[Zuka] 星組『うたかたの恋』(3) 瞳の強さ

[Zuka] 星組『うたかたの恋』(2)
続きをどこから書こうと考えたのですが、やっぱりご贔屓から書いておきます。

柴田侑宏先生がパンフレットに「ジャンの七海もまた出色で嬉しい」と書いてくださって、スチール写真は出てないけれど、このお言葉ひとつで機嫌が良くなりました。(※舞台写真を、ショーと2人映りもふくめて9種類+パレード1も出して頂いたのでありがたいと思っておりますYo)。

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「うたかたの恋」では、第2場と第14場で1月26日のドイツ大使館での舞踏会の場面が繰り返される。皇太子ルドルフ(紅ゆずる)と、皇帝によって運命を決められてしまったマリー(綺咲愛里)が踊る場面である。その決定をルドルフの従兄弟のジャン・サルヴァドル大公(七海ひろき)が知っているのか、観客側からは判らない。

判るのは、下手袖から現れ、注意深くルドルフとマリーを見守るジャンの姿である。2人が話している時はいぶかしげな表情で、2人が踊り出すと安心したように笑みを浮かべ、隣にいた客人達と談笑し始める。

ジャンの懸念は正しかった。衆人環視の中にも関わらず、2人はほんの二言三言でお互いの意思を確認してしまった。

「マリー、旅に出ることになった」。
「いつお帰りになるの」。
「帰ることの出来ない旅だ。お前も一緒に来るか」。
「はい。あなたとご一緒ならどこへでも」。

そして愛おしげにマリーを見つめるルドルフと幸せに輝かんばかりのマリーが踊り始める。

ジャンはきっと後年に何度もこの舞踏会の光景を思い出すだろう。ミリー(音波みのり)は平民のため舞踏会には出席していないが、ジャンとミリーは、ルドルフとマリーが結ばれることを願っていた数少ない味方であったはずだ。暗雲に気づきながらも見守るしかできないジャンをルドルフなりに気遣ったのか、自分とミリーに何も言わず、2人はマイヤーリンクに旅立ってしまった。

冒頭第2場でのジャンの語りと2人を見守る姿から、そんなことを思った。七海ひろきの芝居は情感が豊かでイマジネーションが広がる。

踊り終えて会場から出て行くルドルフを追おうとするジャンの目に、皇太子妃ステファニー(星蘭ひとみ)の姿が映る。その視線はマリーを捉えていた。

「妃殿下、どうぞ私と」
ステファニーの手を強引に取って、踊り始めるジャン。

ここでかいちゃん(七海)らしいなと思ったのは、踊りながらステファニーを翻意させようとするジャンは、必死でステファニーの目を自分に向けさせ、視線を合わせようとする。その途中でマリーにも優しい目線を送る。日頃「目を見ればわかる」と言うかいちゃんらしい、七海ひろきのジャン。責任感と献身。

けれどステファニーはそんなジャンの努力を一顧だにせず、ジャンと踊りながらもその目はマリーを捉えたまま。

怒ってる怒っているなステファニー。ステファニーはどこまでルドルフとマリーの事を知ったのだろう。ヨゼフ皇帝はステファニーに、ルドルフがローマ法王に離婚を願い出て拒否された事を言っちゃったのかな。(ベルギー王家との外交問題に発展しかねないのだが)。知っちゃったのなら、その怒りっぷりも判るよ。

固唾を飲んで見つめる人々(観客ふくめ)を後目に、ジャンの手を振りほどき、くるくるとドレスの裾を翻して回り、マリーの前に立つステファニー。同時に音楽も終わる(ここの演出、とても好き)。ルドルフとマリーの関係は、母のヴェッツェラ男爵夫人(紫月音寧)と姉ハンナ(華雪りら)でさえ知らない。ステファニーの出方次第で大いなる騒動になるだろう。

美貌の星蘭ステファニーは何も言わずに、綺咲マリーを凝視し続ける。綺咲マリーは柔らかく、けれど覚悟を持ってその視線を受けとめる。微かな不安を浮かべてはいるが、野心も後ろめたさも媚びも見せずに、ステファニーを見つめ返すマリー。

ほんの僅かなマリーとの邂逅に、ステファニーは得心がいったに違いない。夫ルドルフの真の愛を得た女性。気位を取り戻すステファニー。

ステファニーがジャンと踊っている最中に転んだ日があって、髪飾りが外れてしまい、星蘭ちゃんは左手に髪飾りを持って、綺咲マリーと対峙したわけですが、その必死の怒りの美しいこと。マリーが地位や名誉や金銭目当てなら許さなかったよね。星蘭ちゃんステファニーとあーちゃんマリーとの姿に天晴れ!名場面!!と心の中で拍手しました。

ジャンは置いてきぼりになっていたけれど、ステファニーにはきっとその心遣いが伝わった。ジャンの行為はルドルフの意を汲んだものだろうから。宮廷では第三者的立ち位置のジャンが能動的な騎士っぷりを発揮し、かいちゃん(七海)の細やかな心映えがほとばしる、大好きな素晴らしい場面でした。

そういえばチャームポイントは目力なんだっけ。