

スカーレット@朝夏は、レット・バトラーが家を出て行くところで、やっと自分の本心を吐露する。レット・バトラー@凰稀 かなめは泥酔したときだけ、スカーレットに本心を見せる(メラニーには告白しているけど)。このカップルって、ヤマアラシのジレンマそのものだなと思う。相手に見くびられまい負けまいと強く出る、すると相手もよりいっそう強く出てきて、ぶつかり合うだけ。お互いに傷つけてしまうことを理解した側から、距離を置くしかなくなる。この場合はレット@凰稀から離れるわけだが、スカーレット@朝夏は、それを理解できない。悲嘆という言葉がふさわしい幕切れであった。

(ヤマアラシのジレンマとは、身体に針が生えているヤマアラシは、寒い晩に身を寄せ合って暖めようとしても、お互いの針で相手を傷つけてしまうので、近づけない、という寓話である。【→Wikipedia】)

誰に対しても外面だけで生きている朝夏スカーレットに対して、その本心を指摘する役としてスカーレットⅡ@純矢 ちとせが登場する。スカーレットⅡ@純矢 ちとせは、両手を拳にして「なにやってるのよぉ」ともどかしそうにスカーレットをけしかけたり、病院のバザー会場ではしゃぐ姿とかめちゃくちゃ愛らしい。純矢 ちとせのスカーレットⅡは、「娘役芸」というのを堪能させてくれる。スカーレット@朝夏とスカーレットⅡ@純矢が歌う「あなたと私はうらおもて」は、アルト(朝夏)とソプラノ(純矢)の二重奏になっていて素敵だった。

ベル・ワットリング@緒月 遠麻とエルシング夫人@風羽 玲亜・ワイティング夫人@天玲 美音のケンカとか、娘役にはさせられないよね…(このメンバーの役柄は大好きですけどね)。

宙組は、演技も歌もOKの中堅どころの娘役(美風 舞良、大海 亜呼、純矢 ちとせ、愛花 ちさきら)がいて、2番手格のすみれ乃 麗もいて、下級生も育ってきているのが頼もしいね。