[Zuka] 星組『ANOTHER WORLD』(4)ありがたや、なんまいだ

『ANOTHER WORLD』で使われている約30曲の作曲を担当された吉崎先生の記事が徳島新聞に出ています。『ANOTHER WORLD』の曲はどれも好きで、BDの発売(7/20)が楽しみです。

落語題材の宝塚ミュージカル 𠮷﨑さん(徳島市出身)全30曲を作曲 22日まで都内で公演|徳島新聞

宝塚歌劇団の𠮷﨑憲治さん(84)=徳島市出身=が作曲を手掛けたミュージカル「アナザーワールド」が東京宝塚劇場(東京・有楽町)で開かれている。(中略)。𠮷﨑さんは、主題歌「アナザーワールド」や挿入歌、約30曲の作曲を1人で手掛けた。ラテン、マーチなど曲調はさまざま。初めて挑戦した演歌風の曲もある。フィナーレなどで歌われる「ありがたや、なんまいだ」は阿波踊りをイメージしたという。

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康次郎はん(紅ゆずる)が歌う主題歌「♪わったしは、あの世にこーい♪している」(ANOTHER WORLD)という歌も紅さんのノッた歌い方ともに好きで、徳三郎(礼真琴)登場時の「遊興三昧♪ 放蕩三昧♪」の歌も、琴ちゃんの美声とこぶしの妙で、いつも「来るぞ来るぞ」と思う楽しみ。ラストの「ありがたや、なんまいだ」は阿波踊りのイメージなんだ。さすが徳島のご出身です。

東京公演で指揮をされている上垣先生のブログにも登場されています。

『自称指揮者・上垣聡』>『かの吉崎先生とさし飲み!

先生は85歳。僕から言えば30こ上・・・30こ!?スゴいです。健康であることもすごいですが、何より創作意欲が素晴らしい。そんな先生と差しで飲めるなんて素敵じゃないですか。

84歳にしてお元気で酒豪のご様子。「くすの木」とは、有楽町のここかな。健啖家なんだろうなぁ。85歳の植田紳爾先生といい、80歳越えで現役の先生方の元気の源は創作意欲なのでしょうか。人間の世界では長老組ですが、『ANOTHER WORLD』では若手なんだろうなぁ。ええっと、「若手の○じ○」とか?こわいっ!!

谷正純先生の歌詞は、谷先生の思想が散りばめられていて面白い。主題歌「ANOTHER WORLD」で、康次郎はあの世に恋して、生まれ変わって娑婆に戻り、「ありがたや、なんまいだ」で、「命ぞ宝」と歌う。

「命ぞ宝」は沖縄言葉から取ったものでしょうか。> 沖縄大百科 > 命どぅ宝(ぬちどぅたから)の意味・解説

そして、徳さんが康次郎に続いて、歌う。

あの世で大事は御魂だけ
醜女醜男何するものぞ
清い御魂が救われる
「ありがたや、なんまいだ」(作詞:谷正純、作曲:吉崎憲治)

「心の眼で見る世界」だから、冥土では、年齢・容貌は関係なしか。「冥土歌劇団」や「美人座」が存在するくせに、大事なのは御魂だけなのか。閻魔大王様が使う浄玻璃の鏡の審判は御魂でなされるから、自害とか実は関係ないのだろうか。心中一家も極楽行きだったし、貧ちゃん(華形ひかる)の知識が間違いなの??ここは謎のまま残されたけれど、きっと娑婆で苦労していたであろう心中一家でも極楽に行けるんだったら、細かい事は気にしないでおこう。

康次郎はんとお澄さん(綺咲愛里)が出会った時は、「動かぬ心臓、ときめいて」「血の気ないのに火照る頬」と歌っているから、冥土では身体は存在しているのか、とか。『ANOTHER WORLD』はツッコミどころも全てがネタになる世界。なんでもあり。とっても一筋縄でいかない感がこう、なんともおもろい。

康次郎はんも徳さんも何気に御魂がカッコいいしねえ。お澄さんは剛毅なんよ。商家の女なんやと思った。喜六はん(七海ひろき)は阿呆やけれど、ただの阿呆やおまへんで。存在が罪級や。あれじゃ借金取りは(でけへんけれど)難しそうやけれど、働きもんやと思う。

彼らに引っ張られて、冥土の道行きご一行様に加わったメンバーの内に積もり積もったものが、どんどん浄化されて、自らの本心に目覚めていく様が、これまたおもろい。康次郎はん達より長く冥土にとどまっている、船頭の杢兵衛はん(天寿 光希)や阿漕姉さん(夢妃 杏瑠)、小五郎(十碧 れいや)も変わっていく。奪衣婆(だつえばば)と恐れられた艶冶様(音波 みのり)でさえ、お澄さんが変えてしまった。貧乏神の貧ちゃん(華形ひかる)は徳さんに金の勺を授かって、福の神に本当に変わってしまったし。

どのお役もそれぞれに難しいと思うけれど、喜六は居方が難しい役だなぁと思って大劇場で見てきて、東京公演になってから、かいちゃんが「喜六」というお役を頂けて本当に良かったと思えた。ラスプーチン級の衝撃。ありがたや、ありがたや。ただ、だたね、喜六はんにも一曲くらい持ち歌を頂ければもっとありがたかったなぁぁぁああ(欲張るよ)。

そうだ、初音(有沙 瞳)は正体が謎なので、これまた居方が難しいお役だけれど、きっともっと自由になれるよ。

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今公演の演技指導をされている、立ともみ先生のブログで、「演出の谷先生がこの作品が最後なので寂しい限り」という記述をおみかけしましたが、谷先生は宝塚歌劇団理事なのですが、定年があるのでしょうか。何か別にやりたいこと…たくさんありそうですよね…と考えるとどうなるのか判りませんが、退団であれば、せめてスカイステージで特集を組んで頂きたいものです。