[Zuka] 星組『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』(2)

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』のクリアポスター(発売日:2018年9月13日)が発売されるそうです。クリアポスターはパンフレットに掲載されている4人写りと同種のものですね。下段の布袋人形4人写りと上下になっているポスターでも良かったのですが、星組キャストのみの分です。

お衣装は、お衣装部さんの労作。素晴らしい再現度だけれど、ふもふした羽根や毛皮がついた重ね着で、暑いし重そう💦。やはり人間が着るには無理が💦。

紅さんの凜雪鴉のお衣装は振り袖のように長くて、両腕がだいたい90度になっているのを良く見る。かいちゃんの殤不患のお衣装は毛皮付きで背後はマントになっているので殺陣や所作でさばくのに相当の技量がいるね。琴ちゃんの捲殘雲のも。あーちゃんの丹翡のお衣装は帽子が大きくて、首まで埋まり、袖が大きいロングドレスでこれも殺陣が大変そう。麻央くんの殺無生は、背中の二本差しが自分では差し込めないという話だし、再現率の高さは演者の困難と裏表であることよ。

ル・サンクも出ます。ル・サンク特別編集「Thunderbolt Fantasy(サンダーボルト ファンタジー)東離劍遊紀(とうりけんゆうき)」「Killer Rouge/星秀☆煌紅」(アメイジングスター キラールージュ)発売日:2018年10月5日

円盤は詳細不明ですが、台湾公演分がBD・DVD化される模様。

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[Zuka] 星組『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』(1)

前回、時間切れだった続きです。ネタバレあり。

蔑天骸の配下、玄鬼宗

天寿光希演じる蔑天骸(ベツテンガイ)には3人の部下、大輝真琴の殘凶(ザンキョウ)、有沙瞳の獵魅(リョウミ)、天華えまの凋命(チョウメイ)がいる。

蔑天骸と殘凶は後述。有沙瞳が蔑天骸を宗主様と崇め、敬愛する獵魅のエキセントリックな雰囲気をうまく醸し出している。そして黒いお衣装の隙間からのぞく太もものチラリズム。この衣装は原作の再現だが、他のメンバーは上から下までお衣装でびっちり覆われている中で、すごく目立つ。色っぽいです。

天華えまの凋命は、台詞少なく、立ち回りも目立たない、しどころのない役だが、天華の存在感で持っている。弱いわけではなく、自らの役目を心得ている。この役であそこまで存在感を出せるというのに感心した。

天下の大悪党・蔑天骸様に部下が3人しかいないのかと思うと更にあらず、玄鬼宗という名もない配下がウヨウヨしている。ウヨウヨって言っても、パンフでは最大9人(拓斗れい、夕渚りょう、湊璃飛、蒼舞咲歩、隼玲央、希沙薫、碧海さりお、天飛華音、咲城けい)。フードを目深にかぶっているが、原作のような仮面はつけず素顔で出ている。なので、玄鬼宗に捲殘雲のパパがアルバイトしているのを発見したりする。殺陣では斬っても斬っても次の場面では生き返るというので、青鬼赤鬼を思い出すくらいにはまだ引き摺っているANOTHER WORLD。一人一人決めポーズが違ったり、性格も違うらしい。残念ながら私はそこまで発見できていないけれど(なぜなら殺陣はたいてい殤不患が相手なのでそっちに釘付け)。

剣鬼たち

原作では護印師の丹衡タンコウ桃堂 純)は、殘凶(大輝真琴)に追い詰められ、蔑天骸ベツテンガイ天寿光希)によって粉砕される。

ヅカ版では丹衡は殘凶によって刺し殺される。この改変は時間の制限もあるだろうけれど、結果的に剣の使い手として丹衡より殘凶が勝ることになってしまっている(殘凶には玄鬼宗も加勢しているから丹衡には不利な状況ではある)。丹衡は一族に伝わる丹輝劍訣を会得し、妹の丹翡タンヒ綺咲愛里)よりかなり強いはずだが、殘凶には勝てなかった。

