[Zuka] 星組『うたかたの恋』(4)Boy Meets Girl

2月25日(日)まで星組公演を上演していた中日劇場ですが、3月25日で52年の歴史に幕を下ろしました。劇場が入っていた中日ビルは建て替えですが、新ビルには、本格的な劇場は設けないとのこと。「文化発信につながる新たな施設」をつくるそうで、来年以降の宝塚歌劇の名古屋公演はどこで行われることになるのでしょうか。
中日ビルの建て替えについて(2016年9月28日)

キャトルレーヴ名古屋も同時閉店で、中部地方の皆様はご不便なのでは。オンラインショップが頼りですね。

閉店前にパネル展をやっていて、研修で出張ついでに寄ってきました。これらのパネルは3月22日~25日に5000円以上購入の方にプレゼントされたそうです。うらやましい。ジャン大公麗し。3月30日に発売のポストカードと同じうたかたラストの遺書を読む紺の軍服姿のジャン大公ですね。ポストカード嬉しい。うたかたの恋の軍服祭りっぷりが現れたパネルだ。↓

うたかたの恋パネル
トップスターパネル

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『うたかたの恋』続きです。

紅さんも、「(役の内面は)真っ白一色ではない(と感じた)」と話している皇太子ルドルフは人間性にクセがある。生育歴と現在の境遇を考慮しても、気晴らし(趣味)が女遊びってどうよ。

最も寵愛していたという高級娼婦ミッツィ・カスパルは『うたかたの恋』では登場しないが、愛人としてポーランド貴族のツェヴェッカ伯爵夫人(華鳥 礼良)や元ロシア貴族のマリンカ姫(夢妃 杏瑠)が描かれており、マリーも当然、噂は聞いていたはず。

クセのあるルドルフ皇太子(30歳)と裕福なヴェッツェラ男爵家の令嬢マリー(16歳)の恋愛をどう見せるか、というのが名作『うたかたの恋』である。定型(名場面)が出来ている再演ものだが、キャストが変わると見え方も変わる。今回の星組版ではジャン・サルヴァドル大公(七海 ひろき)とその恋人ミリー(音波 みのり)のウェイトが高くなり、2人の恋の成就を見守る役割を果たして、作品の色合いを変えていた。

幕が開き、階段上に立つルドルフ(紅ゆずる)とマリー(綺咲愛里)。ルドルフがマリーを見つめる目。そしてそれに応えるマリー。プロローグの紅ルドフルは動きがぎこちなく声も硬かったけれど、綺咲マリーはひたすらに明るく伸びやかな笑顔を、紅ルドルフに向け続けた。

「マリー、来週の月曜日、マイヤーリンクに狩りに行こう」
「月曜日。明後日ございますね。マイヤーリンク。はい、殿下」

Boy Meets Girl

紅ゆずるのルドルフは優しくて慈悲深かくて痛々しかった。鬱屈と憂鬱から湧き出るヒリヒリとした繊細さ。ゼップス(大輝 真琴)によって語られる未来の皇帝ルドルフへの期待に頷きはするものの、その未来を信じているようには見えない。ツェヴェッカ伯爵夫人(華鳥 礼良)やマリンカ姫(夢妃 杏瑠)との情事は退屈しのぎのよう。

夢の中で、従兄弟で親友のジャン(七海ひろき)が恋人ミリー(音波みのり)と共に王族という縛りを捨てて、南の島に旅立つというのを、うらやましいと思うルドルフ。現実では、ジャンの目論む独立革命を否定し、ヨーロッパの将来を夢に見るが、強大な権力を独占する父ヨゼフ皇帝(十碧 れいや)がそれを遮る。

武力闘争も辞さないジャンをたしなめ、こっそりとマリーへの恋心を打ち明けるルドルフに、「それは良い」と爽快に笑う七海ジャンが温かかった。女遊びの激しいルドルフの真の純情を感じ取ったジャンの態度から、ルドルフの閉塞した状況が垣間見える。

ジャンとミリーがルドルフに見せてくれた夢。2人がいなかったら、ルドルフは鬱屈を抱えたまま女遊びを続けるしかなかったろう。その鬱屈の中で、ルドルフが見つけた小さな青い花マリー・ヴェッツェラ。

紅ルドフルは予想以上に受け身の人だった。ヨーロッパの将来も夢見るが、自分で状況を動かそうという積極さは見えない。彼が望んだのは小さな青い花だけであり、ほかは全て自分から寄ってくる。それは権力や名誉目当てのものだけではなく、ルドルフへの敬愛と友情を持ち、役に立ちたいと思っているものまで。ジャンとミリー、ゼップス、護衛のモーリス大尉(漣 レイラ)達、ルドルフに近い者は皆、ルドルフの解放を願っていたと思う。

紅ルドルフを見守る七海ジャンの目線が温かくて、キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャンから続く、二人のお芝居のコンビネーションの良さが嬉しかった。スカピンやOSOは敵対だったけれど、キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャンとかうたかたの恋とかの友情物は好い。

これで終わりのつもりだったが、終わらなかった。ヽ(τωヽ)ノ (5)に続く。