[Stage][OG] 柚希礼音『LEMONADE』

REON YUZUKI one-man show ミュージカル「LEMONADE」

柚希礼音・芸歴20周年記念の1人ミュージカル(one-man show)
作・演出:小林 香

幕開け。ドラマシティの舞台の上に、白いガウンに黒いパンツ、裸足の柚希礼音が踊り出て、柚希礼音で埋め尽くされた世界が始まったのを感じた。

LEMONADE
LEMONADE

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7月13日(土)17時公演@梅芸ドラマシティ

When life gives you lemons, make lemonade.
人生が君にすっぱいレモンを与えたら、それでレモネードを作るんだ。

パンフレットを開くと目に飛び込んでくる言葉。

「人生が」「君に」「すっぱいレモン」「与える」

人生が、レモンを与える。

開幕。舞台上で踊る柚希礼音を見守る。

柚希礼音が素足で板を踏みしめ、軽々と跳躍し、手足を伸ばし、ダイナミックに踊る。ずっと以前、真風涼帆が踊る姿に柚希礼音の影を見たことがあったが、今回は柚希礼音の姿に礼真琴の姿が重なった。星組の柚希礼音の系譜。

柚希礼音が表情を変え、白いガウンを羽織り、意気消沈した主人公の映(はゆる)の顔で、最低限の家具が置かれた殺風景な白い内装の部屋に現れた。

天文台を改築したサナトリウムの無菌室で暮らす映(はゆる)。原因不明の病によりこの部屋で一人暮らす「映」と主治医との連絡手段はコンピューターネットワークを介したチャット。

「映」は自身が立ち上げた広告代理店の仕事を部下に任せ、このサナトリウムで隔離されて暮らしている。「映」の中には、これまでの仕事と生活を失ったショックで、新しい2つの人格が生まれていた。

情熱的で奔放なイタリア人女性のリラと頭の切れる男性のブルー。リラは映の鬱屈を発散させる開放性があり、ブルーは「映」の代わりに積極的に広告代理店の部下に指示し、仕事を推し進める。

「映」は、2人が自分の中にいることを受け入れられない。そして、自分でいられる時間が少なくなっていることに怯え、医師に訴える。

照明が切り替わる。赤と青。

柚希礼音が「映」とリラとブルーを演じ分け、踊り分ける。

歌、踊り、芝居、朗読。柚希礼音しか出演しない舞台に「映」とリラとブルーという3人の登場人物が存在する。

消えてしまいそうな透明感をたたえて踊る「映」。
情熱的に赤いドレスを翻して歌い踊るリラ。
青いジャケットに黒いシャツ、ネクタイで力強く踊るブルー。

人格が異なると、表情、仕草や身のこなし、踊りの仕草、声音すらも変わってしまう。その切り替わりの見事さ。振付は「映」とリラを川崎悦子さん、ブルーをOguriさんで分担し、踊り方を変えてある。

「映」が手掛け、ブルーが口出ししている瀬戸内リゾートなどの広告の仕事が映像をふんだんに使って表現され、映像の柚希と本物の柚希が踊る。

「映」はサナトリウムに閉じこもろうとするが、リラは主治医に退院許可を取り、ブルーは映がいつでも仕事に復帰できるように部下とコンタクトを取り続ける。

そんな暮らしの中、「映」はサナトリウムの前身である天文台の管理人男性の日記を見つける。その日記に書かれていた言葉に「映」は強く引かれる。

「人生が君にすっぱいレモンを与えたら、それでレモネードを作るんだ」

人生が君に、すっぱいレモンという試練を与えたら、冷水と甘みを加えて望ましい人生に変えていくんだ。

日記には男性の生活、家族、そして天文台のことが細々と書かれていた。広がる銀河、スーパーノヴァのイメージ。「映」の心が開放されていく。

そして「映」はサナトリウムを後にする決意を固める。

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パンフレットに掲載されている白いダボッとした大きめのシャツとパンツを着ている柚希礼音が美しい。「映」風かな。ヘアメイクはCHIHARUさん。ナチュラルメイクが透明感を引き出している。きゃぴきゃぴ若さの「女子」ではなく、元男役にも見えない。数多の経験を積み重ね、これまでに幾つものすっぱいレモンをレモネードに変えてきた美しい女性。

『LEMONADE』には柚希礼音の20年間のエッセンスが凝縮されていた。

星組元トップスター、レジェンド柚希礼音。現役時代は約80人の組子を率い、退団後は梅田芸術劇場のもっぱらメインホールに豪華な共演者達と立ってきていた。それが今回はドラマシティに出演者は柚希礼音のみである。

たったひとりで、20年の芸歴で培ったありたけの思いと技量をつぎ込み、劇場の空間を隅から隅まで『LEMONADE』の世界で満たしていく。

この公演についての柚希礼音から作・演出の小林香へのリクエストは3つだったという。

「かっこいい ”柚希礼音” を見せたい」
「メッセージ性のあるミュージカルにしたい」
「死ぬほど踊りたい」

かっこいい。映からブルーに切り替わり、椅子に座って鏡を見ながら髪をかきあげ、ジェルで固めてリーゼントを作る姿は決まっていて、かっこよかった。久しぶりに見る、男役・柚希礼音である。余裕で現役に戻れる。

ただ終演後に私が本気でかっこよかったと脳裏に焼き付けたのは、この人生へのメッセージが詰まったミュージカルを、死ぬほど踊って表現し、観客に思いを伝えよう歌い、演技する白いガウンに黒いパンツ、素足の柚希礼音の姿である。

”映とリラとブルーの3人が重なると、LOVEになる”

そんなメッセージがラストに流れたが、3人が重なって柚希礼音の愛になっていくのを私は見たと思った。

囲み取材の動画を見ていたら、振付が難しいと正直に話す柚希礼音が、やっぱり正直者の紅ゆずるの親友なのも納得だった。

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柚希礼音 REON YUZUKI one-man show Musical『LEMONADE』公開ゲネプロ

作・演出:小林 香
音楽:江草啓太
振付:川崎悦子
振付:Oguri(s**t kingz)
美術:石原 敬
照明:高見和義
音響:山本浩一
映像:石田 肇
衣裳:ヤマモトヒロコ
ヘアメイク:CHIHARU
歌唱指導:西野 誠
演出助手:大月さゆ
舞台監督:齋藤英明
宣伝美術:吉永 誠
宣伝写真:後藤倫人
票券:インタースペース
制作:多田里奈
制作:山浦依里子
プロデューサー:小見太佳子
プロデューサー:沖山裕美企画・制作:アミューズ