その殘凶は、星組職人の大輝真琴がワイルドに演じていて大迫力。白基調の上品な長衣をまとった丹衡との対比となっている。

丹衡を殺し、丹翡を襲った殘凶は、たまたま居合わせた殤不患ショウフカン七海ひろき)に、

「わかったよ。あんたは何も恥じなくていい。俺も本気出すからよ」

と、本気を出した殤不患に負けてしまう。

殤不患があまりに強くて、あっさりと負けた殘凶が狼狽し、「認めぬ。認めぬぞ、この身を剣に捧げて生きながら、斬られた相手の名前も知らぬまま果てるなど」と叫ぶ。この言葉は殤不患の名前を聞き出し、蔑天骸に報告する意図もあるが、剣による名誉を尊び、負けを死に値する恥辱とする剣鬼である事も表している。殘凶は、ブーメラン状の武器を操る獵魅や凋命よりボスの蔑天骸に気風が近いのではないかと、終盤で凜雪鴉リンセツア紅ゆずる)に「覇者の気風」を盗まれて吠える蔑天骸を見て、思ったりした。

死の間際に殘凶は、原作にはない捨て台詞「冥土でまた会おうぞ」を吐くのだが、冥土という言葉に敏感に反応したよ…AN…(笑)。マイケル(大輝)は山椒は小粒でぴりりと辛い的な良い役者さんです。

悪党の驕慢

原作では最終話で蔑天骸と凜雪鴉の一騎打ちが描かれるが、ヅカ版では凜雪鴉と蔑天骸が向かい合ったところに鳴鳳決殺メイホウケッサツ殺無生セツムショウ麻央侑希)が、「凜雪鴉を殺すのは俺だ」と叫んで、割って入り、蔑天骸に刃を向ける。そして蔑天骸と殺無生が相打ちとなる。原作と異なりヅカ版では、この二人の剣の技量が同等に描かれる。

凜雪鴉と殺無生では、凜雪鴉が幻術を弄し、殺無生を相手にしていなかったので、トータルでの強さでは、殺無生より凜雪鴉のほうが上である。

そう考えていくと、原作よりも蔑天骸のスケールがややダウンしている気がする。原作では蔑天骸は、凜雪鴉と並び立つスケールに感じたが、ヅカ版では殺無生と同等である。

無敗にして無敵の剣術を誇る蔑天骸が、凜雪鴉と剣を交わす事も出来なかった。そして蔑天骸に強大な力をもたらす源であった天刑劍は「ただの、魔物を閉じ込めるための蓋」であった。護印師が厳重に守護していたのは「天刑劍」ではなく、魔神・妖荼黎ヨウジャレイを閉じ込めている封印となっている「劍」だったのである。

明らかになった事実と凜雪鴉の「からかい」が、蔑天骸に衝撃を与える。悪党の驕慢が恥辱という土塊になった瞬間。蔑天骸が誇る無双の強さ、覇者の気風は喪われた。その恥をすすぎ、凜雪鴉を見返すために、強大な力を欲した蔑天骸は、己の命と引き換えに魔神・妖荼黎ヨウジャレイを復活させる。

魔神の復活を望む妖魔・刑亥ケイガイ夢妃杏瑠)が、蔑天骸に「私の身体を使え」と言って生贄となり、蔑天骸と共に妖荼黎を復活させる。ここは、妖荼黎が蔑天骸に憑依して依り代とし、刑亥が妖荼黎の使い魔となったという理解で良いのだろうか。この場面はヅカ版オリジナルなんだけれど、ちょっとわからんかった。

天寿光希の蔑天骸の迫力でバランスが変わってくるので、がんばってくださいませ。ショーも大忙しだけれど。

夢妃杏瑠が熱演する刑亥はムチ使いの人形使い、死霊使い。刑亥は凜雪鴉に何を盗られたんでしょうか。めっちゃ怒っていたのに、「天刑劍」のひと言で態度を変える変わり身の早さ。魔神がウヨウヨいるほうが妖魔は居心地が良いのね。

殺無生は『Thunderbolt Fantasy 生死一劍』を見ると「盗まれたもの」が判って、凜雪鴉のほうが悪党に見える。だから稀代の大怪盗、掠風竊塵リョウフウセツジンなんだなと思う。殺無生を知るためには生死一劍を観るべし。

(おまけ)ヅカ版の凜雪鴉は剣を取って戦わないが、その実、剣の技量は殤不患とほぼ互角であることがラストで判るようになっている。この2人のスケールがデカすぎて、他の人からなかなか理解されない。凜雪鴉は食わせものの大怪盗で、殤不患はバカ正直のなまくら刀です。続くたぶん。