[Zuka] 2017年宙組『王妃の館』

宙組宝塚大劇場公演『王妃の館』『VIVA! FESTA!』千秋楽おめでとうございます。トップ娘役・実咲凜音はこれで大劇場を後にする。みりおん、ご卒業おめでとうございます!!

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私にとって、みりおんと言えば、モンテ・クリスト伯のメルセデス、うたかたの恋のマリー、王家に捧ぐ歌のアイーダ、そして今回、『王妃の館』の桜井玲子さんが入りました。『王妃の館』以前のみりおんの演じる人物は、愛する人に尽くす人で寄り添う人でありました。

婚約者であったエドモン・ダンテス(凰稀かなめ)を失い、結婚したフェルナン(朝夏 まなと)に虐げられ、息子アルベール(愛月 ひかる)の助命ために自分の命をかけて、モンテ・クリスト伯(凰稀かなめ)に刃を向ける母メルセデス。

年上の皇太子ルドルフ(凰稀かなめ)に求められ、マイヤーリンクの別荘に赴く、美しい少女マリー・ヴェッツェラ。

エジプトに侵攻されたエチオピア王女でありながら和平を求め、王アモナスロ(一樹 千尋)と弟ウバルド(真風 涼帆)に別れを告げ、死地にあるラダメス(朝夏 まなと)に添い遂げるアイーダ。

常に常に男役に寄り添う人であった、娘役・実咲凜音が演じる弱小旅行代理店の女社長兼、ツアーコンダクター桜井玲子さんは、バリキャリなんだけれど、無理くりにでも自分でなんとかしようとする責任感の強い常識的な、自立した女性でありました。

フランス・巴里でのダブル・ブッキングツアーを企画しておきながら、北白川右京先生(朝夏 まなと)に突っ込まれると素直に謝り、ツアーを中止して、お金を返すと反省する。みりおんが演じると、この反省が口先だけではなく、すごく真面目に反省しているように見える。だから、ここでツアーを中止にされちゃ、話が終わっちゃうんだよ!と慌てる右京先生が真実味を帯びる。

田渕大輔氏の大劇場デビュー作である『王妃の館-Château de la Reine-』は、浅田次郎氏の小説を原作とするけれど、そこはさすがに座付き作家のお仕事で、それぞれのキャストに合わせて人物関係やエピソードは潤色されている。そして何より、宝塚作品としての配慮が随所にみられる。ルイ14世(真風 涼帆)とディアナ(伶美 うらら)は小説とは異なり、お互いを想い合い続け、邂逅が暗示される。玲子さんの部下の戸川光男くん(桜木 みなと)は、小説とは異なり、本当に”ただ”の部下である!(よく働く良い部下だ)。

恋愛小説の鬼才である右京先生は軽妙で、いたずら心のある変人だけれど、ダブル・ブッキングツアーがバレたことに落ち込む玲子さんを叱咤激励して味方になって立ち直らせる。ルイ14世とディアナとの300年越しの愛の成就を企むが、小説のネタにしようとしていた裏心をルイ14世に見破られると、これまた素直に反省して落ちこむ。変人だけれど良い人じゃん!

そして右京先生は10日間でルイ14世の恋愛を『王妃の館』という小説にまとめ上げ、敏腕編集者・早見リツ子(純矢 ちとせ)を大喜びさせる(鬼才より天才がランク上なのか)。そして玲子さんから私小説を書いたらと薦められ、晴れ晴れとフランスを後にする。一癖も二癖もあるけれど、良い人じゃん!まぁ様の右京さんの変人ぶりと、真面目に職務を遂行しようとするみりおん玲子さんの対比が楽しい。まぁ様の右京さんの変人ぶりと、ルイ14世とムノン(松風 輝)の浮世離れっぷり(足があるけれど幽霊だ!)が楽しい。これが、朝夏まなとと実咲凜音の作ってきた宙組。朝夏まなとと実咲凜音が、凰稀かなめから受け継いで育んできた宙組。

まだ登場人物の半分も書いてないけれど、『VIVA! FESTA!』も書いてないけれど、まぁいいか。宙組みんなみんな小気味よくカッコよくて、楽しかった。みりおんの退団公演が楽しい作品で良かった。等身大のみりおんで良かった。ありがとう、田渕先生、スタッフの皆様。お疲れ様でした。東京公演までしばしの休養を。

実咲凜音様、幸せと楽しさをありがとう。これからの人生にも幸多きことを、お祈り申し上げます。

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