トップスター・ロングインタビュー#29「紅ゆずるの魅力に迫る」の初回放送は3月25日。
これを機に、宝塚歌劇団様、宝塚クリエイティブアーツ様、ひろきとゆずるの『俺たちのDESTINY』を音源化して配信して頂けないでしょうかね。CD化より配信のほうがやりやすいはずですよね??『Brilliant Dreams +NEXT 七海ひろき』のDVD出てないですし。ぶつぶつぶつぶつ。
『俺たちのDESTINY』 ひろきとゆずる 作詞:七海ひろき 作曲:GA-HA- 【Brilliant Dreams +NEXT#30 七海ひろき】
__
さて、ショーブランを演じる礼真琴の歌唱力は爆発的で、その演技の深さも増している。元星組トップで憧れの柚希礼音の当たり役だったショーヴランにかける気合いがすごい。
第3場『マダム・ギロチン』で、ロベスピエール(七海ひろき)とショーヴラン(礼真琴)は「偉大な目的の為に 犠牲は必要だ」と唱和するが、たぶんロベスピエールのほうが理想を追い、ショーヴランのほうが現実にまみれている。弁護士であり、革命当時から指導者的存在で、理論家肌のロベスピエールと違い、ショーヴランは底辺から這い上がってきた実働部隊である。
ショーヴランは、「裏街のドブを見て育った」「野良犬のように扱われた」と歌うように、フランスの身分社会の底辺で育ってきた。自由・平等・博愛を掲げた革命は、底辺からのし上がっていくための絶好のチャンスでもあった。上流階級への怨嗟が激しいショーヴランにとって革命は権力に近づき、成り上がるための手段でもあり、自分を虐げてきた者達への復讐の剣でもある。
革命は、第一身分:聖職者・第二身分:貴族・第三身分:平民の枠組みを壊し、平民の中でもブルジョワからほど遠いショーヴランに出世のチャンスを与えた。1789年から5年が経過した1794年に、ショーヴランは、ロベスピエールの側近であり、ジャコバン党の有力者となった。
だが実働部隊なのは変わらず、粛清の嵐が吹き荒れているパリの街で、逃げる貴族や不穏分子を追って民衆の間を走り回るのは、ショーヴランの役目であり、恐怖政治への不満を肌身で感じているはずである。
革命が潰えようとしている。
ロベスピエールはまだ民衆に夢をみている。民衆への期待がある。だから民衆への幻滅もある。民衆は革命の偉大な目的を理解できるはずなのに。それなのに。偉大なる道はまだ途中なのだ…。民衆に、もう一度、思い知らせるのだ。
ショーブランは民衆そのものだ。民衆の中から強いものだけが生き残る。あの夏、革命の夢を叶えるために共に戦った熱い仲間は、革命政府-権力の象徴であるロベスピエールではなく、燃える瞳の少女ー若きマルグリット。
礼真琴のショーヴランを見ていると、マルグリット(綺咲愛里)を革命の夢そのものと見ているのかと思ったりする。礼ショーヴランは職務に忠実で、マルグリットへの執着も任務遂行が表に立ち、栄光の日を共にしたマルグリットと再会し、1789の灼熱の日々に側にいた美しく聡明な彼女を取り戻すことで、革命を取り戻せる、そんな夢を抱いたような…。※↓
_
ショーヴランはスカーレット・ピンパーネルを追うために、ロベスピエールからフランス政府特命全権大使を任じられ、イギリスへ赴く。イギリスには、パーシー(紅ゆずる)と結婚したマルグリットがいる。
イギリス国王主催の仮面舞踏会に公安委員の黒服のままで出席するショーヴランはイギリス国王(英真 なおき)にまで、恐怖政治をあてこすられるし、マルグリットの結婚相手のパーシーはいい加減で訳が分からないし(^^;)。ショーヴランがシリアスであればあるほど、種明かしを知っている観客は可笑しい。スカーレット・ピンパーネルという舞台で面白いのは、観客は種を知っているからこそ、成り行きにハラハラできるということ。
最も可哀想なのは、パーシーとショーヴランに振り回されるマルグリットなのだが、綺咲愛里のマルグリットの強さというのは、内に秘めた想いが決して崩れないことである。理由も分からずパーシーに冷たくされ、ショーヴランからは弟アルマンを逮捕したと脅される。理不尽であろう、もどかしいであろう、辛いであろう。それでも彼女はぐっと自らのうちに納め、毅然とした態度をくずさない。耐えて美しく艶やかに咲く女性なのだ。そういえば『桜華に舞え』のヒサもそうだった。
辞めたコメディ・フランセーズの舞台で再び立てとショーヴランに命じられたマルグリットは、夫パーシーがどこにいるのか知らない(観客だけが知っている)。それでも彼女は歌う、パーシーの勇気を讃えるために。「ひとかけらの勇気」を。
そしてショーヴランは知る。革命の夢がもう決して戻らないことを。
_
※(なぜかっていうと恋愛のドロドロした感があまりないからです。←良し悪しではありません。)