[diary] [Stage] COVID-19パンデミック雑記(16)劇場で舞台クラスター発生【3】

2019年5月22日キンキーブーツ@オリックス劇場

7月18日に三浦春馬さんがお亡くなりになりました。『キンキーブーツ』は再演(2019)で初見だったのですが、ドラァグクイーンのローラ役を渾身の力で演じる三浦さんに敬服したことを思い出しました。ご冥福をお祈りいたします。



東京都・首都圏で感染が拡大すると地方にも影響が及ぶ。 東京都はくすぶってる状態で緊急事態宣言を切り上げたので懸念していましたが、増えましたね。(;´д`)トホホ…

一部の感染対策が難しい業種・業態に蔓延して20代30代が7~8割とされていたのが、先週から市中感染が増えて陽性者(感染者)の年齢が上がってきました。1週間から10日で重症化することがあるのがCOVID-19の特徴ですが、50代以上の絶対数が増えると重症者も確実に増えていきます。

東京都内の最新感染動向によると、入院患者数は6月25日から増加に転じ、重症患者数は7月12日から増加に転じています。入院患者数の増加から重症患者数の増加に転じていくのに3週間くらいのタイムラグがあります。


1.新宿の劇場で発生したクラスターについて

新宿区に所在する新宿シアターモリエールにて上演されていた舞台『THE★JINRO ―イケメン人狼アイドルは誰だ!!』(ライズコミュニケーション主催)から新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の集団感染(クラスター)が発生した件。

入院していた関係者や出演者の方たちの退院報告が出始めています。また新型コロナウイルスの感染から発症までの潜伏期間(1日から12.5日、多くは5日から6日)を考えると、7月5日千秋楽から2週間ですから、そろそろ新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性の報告も落ち着く頃ですね。関係者の皆様、お見舞い申し上げます。

7月16日23時の報道では陽性者(感染者)77人。17日にも観客1の報道がありました。出演者・スタッフ・観客合わせて、80人前後の集団感染でしょうか。

出演者間で感染拡大する事態を恐れていたのですが、もっとも深刻なのは、公演中に舞台上から観客まで漏れ出すことです。オーケストラや劇場が次々と再開しています。ここで感染対策を見直してみて踏ん張って頂きたいです。

本公演では6月30日から7月5日の全12公演全てに観客の陽性者(感染者)がいますが、特徴として1人平均4回見るほどの熱心なリピーター客が多いそうです(日刊スポーツ2020年7月15日)。

最初は物販やファンの出待ちでの関係者と観客の接触による感染を考えたのですが、それだけでこの規模の集団感染になるのか疑問です。

あくまで推測ですが、出演者の中に、公演初日から無症状のウイルス保有者(陽性者)が(複数名)おり、歌い踊るステージから、ウイルスを含む微小飛沫を拡散させたのではないか。

感染成立にはウイルスにさらされる量(曝露量)が関係しています。陽性者は、密閉空間で長時間(2時間)の観劇を複数回した方が多いというのは頷ける話です。

不織布マスクでも布マスクでもウイルスの流入を完全に防ぐことは出来ないです。

小劇場で舞台と客席が近く、出演者たちはマイク無しで生声が届くように声を出して張り切っていたとの話も耳にしました。飛沫が多く飛んだでしょう。ファンのための張り切りが仇になっちゃうのが嫌なとこですね。飛沫感染※。

※新型コロナウイルスが空気感染するかというのはまだ議論の余地があり、WHOは慎重な態度を崩していません。WHOの公式見解(9 July 2020)によると、屋内で、長時間に渡って密集し、換気が不十分な場所に、感染した人がいた場合は、短い範囲(short-range)での微小飛沫(エアロゾル)伝播は除外できないとしています。

2.施設管理側には換気設備の整備を推奨

②公演中は密閉状態。開館前後は窓を開放し、空調・換気扇等が作動(スポニチ(7/12)

閉鎖された小さな屋内に不特定多数の人たちが集まり、音楽やパフォーマンスに歓声を上げて盛り上がるのが楽しい。パンデミック前まで小劇場やライブハウスでは、その密度の濃さがセールスポイントでした。

開演中は防音のためにドアや窓は閉めておくのが本来なので、密閉・密集・密接の三密空間が容易に形成されます。

微小飛沫に含まれた新型コロナウイルスは、閉鎖された空間に浮遊して伝播する可能性があるとされます。そのため屋内では換気によって空気の入れ替えを行い、感染経路を遮断する。換気とは、屋内の空気を排出して、外気と入れかえることです。

本件では開演前と閉館後は劇場側が、窓の開放による換気、館内の空調・換気扇・空気清浄機・空気除菌機の作動を行っていたそうです。

公演中の換気について、7月14日のNHKニュースで「換気のための窓は1か所開いていたが、途中の休憩時間になぜか閉められて2時間以上そのままだった」という観客の証言が出ています。他の報道でも「開演前や休憩中は換気し」とありましたが、2時間の上演時間中に換気がどうなっていたか。公演中の気流の流れと感染した人達の席配置はどうなっていたか。

7月15日の読売新聞による報道では、「都や保健所の調査では、公演中の換気が不十分だったことが判明しており、約850人が濃厚接触者と認定されている」とされているので、やはり微小飛沫が拡散し、換気不足で場内に滞留した疑いが持たれているのでしょう。

劇場、ライブハウス、コンサートホールなど、不特定多数を集客して屋内イベントを開催するような建物(施設)は、強制換気設備を整備することが推奨されます。

特に小劇場やライブハウスは三密(密閉・密集・密接)になりやすいので、換気は超重要です。公演中は防音のためにドアや窓を開けられないということなら機械換気に頼ることになります。

本公演は当初、渋谷CBGK シブゲキ!での開催予定だったのが、恵比寿・エコー劇場に変わり、最終的に新宿シアターモリエールに変更になっています。そのため演目の内容と劇場の設備に本来の想定と異なる不適合があったのかもしれません。

食品業界や飲食・給食業界は、BSE(牛海綿状脳症)騒動やO-157やノロウイルスによる食中毒、食品偽装表示問題など様々なトラブルが過去にありましたが、現場は粛々と対応するしかないんですよね。


「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気について

厚生労働省による商業施設等の換気量の基準は以下ですが、この基準を飛沫が飛び交う場所に該当させて感染が防げるのかは、不明です。

  • ・ビル管理法の考え方に基づく必要換気量(一人あたり毎時30m3)が確保できていること
  • ・この換気量を満たせば、感染を完全に予防できるということまでは文献等で明らかになっているわけではない
「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法(PDF)厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000618969.pdf
「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法(PDF)厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000618969.pdf
It is Time to Address Airborne Transmission of COVID-19 https://academic.oup.com/cid/article/doi/10.1093/cid/ciaa939/5867798

Figure 1. Distribution of respiratory microdroplets in an indoor environment with (a) inadequate ventilation and (b)adequate ventilation.
室内環境における微小飛沫(microdroplets)の分布 (a) 不十分な換気と(b)十分な換気 


日本発の「3密回避」策をWHOが採用

1.混雑した場所(多くの人が密接)
2.密着する状況(特に人々が手の届く範囲で会話)
3.閉鎖され囲まれた空間(換気不十分)