[Zuka] 2013年星組『ロミオとジュリエット』【B】(1)

星組『ロミオとジュリエット』の役替わり【B】パターン最終日を観劇しました。諸事情(寝過ごし&勘違い)により、開演を45分ほど過ぎて入ったので、1幕が終わるまで席に着かずに立ち見をしていました。個人的には、【B】パターンのほうがしっくりきた。

◆役替わりする配役
【A】 5月31日~6月7日、6月25日~7月8日
ティボルト = 紅ゆずる         ベンヴォーリオ = 礼 真琴
マーキューシオ = 壱城あずさ     パリス = 天寿光希
死 = 真風涼帆              愛 = 鶴美舞夕

【B】 6月8日~6月24日

ティボルト = 真風涼帆        ベンヴォーリオ = 紅ゆずる
マーキューシオ = 天寿光希      パリス = 壱城あずさ
死 = 麻央侑希              愛 = 礼 真琴

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これは【A】パターンを経て、演者側が進化しているのか、私の個人的に好みなのか判らないけれど、役替わりしたメンバーは、それぞれ味のある演技をしていた。

まず順に書いていくと、 第7場舞踏会の場面の真風涼帆のティボルト は圧巻であった。

仮面舞踏会で、ロミオ@柚希礼音とジュリエット@夢咲ねねが出会い、恋に落ちる。それを見ていたティボルト@ 真風涼帆は苦悩する。ティボルトはジュリエットの従兄であり、キュピレット家の後継者として、モンタギュー家との対立の矢面に立つ立場である。宿敵モンタギュー家の跡継ぎロミオと、キュピレット家の一人娘ジュリエットの恋愛を見過ごすわけにはいかない。

だが、彼は「キュピレット家の後継者」という立場ではなく、ジュリエットに恋する1人の青年として、「復讐の手先になっている俺は、本当の俺じゃない」と呻くように歌い、ジュリエットを恋い慕う。

子どもの頃には戻れない 俺を変えたのは大人たち
今の俺を救えるのは愛する君だけ OH~ジュリエット

真風ティボルトは、ロミオに夢中になっているジュリエットを見て、「憎しみは 俺を突き動かし拳を握り上げ 戦い始めている 誰も止められない」と、絶望の表情を浮かべる。真風涼帆のティボルトは、本来は心根が真っ直で誠実な青年であることを伺わせるのだが、この場面を見ただけで、何が彼を追い込み、何が彼を苦しめ、絶望の淵に追いやったかを察することができる。

そして真風ティボルトは、ロミオとジュリエットが極秘に結婚式を挙げたことを耳にし、彼は「あらゆる類いの 女を抱いてきた ただ一人 触れられぬ その名はジュリエット」と、ロミオを殺し、ジュリエットに告白することを決意する。そしてモンタギュー家に乗り込んで、マキューシオを殺し、怒り狂ったロミオに刺殺される。

観客の立場として思う。ここで、ティボルトが、ロミオを殺し、ジュリエットに告白したところで、ジュリエットはその求愛を受け入れるだろうか。

真風ティボルトの悲しみは、先は行き止まりであることを理解しているにも関わらず、彼が選択できる道が一つしかなく、その道を選ばざるを得なかったところにある。真風ティボルトが望んだのは、彼自身の破滅であり、「それ」こそが身動きのとれない苦しみから救われる唯一の希望であった。彼の抱える絶望は計り知れず、自らを黒く塗りつぶした。そんな風に思えた、真風涼帆のティボルト像だった。

長くなったので、 紅ゆずるのベンヴォーリオその他役替わりキャストの感想については次回の更新にします。←いつになるだろう。