[OSK] 『My Dear~OSK♥ミー&マイガール♥~』

OSK日本歌劇団の男役スター・真麻里都の退団公演。初日18時30分公演に行ってきました。8月30日(木)から9月2日(日)までの4日間8回公演しかなく、全席完売ということで、近鉄アート館の客席がぎっしりでした。

1937年に英ロンドンで初演された『Me And My Girlを原作に、宝塚歌劇団出身で、OSKの振付も多く手がける麻咲梨乃さんが脚本・演出・振付を担当。基本の人物関係は似ているけれど、役名やストーリーが異なっていて、宝塚版『Me And My Girl』と全く異なった味わいの歌って踊るハッピーミュージカル。

初日と言うこともあってか、舞台に静かな緊迫感というか集中力が漲っていて、観ていて感きわまりました。ダンスのOSK、OSK屈指のダンサー真麻のためにミーマイをカスタマイズしたOSKらしさの漂う公演です。真麻さんが『Me And My Girl』が大好きで、上演希望を出し続けていたそうですが、叶って良かった。

真麻里都様、ご卒業おめでとうございます。素敵な舞台をありがとうございました。人生の第二章が実り多きものになりますよう。

男役・真麻里都の集大成が輝く! OSK日本歌劇団『My Dear~OSKミー・&マイガール』開幕! – 演劇キック(観劇予報)

__

(あらすじ)

ロンドン郊外にある高級ホテル『THE ROYAL GARDEN HOTEL』は貴族の家系であるハミルトン家が経営し、350年続く由緒正しい格式あるホテルである。経営は順調だが、大きな問題があった。後継ぎがいないのだ。ハミルトン家のソフィア(朝香櫻子:特別専科)は兄のエドモンドが亡くなってから社長として経営を切り盛りしてきたが、未だ独身である。

そのソフィアの所に、先代社長エドモンドからホテルの顧問弁護士を務めるアーネスト(愛瀬光)からビッグニュースが報告される。エドモンドの落とし胤を見つけたというのだ。

ソフィアの元に集まったホテル支配人のジョージ(楊琳:特別出演)、ソフィアの姪シンディ(白藤麗華)とその婚約者でソフィアの甥フィリップ(翼和希)達にアーネスト弁護士は、落とし胤は、ロンドンでも貧困地区のハックニーにいたと報告する。

ハックニーというだけで失望の色を隠せないジョージ達の前に、養護施設で育ち、ナイトクラブ7daysのショーダンサーとして働くビリー(真麻里都)が姿を現す。言葉使いも礼儀もまるでなっていないビリーの夢は、人々に希望を与えられる一流のエンターテイナーになること。それを聞いたソフィアはその夢を諦め、ハミルトン家の後継者としてホテルを継ぐようにビリーに告げる。

ソフィアは亡き兄エドモンドが支援していたアーティスト達とのトラブルで経営に支障を来したことから、ホテルから一切のショーやダンス、バレエを排除していたのだ。

ろくな教育も受けていない自分にホテルの経営?と驚くビリーにソフィアは後継ぎになるための教育を行うことを宣言する。ビリーと相思相愛の彼女ジル(千咲えみ)もハックニー育ちのダンサーであり、ダンスを諦めることなど考えられないビリーだが、ホテルでショーが出来るようになることを夢見て、後継ぎ教育を受けることを決める。

ソフィアのビリーへの教育は始まるが、ホテルのコンシェルジェのガストン(登堂結斗)やバトラーのエマ(遥花ここ)に従業員達は、ビリーが朝寝坊の遅刻ばかりで、礼儀作法も言葉使いもまるでなっていないのに呆れる日々が続いていた。

そんな『THE ROYAL GARDEN HOTEL』にホテルの大恩人であるカーネギー夫妻からディナーショー開催のオーダーがあり、ソフィアを驚かせる。そのオーダーを知ったビリーは、閉鎖の危機に陥ったナイトクラブ7daysのダンサー達とショーをやらせて欲しいとソフィアに頼む。失敗すればエンターテイメントの夢は諦めるというビリーの覚悟にソフィアと支配人のジョージは開催を承諾する。

ビリーの夢を叶えたいジルは途方に暮れるが、そんなジルにジョージが手を差し伸べる。

【公演名】My Dear~OSK♥ミー&マイガール♥~
【脚本・演出・振付】麻咲梨乃
【音楽】玉麻尚一
【タップ振付】本間憲一
【振付】EGAD
【出演者】真麻里都・愛瀬光・白藤麗華・遥花ここ・翼和希・千咲えみ・実花もも・栞さな・由萌ななほ・りつき杏都・登堂結斗・依吹圭夏・水葉紗衣/楊 琳(特別出演)/朝香櫻子(特別専科)

ホテルの授業員とダンサーチームは、実花もも・栞さな・由萌ななほ・りつき杏都・依吹圭夏・水葉紗衣の二役。

_

OSKの作品をあまり見ていないのですが、見る度にOSKの舞台は明るくて前向き、伸びやかで健やかだなぁと思う。

オリジナルと本作が異なるのは、オリジナルは主人公のビルがヘアフォード伯爵家の後継者となれるかという面に焦点を当て、イギリスの貴族社会を描いているのに対し、本作でのハミルトン家は貴族の家系ではあるけれど、主人公のビリー(真麻里都)が継ぐのは格式ある高級ホテルの経営者という、ビジネスの側面をクローズアップして、現代的にしているのがひとつ。

