[Zuka] 2017年星組『THE SCARLET PIMPERNEL』

月日の経つのは早くて、宙組千秋楽当日に雪組退団者のお知らせがあり、その翌日にまぁ様(朝夏まなと)の退団が発表され、雪組次期トップコンビが決定し、星組初日(10日)も終わりました。怒涛だった1月から2月。2017年始まって2か月間で、5組全組観劇完了というのは宝塚歌劇のスケジュールはかなりタイトでハードじゃないか!?(判っていたけれど、また考えてしまった)。

ひとまず星組 紅ゆずる・綺咲愛里新トップコンビお披露目公演『THE SCARLET PIMPERNEL』12日に観劇したのでその感想いきます。紅さん、あーちゃん、おめでとうございます!

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宝塚歌劇で上演された星組初演と月組版はスカイステージで見て、昨年、石丸幹二・安蘭けい主演の『スカーレット・ピンパーネル』(梅田芸術劇場)を観劇したが、宝塚歌劇版とガブリエル・バリー潤色・演出版ではやはり趣が異なる。後者ではパーシーを演じる石丸幹二の存在感がずば抜けていて、観劇後に残ったのはパーシーの英雄譚という印象だった。マルグリットの安蘭けいは歌唱力と演技もさることながら、パーシーを助けようと二刀流で戦うという精神的なというより、物理的な強さを発揮していて、さすが元星組男役トップスターであると思ったものだった。

それに比して、宝塚歌劇版は70~80人の組子を動かすために群像劇の様相が濃い。

第1幕PARIS1794、パリ市街に据えられたギロチンに依拠して立つ革命政府のピポー軍曹(美稀 千種)らと追い立てられる貴族達、取り囲む民衆達に紛れ込むスカーレットピンパーネルのメンバー(壱城 あずさ)。フランク・ワイルドホーンの音楽に乗せて繰り広げられるフランス革命の動的なうねりの世界の臨場感に引き込まれる。これだけの人数を動員している舞台はなかなかないと思う。

そして登場するパーシヴァル・ブレイクニー(紅ゆずる)は、産業革命が始まっている英国にあって身分制を保持するイギリス貴族。フランス貴族達の窮地を見過ごせず、友人達と共に、革命政府に処刑されようとする貴族達の救出に乗り出す。パーシーは革命政府を倒すべき敵と見ていない。フランスの自治はフランスに住む者達が決める。ただ友人達、親しい者たちの危機を看過できない。世界を混乱させるもの達を掻き回し、フランス貴族達を助け出す。

自由・平等・博愛という先鋭的で文句の付けようのない思想を標榜する革命政府に対するイギリス貴族の誇りと自負。激動の時代の中で現れ出た、ひとかけらの勇気と心根の優しさ。

と書くとすごくシリアスで感動的な物語のようだけれど、潤色・演出の小池修一郎氏曰く、舞台スカーレット・ピンパーネルの本質はコメディであるという。それは紅ゆずるのパーシーを見て納得した。礼真琴演じる革命政府の公安委員ショーヴラン相手にくり出される、突拍子もなく予想もつかないアドリブの数々。

思い出したのは、花組『オーシャンズ11』で、ベネディクトだいもん(望海風斗)をアドリブ責めにして、鍛えようとするラスティーみっさま(北翔海莉)。琴ちゃん、がんばれ!乗り切るんだ!

みっさま繋がりでもう一つ思い出した花組『花の次郎吉』。金持ちから金子を盗みだし、貧しいものたちに分け与える鼠小僧。鼠小僧とパーシーに通じる正義感とユーモア。恐怖政治の暗澹たるどん底の空気を仰々しい明るさと機転で跳ね飛ばすパーシーとスカーレット・ピンパーネルのメンバー達。ピンパーネル団はお馬鹿に騒いで、光を放つ存在であれ!

舞台では、ショーブランの背後に革命政府ジャコバン党の指導者ロベスピエール(七海ひろき)が存在するという示唆的な場面もあって、王族を処刑した革命政府vs.イギリス王国(イギリス国王・貴族)という構図も見える。イギリス、ドイツ、ロシアなどの列強に睨まれる革命政府。

自由・平等・博愛の精神、人民主権の理想を掲げて革命を起こした1789の夏から遙か遠い、恐怖政治、独裁者、史上初のテロリストというところにまで来てしまったマクシミリアン・ロベスピエール。革命の理想は潰えたのか、か細く残る革命の炎を守り絶やすまいとするが、事態の成り行きに右往左往して主張するだけの民衆に翻弄され、混乱と憔悴を深めていく。

ロベスピエールの状況や心情を表す歌は、マダムギロチンのワンフレーズのほかに2幕にソロ一曲だけなので、七海ひろきは、ビジュアルと表情で内面を表現する。ロベスピエールは丹念に刺繍が施された豪奢な衣装をピシッと着こなしているけれど、髪の毛の細かな乱れっぷり、怯えと苛立ちが混じった表情が混乱ぶりと憔悴を表す。溜め込んで溜め込んで歌うソロ曲『ロベスピエールの憔悴』で銀橋を渡る。惹きつけられずにはいられない。

パーシーの目的は人助けと人命救助であったが、コメディ・フランセーズの女優マルグリット(綺咲 愛里)との結婚で事態に変化が起きる。新妻マルグリットが公安委員ショーヴランと通じており、パーシーの友人であったサン・シール侯爵(夏樹 れい)の居所を密告したという報告が、ピンパーネル団のメンバーであるデュハースト(壱城 あずさ)からもたらされのだ。

女優マルグリットが、自由恋愛によってイギリス貴族パーシヴァル・ブレイクニーと結婚したが、政治的にはジャコバン党支持であっても不思議ではなく、革命思想を持つ者同士としてショーブランと秘密裏に相通じているかもしれない。

ピンパーネル団の活動はフランス革命政府から目の敵にされており、マルグリットはパーシーがスカーレット・ピンパーネルであることを知らない。パーシーには妻の革命思想を止められない。その疑惑はパーシーを深く傷つける。

出会って6か月で結婚したマルグリットへの傾倒。

誰にも言えぬ、パーシーの苦しみ。

自己の苦しみが深いほど、大事なものを守ろうとする力は大きくなる。

紅さんが王太子ルイ・シャルルを助けだそうとしている時の、美しく優しい輝いた笑顔を見て、そう思った。

星組は大丈夫。