【期間限定】児童ポルノ禁止法改正案に対する陳情

漫画家・赤松健さん(@KenAkamatsu )の6月20日付けTweet:【はちま寄稿】によると、児童ポルノ禁止法改正案は、『自民党内では「廃案 → 正式に差し戻し」でほぼコンセンサスがとれている模様』ということです。そこで、6月10日に兵庫県第六選挙区選出の大串まさき衆議院議員に送付した陳情書を、期間限定で公開します。(様子を見て、掲載を継続する可能性もあります)。

児童ポルノ禁止法改正案については、「漫画・アニメの規制検討が盛り込まれている」ことが問題となっていますが、表現の自由への規制を放っておくと、宝塚歌劇まで規制されかねないので、重い腰を上げてみました(星組のロミオとジュリエットは、二人が天蓋付きのベッドで一晩過ごすシーンがある)。基本的に政治活動はウォッチャーする側に回りたいと思っています(笑)。

ポルノの中でも、最も不愉快で醜悪なものは、「実在の児童に対する強制わいせつを記録し、あまつさえそれで利益を得ようとするもの」です。被害を受けた方達への性的二次被害・心理的社会的ダメージを可能な限り防ぎ、ケアを充足することも重要と思います。

(参考)

拝啓 自民党 衆議院議員 大串まさき様

突然、この様なメールを送る無礼をお許し下さい。私は、兵庫県宝塚市に在住する宮本啓子と申します。Webサイト( http://livelovelife.net/ )では、宝塚歌劇の観劇録などを書いております。

今国会に提出された「児童買春・児童ポルノ禁止法(以下、児童ポルノ禁止法)」改正案の下記の点について、陳情を申しあげたく、メールを書かせて頂きます。ご一読頂き、ご検討頂ければ幸いです。

今回の児童ポルノ禁止法改正案の附則2条には、漫画・アニメの規制検討が盛り込まれていることが明らかになっています。規制の内容は、「児童ポルノの単純所持の禁止・製造禁止」が、「漫画やアニメ、CGにも適用拡大」されること、また「18歳未満のキャラクターや、18歳未満に見える絵柄であれば性的な表現はソフトな表現も全て規制の対象」とあります。

この点に関し、自民党の法務部会でも議論が交わされたとインターネット上で話題になっておりますが、表現の自由は、憲法で保障された権利です。その精神を守るため、改正案中の附則第二条を削除し、漫画・アニメなどの創作物への表現規制を行わないとすることを、明文化して頂きたいのです。

わが国の漫画・アニメ作品は、国際的にも高い評価を受けています。第52回ベルリン国際映画祭でアニメーションとしては史上初の最高賞である金熊賞を受賞した宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』(スタジオジブリ)がその代表例です。

この作品の主人公は、小学校5年生(10歳)の千尋という少女です。千尋は、異世界に紛れ込み、八百万の神々が集う湯屋(温泉旅館)の下働きとして働きます。この作中では、「回春」という文字が書かれた屏風が描かれ、千尋が、湯屋の中で、「”神”の身体を洗う」場面があります。この場面はインターネット上で「湯屋=風俗」ではないかと、話題になりました。大串議員は、『千と千尋の神隠し』という名作が、「18歳未満に対する性的な(ソフトな)表現」に該当するため、規制対象になっても良いとお考えでしょうか。

このように考えていくと、今回の児童ポルノ禁止法改正案の附則2条は、わが国の漫画・アニメ文化を衰退させる危険をはらんでいます。現政権は、「クール・ジャパン戦略」を推進し、海外に日本文化を発信しようとの取り組みをされていますが、日本の漫画・アニメ文化は、「クール・ジャパン」のコンテンツたり得ず、衰退しても良いということなのでしょうか。

いわゆるポルノと呼ばれる、わいせつ物(わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物)には、不愉快な物が多くあります。その中で最も不愉快で醜悪なものは、実在の児童に対する強制わいせつを記録し、あまつさえそれで利益を得ようとするものです。こういった現実的に被害者が存在する物や対象等が明確な殺人予告・ヘイトスピーチ(憎悪表現)などは、憲法第21条における表現の自由の精神とは、相容れないものであり、制約があるのは当然と考えます(これは、ヘイトスピーチ等を規制するための法律が必要ということではありません)。こちらについては、被害を受けた方達のケアを充足することも必要です。

しかしながら、漫画等については、デンマーク国法務省によって、小児性愛のイラストや漫画が性犯罪を誘発するエビデンスはないという研究結果が報告されており、日本国内でも「性表現や暴力表現が犯罪を直接的に引き起こしたり、発生件数を増加させたりすることはない」(科学警察研究所とハワイ大の共同研究)との報告があるとのことです。資料は別途、事務所にお送りさせて頂きます。

これらのエビデンスに基づき、児童ポルノ禁止法改正案の附則2条について見直し(削除)を強く求めます。「性的な表現」という曖昧な定義により、漫画・アニメ作品を規制してしまうと、今度は、インターネット上のアダルトサイトの需要を増やす可能性もあります。米国では過去に禁酒法のため、ギャングによるアルコールの闇流通が増加したと言われるように、です。

ここまでお読み頂き、本当にありがとうございます。

知識科学の学位をお持ちで、手塚治虫記念館のある宝塚市を選挙区とされておられる、大串議員なら、わが国における漫画・アニメ文化の重要性を理解し、国会で働きかけてくださると信じております。

ご多用とは存じますが、ぜひ、今回の児童ポルノ禁止法改正案の附則2条について適切な対応(見直し・削除)をご検討ください。よろしくお願い申し上げます。

敬具

宮本啓子(直筆署名)

平成25年6月10日

住所: 兵庫県宝塚市

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