ふたつめは、オリジナルでは貴族としての教育を受けるビルと下町娘のサリーの恋の成就が大きな山場となっているのに対し、本作ではビリーがショービジネスで子ども達にエンターテイメントを提供したという夢を持ち、その夢を叶えたいと願うジル(千咲えみ)がビリーのパートナーとなることを葛藤し、ジョージ(楊琳)の手を借りて、ホテルでのショーの成功に貢献する場面が山場となっていること。

大きくこの二つが、本作を現代的で嫌みのない若者の成長物語に仕上げていて、麻咲梨乃の脚本の妙を感じた。私も『Me And My Girl』は大好きで、ハッピーミュージカルではあるけれど、貴族社会の歴史と壁の高さやほろ苦さを感じさせてくれる、あの物語は再演を繰り返す価値があると思っている。楽曲も素敵だしね。けれど「OSK♥ミー&マイガール♥」と銘打たれた『My Dear』は、OSKの総合力、芸達者ぶりを端的に現している舞台で、その綺麗さに感銘を受けた。出演者15名という少なさを感じさせないパワフルであったかい舞台で、日数(上演回数)が少ないのが残念。BDとDVDが発売される予定なのでオンラインショップで購入できるようになるでしょう。

タップで会話する(モールス信号?)くらいダンスが身体に染みついているビリーが仲間達とナイトクラブで開催しているショーはトレーナーやTシャツにジーンズ、スニーカーという出で立ちのストリート系ダンスで、ちょっと面食らったが、これは2幕でホテルでのショーへの伏線であったことが判る。ナイトクラブでのショーというのはタカラヅカならカンカンとかダルマでの群舞になりそうな気がするが、ストリート系ダンスという辺りがOSKらしさであり、健全だなぁとその清々しさに意気を感じた(ホントに)。

学問や行儀作法の教育を受けていないビリーが、ホテルでのショーの開催にかけて、山ほどの本を読み、徐々に三つ揃いスーツを着こなすようになり(最初の頃は、ボタンの掛け違いをソフィア叔母に指摘されていたが、似合うんだこれが)、膨大なホテルの理念をそらんじる事が出来るようになっていく。「思い立ったら行動あるのみ!」と前向きで明るいビリーは仲間達とストリート系ダンスからホテルの格式に相応しいショーを組み立て、夢に向かって進む。真麻への当て書きであるビリーから真麻里都像を彷彿とさせた。

ビリーはジョージにソフィアへの愛を告るようにそそのかしたりもする。アーネストとビリーがジョージに「告る」のを勧める場面のウィットや間合いが面白く、楊琳のダンディなジョージが「告る」という俗語を真剣に呟くのも見どころだった。楊琳の口ひげで三つ揃いの着こなしがダンディなジョージのスマートさも見どころ。

愛瀬光のアーネストもいいキャラで、仲介・調整を務める弁護士の役割をこころえ、細々と気働きするユーモアたっぷりの役どころ。唯一の既婚者というのもアクセント。

千咲えみは闊達でデニムのミニスカート、スニーカーが似合うジルが、その繊細な恋心を歌い上げ、一途さな想いから、白いロングドレス姿に変貌していく様も無理を感じさせない。私はミニスカート、スニーカーが似合うジルの姿が好きでしたが、きっとビリーと二人でフランクさと礼儀正しさを合わせ持つホテルの気風を築いていくのだろうと思わせる。

ソフィア叔母役の朝香櫻子(特別専科)は姿勢がぴっと伸びて、いつもお綺麗。ホテルを女手一つで懸命に守ろうとするいじらしさや人の変化に理解を示す素直さ、柔らかさを持つ。ソフィアが血筋に拘るから成り立つ話ではあるが、ホテルを経営難に陥れたまま亡くなった兄エドモンドへの愛とわだかまりの狭間に立ち、それを精算しようとする心根の優しさに感じ入る。

ソフィアの姪でビリーの従姉妹であるシンディ(白藤麗華)は、後継者として突如現れたビリーに心をときめかせ、何とか役に立って歓心を買いたいという熱を感じる。婚約者のフィリップ(翼和希)とは仲良しだけれど、結婚前に恋の駆け引きも感じてみたい、そんな先行きの決められているお嬢様の遊び心とゆとりを醸し出している。翼和希のフィリップはシンディが他人に迷惑を掛けるの心配するがあまり厳しく叱責し、シンディの目を覚まさせる。小心だが誠実で真面目なフィリップがシンディのハートを掴んでいる事実に説得力がある。

このフィリップの叱責の場面は、オリジナルでは袖に引っ込んで、ジェラルドがジャッキーの頬を引っぱたいたのかな?と思わせる音がし、腕力(暴力)が男らしさの暗喩となりジャッキーがジェラルドに惚れるという場面が変換されたものだが、本作ではオリジナルのマッチョイズムが払拭されている。ジャクリーンがガウン姿でビルに色仕掛けという場面もなく、女性の感覚で丁寧に描かれた脚本で、「OSKらしさ」というものを感じさせられた。

フィナーレは、真麻さんの蝶ネクタイにタキシード姿、黒燕尾での群舞、白の変わり燕尾で黒の燕尾の楊さんとのユニゾン、白のロングドレスの娘役達とのデュエットダンスと、OSKの誇る男役・真麻里都の見納めとなりました。