[Zuka] 月組『カンパニー』(2)

『カンパニー』は、日本国内には約1万のバレエ教室があり、習い事、学習塾と同じ分類であるなどと国内のバレエを取り巻く状況なども語られるバックヤード・ストーリー。

有明製薬のCMに出ている世界的プリンシパルが出演するバレエ公演となれば、チケットはすぐに売れるだろうというのは素人考えなのか、夏祭りでフラッシュモブをやって、公演の宣伝をするアイディアが実現化される。フラッシュモブ動画をいくつか見たけれど、1人がパフォーマンスを始め、五月雨式に広がっていくイメージ。これなんか素敵。イメージはこれに近くて、私も渋谷とか新宿とか雑踏のストリートで勃発するイメージがある。フラッシュモブをイメージ通りに演劇の狭い舞台で実現するのは難しい気がしたのと、パフォーマンスが、バーバリアン、バレエ、チアリーディング、空手と種類が多くてバレエ公演の宣伝という本来の焦点がぼやけた印象を受けた。

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『カンパニー』で、青柳誠二(珠城りょう)と高崎美波(愛希れいか)に次いでウェイトが高いのが、世界的プリンシパルの高野 悠(美弥るりか)と有明製薬の社長令嬢で、バレエダンサーの有明紗良(早乙女わかば)。

2人は敷島 瑞穂舞踊研究所で幼い頃からバレエを学んだ幼馴染みで、舞台上のパートナー。だからか、作中で、観客に「白鳥の湖」を説明するために、高野(美弥)と紗良(早乙女)が銀橋で「白鳥の湖」を踊る。上品で華やかなオデット。紗良はやや複雑なキャラクターで、見る度に少しずつ変わっている。

わかばの紗良はお金には困ったことがなく、有明製薬が敷島舞踊研究所のスポンサーになっているために、プリマドンナのポジションにいられることは承知しているし、そのポジションに相応しいように練習に励みもする。けれど代役のお礼として美波にヨーロッパ留学をプレゼントしてしまう。「お礼、受け取って貰えないの?」と美波にいうセリフがわかばらしく、嫌みのない鷹揚さとほんわかさがあって、この親(有明製薬社長:綾月 せり)にしてにしてこの子ありというか、鷹揚さは有明社長ゆずりだなと思える。

紗良が高野に、プロポーズというかご褒美をねだる場面は、あれは社長令嬢のワガママなのか、紗良の不器用な恋の告白なのか。最初は前者に見えたのが、千秋楽が間近にして、後者に見えた。高野に真面目に取り合って貰えなくてしょげて、その後、王子役が高野ではなくなったのでふくれっ面という姫っぷりがいい。その姫が最後の最後にプロのバレリーナの気骨でカンパニーを支えるんだね。

美弥ちゃんは男役度がまた増していて、幼少期からバレエ一筋で世界的プリンシパルまで上り詰めた男の、静かだけれどたぎるような執念や誇りの強さやを見せしながらも、自分が引き受けると決めたら青柳(珠城)と共に周囲をなだめたり、すかしたりしながら、舞台を完成させようとする高野像を作っている。たまきさんの青柳とはコンビを組んだら、仕事がはかどりそうな有能メンズ。残念ながら青柳のヘッドハンティングには失敗していましたが、仲良しにはなれそうな2人でした。→「雨に唄えば」に続く。

感心したのは腰痛の演技が上手い。ちょっと動くと痛みがはしって、びくっと痙攣するとか、身体のどこかに苦痛があると、知らずにため息をついているとか、えーっと腰痛経験者?タカラジェンヌの皆様もバレリーナに負けず劣らずのハードな毎日なので、身体のメンテナンスを怠りないよう。怪我に気をつけてくださいませ、と思いました。

話がずれた。

バーバリアンのボーカリスト水上那由多役のれいこちゃん(月城かなと)は、月組芝居に馴染むのに1年くらいかかるかなぁ。どこか役とズレている。イケイケのパフォーマンス集団のボーカリストで、リーダーの阿久津 仁(宇月 颯)に可愛がられ、気骨を出してバレエ公演でステップアップしなきゃという、ある意味、青柳や瀬川以上の崖っぷちに追い込まれての王子役で、わざわざリフトを加えてやる気を見せたつもりだけれど、それなのに紗良に怪我をさせてダメージを受けて踊れなくなっちゃうんだよね。構えず持ち味のままにやってみるほうがいいのかなと思った。3番手羽&東上付き主演公演、おめでとうございます!

ありちゃん(暁千星)の長谷山 蒼太。バレエ団でマスコット的存在で、伸びやかなムードメーカーで、那由多も本音を話せる。男役としての頼もしさが出てきた。三月ウサギのお衣装で遠慮なく、くるくる回転しているのを見ているだけで幸せになる。月組に配属されたばかりの研2の頃はさんざんくるくる回っていたけれど、最近はなかったから嬉しい。夜中に練習する那由多に「紗良さんも同じだ」(だっけ?)というセリフと事故の後の「ただのお嬢様じゃない」というセリフの間と言い方がちょっと棒読みっぽく気になりました。

としちゃん(宇月 颯)のバーバリアンリーダーの阿久津 仁。那由多の親代わりで、尖っていて、いろいろトライさせたがり、千秋楽間近の公演にリフトをねじ込む。演じ方によっては嫌われる役だけれど、トラブルにはリーダーとして取れるだけの責任を取り、ほどよい範囲に収めて、バーバリアンをスタイリッシュな見せ方に持っていったのはさすがでした。

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I LOVE YOUを夏目漱石が「月が綺麗ですね」と訳したのは都市伝説だという話があります。ちゃんと検証サイトがあったよ。→「月が綺麗ですね」検証

まぁでもロマンティックだからいいんじゃないのか、と思いましたが、夏目漱石云々を語ってしまう青柳さん(珠城りょう)は国語教師っぽい。でも美波(愛希れいか)に何か気の利いたことを話したかったんだろうな。( ´艸`)ムププ