ミュージカル『ラ・カージュ・オ・フォール 籠の中の道化たち』の千秋楽(4/22)@梅芸が、楽しかったので、感想です。(公演サイト:梅芸)(日生劇場)
メモ程度と思ったら、長くなったので分割しました。
今回は鹿賀×市村コンビ誕生10周年!を掲げた11回目の再演だそうですが、友人が熱心にお薦めしてくれて初めて観劇することができました。宝塚歌劇以外の観劇が、なかなか感想までに至らないのは、勝手にアウェイ感を持っているからだろうな。なるべく書くように努めたいとがむばる。
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すごい楽しかった。タカラヅカとは別の世界でした。
69歳の市村正親さんが、南仏サントロペにあるゲイクラブ「ラ・カージュ・オ・フォール」の看板スター”ザザ”。67歳の鹿賀丈史さんが、「ラ・カージュ・オ・フォール」オーナーのジョルジュで、ザザことアルバンと20年間同棲している事実上の夫婦を演じている。ザザはニューハーフ(オカマ)の多分、性同一性障害(Male to Female)で、ジョルジュはゲイ(同性愛者)である。
市村さんと鹿賀さんは、共に劇団四季の出身で、45年の付き合い、本作は3年ぶり4度目のコンビとあって、息がぴったりを通り越して、長年連れ添った者同士にしか出せないしっくりした空気感がある。タカラヅカでは元気な若者たちを見ることが多いので、ラ・カージュ主演の老練ぶり、熟練ぶりが新鮮だった。
(あらすじ)
アルバンは最近は憂鬱感に浸り、ショーに出るのも億劫だが、ジョルジュになだめすかされて、化粧前に座る。メイクをして、マスカラをつけ、頬を上げ、気分を上げるのよ、と歌い、ゲイクラブの花形スターへと変身していく。年齢のいった、頭髪の少なそうな、しょんぼりしたアルバンが鬘をつけ、頭に羽飾りをつけ、ピンクの豪奢なマントをまとい、舞台に立って歌うザザと化す。メイクしている間にテンションが上がり、気分が高揚してくるのが表情でわかる。その有様はお見事の一言に尽きた。
ジョルジュには、24年前にラ・カージュで働いていたシビルとの一夜の過ち(?)から生まれた最愛の息子ジャン・ミッシェル(木村達成)がいる。シビルとは24年間疎遠であるため、アルバンが母親代わりとなって育て上げてきた。
そのミッシェルが結婚の意思をジョルジュに告げ、恋人アンヌ(愛原実花)の両親(今井清隆・森公美子)を招くために、アルバンを一晩だけ自宅から追い出して実の母親を呼び、「まともな家族」に見えるようにしてほしいと頼む。アンヌの父親は保守派でゲイクラブの排斥派のダンドン議員。ミッシェルは、ジョルジュの職業を元外交官とアンヌに偽り、「普通」の母親の姿を求めていた。
ジョルジュはミッシェルに甘々で、アルバンに自宅を一晩空けろと告げる役目を負ってしまうが、なかなか言い出せない。ミッシェルは子どもの頃にアルバンがオカマなことを、からかわれた過去があり、アルバンへの意趣返しめいた気持ちもあるような気がするが、マリアには惚れ込んでいて、「僕の人生がかかっているんだよ」と騒ぐ。とうとうアルバンはミッシェルの結婚相手と両親の来訪を歓待する日に自分が同席できないことを知り、大ショックを受ける。
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「ラ・カージュ・オ・フォール」(La Cage aux Folles)は、フランス語で「狂女の檻」という意味という意味らしいよ(出典:Wikipedia)
オープニングは、ラ・カージュのカジェル(踊り子)達の顔見世興行で始まる。カジェルには、同性愛者や両性愛者、性同一性障害(Male to Female)、ドラァグクイーンなど性的志向は多様な感じだが(妻子を養う必要があるというカジェルもいる)、ショービジネスの世界で生きる人々の誇りを感じる。カジェル達を演じる男性キャストは、わざとっぽく縁取りをくっきり描いたメイクにイロモノぎりぎりの衣装で、歌にダンス、鞭、カンカンやアクロバットを繰り広げる。ビジュアルは力強いド迫力さがある。
ラストでカジェルを演じたキャスト達が鬘と衣装を脱ぎ捨てて、男性の姿に戻る。その素顔の姿を最後に見せるという演出は、それこそ”ありのままの私たち”に通じるものだった。
これは2015年の30周年キャストのお披露目会。
”ありのままの私たち We Are What We Are”
ラ・カージュで、ザザは歌い、舞台を仕切る。20kgのスパンコールが付いたドレスを着たザザがステッキを突きながら、カクテルを傾け、「今日は降りるのを止めようかと思ったけれど、降りるわ」と客席降りをする。マエストロ塩田にグラスを渡し、粋に話しかける。その物慣れたスターっぷりの柔らかさ。ジョルジュに「あいつは踊れないぞ」と言われていたけれど、ザザは踊る必要は無いのだ。ジョルジュと倦怠期で舞台に立つのが億劫でも、一度立つとその華やかさで圧倒する。市村正親のザザに惚れ惚れした。老練の技が美しい。
ありのままの私 ”I Am What I Am”、「私は私!」を歌った後の毅然とした姿は、ラ・カージュ看板スターとして20年間の実績があるからこその誇り高さだった。
好きで誇りを持ってなきゃ20年もやってられないよね。
日本版『ラ・カージュ・オ・フォール 籠の中の道化たち』は、1985年、青井陽治演出、リンダ・ヘイバーマン振付で近藤正臣のザザ、岡田真澄のジョルジュのカップルで初演。1993年から市村正親がザザ、2008年からはジョルジュ役に鹿賀丈史を迎え、2008年、2012年、2015年、2018年と再演を重ねてきた。
原作『ラ・カージュ・オ・フォール (La Cage aux Folles)』は1973年パレ・ロワイヤル劇場初演のフランス劇(ストレートプレイ)であり、ミュージカル版は、1983年初演にイギリス・パレス・シアターで開幕し、トニー賞ほか数々の賞を受賞。そして2004年12月9日にブロードウェイでリバイバル上演され、再びトニー賞2部門、ドラマ・デスク賞2部門を受賞。その後もリバイバル上演されている。
作詞・作曲 ジェリー・ハーマン
脚本 ハーベイ・ファイアスティン
原作 ジャン・ポワレ
翻訳 丹野郁弓
訳詞 岩谷時子・滝弘太郎・青井陽治
演出 山田和也
オリジナル振付 スコット・サーモン出演
ジョルジュ 鹿賀丈史
アルバン(ザザ) 市村正親ジャン・ミッシェル 木村達成
アンヌ 愛原実花
ハンナ 真島茂樹
シャンタル 新納慎也
ジャクリーヌ 香寿たつき
ダンドン議員 今井清隆
ダンドン夫人 森公美子花井貴佑介、林アキラ 、日比野啓一、園山晴子
大塚雅夫、美濃 良、富山 忠、附田政信、佐々木誠、白石拓也、小野寺創、高木裕和、土器屋利行、福山健介、榎本成志、松谷 嵐、丸山泰右、森山 純、渡辺崇人、井戸陽平、提箸一平、精進一輝、髙橋 桂、多岐川装子、浅野実奈子、首藤萌美