珍しく、レビューについて書いてみよう。レビューは、タカラジェンヌ達の歌と踊りで構成されるショー。
宝塚歌劇団が、初めてレビューと銘打って上演したのは、1927年(昭和2年)の『モン・パリ〜吾が巴里よ〜』(演出:岸田辰彌、振り付け:白井鐵造)。宝塚歌劇といえば、必ず、ラインダンス(ロケット)や大階段が紹介されるが、その2つもこの作品で初めて世に出たと聞く。現在でもレビューを公演で行っている劇団は宝塚歌劇団とOSKくらいという。
あおきが、初めて宝塚歌劇を観たのは、小学生だったが、見事に揃ったラインダンス(ロケット)は衝撃的だった。以来、あおきにとっては、タカラヅカといえばレビュー、レビューといえばタカラヅカ。お芝居1本立ての公演でも、フィナーレの歌と踊りは絶対に欲しい(←これを刷り込み現象=インプリンティングといいますw)。でもねー、レビューは感想を書くのを難しい。毎回すごーい・格好いい・美しい、とかのオンパレードになって、力尽きるのだ。しかしっ、『Amour de 99!!-99年の愛-』 は素敵なレビューだったので、概要だけでもご紹介したい。
言い訳…前振りが長くなったが、今年の前半の大劇場公演は、大作1本立てが多く、その中で唯一レビューがあるのが、今回の宙組公演。宝塚100周年を目前に控える99年目を記念したレビューで、演出は藤井大介。
本作は、近年亡くなった劇団専属演出家のうち、ショー作りを中心にしていた5人へのオマージュとして捧げられている。過去に上演されたレビューの名場面を抜き出して構成した、いわば「選り抜き・宝塚レビュー」。それぞれの演出家の特色が出た場面を選んで組み合わせているのだが、切り替えごとに、各人の写真と初演時の舞台写真を紹介する演出が功を奏し、つぎはぎにならず、また緩急も良いので、違和感なく55分を楽しめるようになっている。初めての歌ばかりだったが、楽しかった。
プロローグは、藤井のオリジナル。幕が上がり、暗転のまま音楽が流れ、合図と共に舞台が明るく照らされる。銀橋にずらりとタカラジェンヌが並んで現れた。チョンパだ。全員が黒の刺繍が施された真っ白なお衣装で、センターにトップ娘役の実咲 凜音、あとは男役が並ぶ。アニバーサリーらしい華やかな幕開けである。
実咲 凜音が男役達を引き連れて「99の愛を見せて 今こそ」と歌うと、レビューの神に扮した凰稀かなめが登場し、「愛の宝石箱を あなたに贈りましょう。アムール アムール アムール」と応える。専科・美穂圭子の美声が・・歌の女神のようです。
第一の愛は、ムッシュ・ディニテ〈気品〉内海重典に捧げられる。スクリーンに内海重典の写真と当時の舞台写真が映し出され、朝夏まなとを中心に第5場『ザ・レビュー』、第6場で情熱の赤を着こなした凰稀かなめがスペインをイメージした『グラナダ』を歌い踊る。
第二の愛は、ムッシュ・エレガンス〈優雅〉横澤英雄のザ・ストームより「祈り」。この第8場「祈り」は凄かった。青を基調とした衣装で揃えた宙組メンバーのダンスとカゲコーラスで構成されているのだが、言葉には出さない・言葉にはならない強い想いが込められている踊りだった。
第三の愛は、ムッシュ・シャラール〈暖かさ〉の高木史朗による、出ました「タカラジェンヌに栄光あれ」!! 歌うは、緒月遠麻。そして『華麗なる千拍子』より「リオのリズム」。リオのカーニバルのイメージで、パッショネイトなフルーツ達が次々に登場、最後にパイナップルの女王様@凰稀かなめが現れ、観客席からどよめきが起きる…。女王様(おみ足)の威力は、すさまじかった。パイナップル爆弾並だよ。
