[Zuka] 2013年花組『戦国BASARA』

カプコンの『戦国BASARA』シリーズを宝塚歌劇で初の舞台化。カプコンとは『逆転裁判』シリーズの舞台化でも組んでいるとはいえ、『戦国BASARA』の舞台化の報が流れた時は、ヅカファンの中で期待と不安のどよめきが起きていました。そしてなぜか、東京でしか公演しないという。やられました。あんまり遠征しない人なのですが、今回はたまらず遠征しました(6/17観劇)。体調不良を押して行った甲斐があった舞台でした。

10分ほど遅刻して東急シアターオーブに入ったのだが、場内に響き渡る蘭寿さんの声に反応し、期待が心に湧き上がる。物語は、武田信玄@華形ひかるが、軍師・山本勘助@高翔みず希の提案で、上杉軍との大がかりな戦を仕掛けようとしている所から、本格的に始まる。蘭寿とむが務めるのは、武田信玄@華形ひかるの腹心である闘将、真田幸村。

 武田軍は全員、赤いお衣裳を身に着け、指物を突き上げ、武田軍のシンボル、”風林火山”を歌い、踊る。おお、かっこいい。ゲームとのコラボなので、アップテンポでキレのいいリズムのダンスが続く。バックに設置されているスクリーンをフル活用し、色とりどりの映像が流れ、群舞を効果的に盛り上げる。最初から、会場内はヒートアップしていた。 

あらすじを一言で言ってしまうと、「真田幸村・成長物語」であるのだが、出てくるキャラすべて、キャラがたっており、ストーリーもまっすぐ王道路線で、演じるのは花組である。これで面白くなきゃ嘘でしょう。花組に組替えした、明日海りおを含め、花組の実力、ひいては宝塚劇団の実力を遺憾なく発揮した舞台であった。

蘭寿とむ演じる真田幸村は、「甲斐の虎」と呼ばれる信玄公の実施的な後継者と目されている。信玄公への忠義心が篤く、お館様のためならたとえ日の中水の中と意気込む、勇猛果敢な熱血漢で、二本槍を巧みに操る操る若武者である。蘭寿さんの熱演が光った。

さて、真田幸村の父である真田昌幸@月央和沙は、武田信玄の宿敵、越後の上杉謙信@明日海りおとの合戦で、戦死する。そこで、信玄は、真田昌幸の一子幸村をわが子同様に育てる決意をする。

この最初の場面で、父を亡くして悲しみにくれる幸村は、信玄に張り手を食らう。そして「ちぃちぃうえええー」と叫びながら、殴り返す。これが数回繰り返された後、「ちぃちぃうえええー」が「おやかたさまぁぁ~」になって叩き合いという、すごいスパルタな光景が繰り広げられた。
舞台では演技なので本気で殴り合いしているわけではないし、戦国時代の物語なので、気にしなければいいのだが、体罰が問題になった昨今なので、敏感に反応してしまった(痛そうなのよ)。

ゲーム中では信玄と幸村の「殴り愛」として有名らしい。→【ピクシブ百科事典の真田幸村(戦国BASARA)

成長し、信玄の片腕となった幸村は、戦で両親を失った「いのり」と呼ばれる少女@蘭乃はなとの語らいを安らぎにしている。いのり@蘭乃はなは、幸村に向かって、「自分を大事にしてくださいね」と語りかける健気で優しい少女である。シンボルカラーは黄色。いのり@蘭乃はなは、物語の2/3辺りで出番が終わるのだが、彼女の真摯な願いが、蘭寿幸村と明日海謙信に与えた影響は大きく、私はラストの蘭寿幸村と明日海謙信の殺陣で、思わず、いのりに「二人を守って!」と、祈りました。

武田軍の宿敵である越後の上杉謙信@明日海りおは、「凍り付いた剣」のイメージで、麗しく登場した。明日海謙信は、一目見たものを凍らせるような冷酷な瞳で、長い白髪をたなびかせ、上杉軍に毘沙門天の化身(カリスマ)として君臨している。美しいわ。

上杉軍の配下は、人物造形や配置のバランスがすごく良い。宇佐美定満@鳳 真由や直江兼続@大河 凜は、実直で有能な部下を演じていて良い感じだし、上杉謙信が、「私の美しい剣」と呼んで寵愛しているくノ一(女忍)・かすが@桜咲彩花も重要キャラである。

明日海謙信が、かすが@桜咲彩花を抱きしめて、「私のために戦ってくれ」というような場面では、背景に赤いバラが舞う映像が映し出され、二人の陶酔の世界に繰り広げられる、というナルシスティックな演出で、演者は大まじめに、キザで格好良くクールな姿勢を崩していないところが、また会場の微苦笑を誘う。いいよ、上杉軍( ・∀・ )

一方の武田軍で、真田幸村の配下の忍である猿飛佐助は、望海 風斗が演じているのだがオーシャンズ11のベネディクトとは打って変わり、真面目でお堅い蘭寿幸村にチャチャを入れる、軽妙で、小気味の良い忍び役で登場した。猿飛佐助@望海 風斗は、同じ忍びの里の出身である、かすが@桜咲彩花にホの字というのもツボである。最初に登場したとき、へ?だいもん(望海のあだな)とびっくりした。演技の幅が広いね。

それから、物語の展開ではそんなに大きなウェイトではないのだが、登場する度に、観客の視線をかっさらっていくのが、春風 弥里の奥州筆頭・伊達政宗。眼帯に鎧甲という出で立ちで、どこからともなく颯爽と現れ、真田幸村@蘭寿とむと剣を交えたり、からかったりしながら叱咤激励しては去って行くという美味しい役である。これを、みーちゃん(春風)が演じると、かっこよくてかっこよくて、時折語尾に、「OK?」「you see?」とか英語が入るのも、この奥州筆頭なら許せる的な感動があった。←表現する言葉が見つからずやや意味不明。

(ここで告白します。私は、眼鏡をかけていても目が悪いので、山本勘助@高翔組長春風みーちゃんを見間違いました。パンフで2人のスチールが並んでいるのですが、目元や面立ちが似ている気がします。しかし、私は見間違いしすぎなので、観劇の時は、配役で見て、演者の名前はなるべく意識しないようにしたいです)。

あとは、「夢」の役で出てくる、芽吹幸奈と娘役達の舞が、美しかった。芽吹幸奈の「夢」は、「理想の母像」のようなモチーフを感じた。戦いに疲れた武士を癒やす笑み、たおやかで、穏やかで美しい舞が、まさしく「夢」=ドリームの中の女神であった。

タカラヅカ版『戦国BASARA』は、カプコンとのコラボレーションが絶妙にうまくいっている。史実や歴史考証などはぶっちぎって、ひたすらエンターテインメントを目指した舞台に仕上がった。『逆転裁判』のようにシリーズになると嬉しい(期待)。フィナーレのショーも素敵だった。打ち掛けでデュエットダンスは、斬新で美しくて、目を見張った。しかし、どの衣装も重そうで、動きづらそうではあったなぁ。花組の熱演に感謝!

■主演・・・蘭寿とむ、蘭乃はな

ミュージカル・ロマン『戦国BASARA』-真田幸村編-

原作・監修・制作協力/株式会社カプコン
脚本・演出/鈴木圭
東急シアターオーブ公演
公演期間:6月15日(土)~7月1日(月)