組配属されたばかりの98期生が入ってるパイナップルの女達のロケットも可愛かった。先週までオーシャンズ11で花娘達のコケティッシュなロケットを観ていたのもあって、パイナップルの女達の初々しさが新鮮だった(笑)。
第四の愛は、ムッシュ・ボーテ〈美しさ〉小原弘稔。第14場、蓮水ゆうやと七海ひろきに、ショーガールA舞花 くるみ・夢莉 みこ、他による「愛のクレッシェンド」。2013年6月9日付けで退団予定の舞花 くるみ・夢莉 みこへの配慮が嬉しい。カゲコーラスが美穂圭子・美風舞良・大海亜呼・純矢ちとせ・花音舞・花里まな、と超豪華。
そして第15場、実咲 凜音と朝夏まなとを中心とする「パッシィの館」。朝夏の泥棒紳士が令嬢・実咲から首飾りを盗むために、愛をささやきワルツに誘う。老紳士の寿つかさと貴婦人の鈴奈 沙也の動きに注目してしまいました。良い感じ。
第五の愛、ムッシュ・ヌーヴォーテ〈斬新さ〉鴨川清作による「愛の宝石」を悠未ひろが歌う。悠未ひろの歌声はかなり好き。次の第18場の「シャンゴ」も良かった。第17場は、美穂圭子が歌うジャズ「時には母のない子のように」に乗せて、男 凰稀 かなめと女 緒月遠麻が、力強く踊る。このダンスは、妙に逞しくて、初?の女役緒月遠麻で正解ですよ。うん。凰稀 かなめも意外とアフリカの大地イメージに合っていた。「シャンゴ」の総踊りでは、バックに垂れ下がる金色の垂れ幕の1本1本に、赤いライトが当たり、松明のように見える斬新な演出が素晴らしい。
そしてエピローグは、「未来への愛」。タイトルが泣ける。娘役ハッピーレディ達のキュートな「ハッピー・トゥモロー」(ハッピー・トゥモロー・横澤英雄)、燕尾服の紳士達が赤いバラ一輪持って踊る「愛!」(ポップ・ニュース!・鴨川清作)、凰稀 かなめと実咲 凜音のデュエットダンス「TAKARAZUKA FOREVER」(ザ・レビューⅡ・小原弘稔)。カゲソロ美穂圭子。
温故知新というけれど、「昔は良かった」でもなく、「そんなの古いよ」でもなく、先人達の努力に敬意を払い、さらに高めていこうという姿勢が打ち出た、とても素敵なレビューだった。
そして、ラストの大階段降りで、七海ひろき・すみれ乃 麗・伶美 うららが、旧・宝塚ファミリーランドの大人形館テーマソングになっていた 「世界はひとつ」を歌っていたのが、懐かしくて嬉しかった。「ようこそ、おいでなさい。世界はひとつ♪手を繋ぎましょう~歌と踊りの七つの海を一緒にまわりましょう~」。カイちゃん(七海)のテーマだね(笑)。
レビューは宝塚歌劇団の宝です。
Youtube→EPレコード盤 1967年星組グランド・レビュー「世界はひとつ」テーマソング
■主演・・・凰稀かなめ、実咲凜音(宙組)
レビュー・ルネッサンス『Amour de 99!!-99年の愛-』
作・演出:藤井 大介
内海重典 (1939年入団)
“ムッシュ・ディニテ” テーマは気品
「ラ・グラナダ」(1965年)
「ザ・レビュー」(1977年)横澤英雄(1953年入団)
“ムッシュ・エレガンス” テーマは優雅。
「ボン・バランス」(1975年)
「ハッピートゥモロー」(1976年)
「ザ・ストーム」(1982年)高木史朗 (1936年入団)
“ムッシュ・シャラール” テーマは暖かさ。
「華麗なる千拍子」(1960年)
「タカラジェンヌに栄光あれ」(1963年)小原弘稔(1956年入団)
“ムッシュ・ボーテ” テーマは美しさ。
「クレッシェンド!」(1981年)
「ザ・レビューⅡ」(1984年)
「メモアール・ド・パリ」(1986年)鴨川清作(1952年入団)
“ムッシュ・ヌーヴォーテ” テーマは斬新さ。
「シャンゴ」(1967年)
「ハロー!タカラヅカ」(1970年)
「ポップ・ニュース!」(1972年)
「ラ・ラ・ファンタシーク」(1973年)