[Zuka] 2016年花組『ME AND MY GIRL』(2)

花組『ME AND MY GIRL』大劇場公演、千秋楽おめでとうございます。花組の皆様、スタッフの皆様、おめでとうございました。お疲れ様でした。東京公演までしばしの休養を。

そして、鳳 真由様、七輝 かおる様、ご卒業おめでとうございます。幸せと楽しさをありがとう。これからの人生にも幸多きことを、お祈り申し上げます。

ふじP、Pちゃん、鳳 真由様。私がPちゃんの役で印象が強いのといえば、『Victorian Jazz』のアーサー・コナン・ドイルです。誠実な顔で、どこかちょっと外した感じのコナン・ドイル。Pちゃんの演技にはいつも温もりがありました。

『ME AND MY GIRL』のパーチェスターも、真面目なのにどこか外している。「お屋敷の弁護士」を歌う瞬間が来ると、「来た来た来た、来ましたよー、私の出番が!」と一世一代の晴れ舞台に臨むように歌い出す姿が、かっこつけていないのに、かっこ良くて、Pちゃんならではのかっこ良さに見惚れました。どうぞこれからも幸せでいてください。

七輝 かおるくんは、七海さん(かいちゃん)に、星宙バックを作ってくれた七つながり下級生という印象ですが、ダンスが特異なのかな。早い退団がもったいないですが、第二の人生を幸せに歩いて行けますように。

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『ME AND MY GIRL』は、Aパターン2回、Bパターン2回の観劇でした。このくらいの観劇回数に抑えておけると、歌劇以外の公演を観たり、映画を見たりの余裕が出来ますね。次は月組の龍真咲退団公演なので、それなりにチケットを確保してありますが(退団公演とご贔屓がいる組はどうしても多くなる)。

さて、『ME AND MY GIRL』の感想。

ストーリー的には、下町ランベスで育ち、果物を売ったり、時には頭や指先を使って(スリ)稼ぐビル(明日海りお)がイギリスの名家であるヘアフォード家のご落胤であると判り、後継者として受け入れられるまでのお家騒動を軸に、下町ランベス育ちで魚屋で働くサリーとビルの熱愛の行方を描いている。

ストーリーは時代背景がやや古く、タカラヅカ的にはキャラクターで魅せる作品でもあるので、役替わりが必須となっている。

花組の『ME AND MY GIRL』は、ウイリアム・スナイブスン:ビル(明日海 りお)とサリー・スミス(花乃 まりあ)の明るい愛らしさが、作品全体を照らしていた。

少年期から青年期へ入ったばかりという若々しさのある明日海ビルに、言葉使いはやや雑だが、シャンパングラスをつまみ持つ手つきのぎこちなさすら愛らしい花乃サリーの二人が持つ関係性が、『ME AND MY GIRL』の軸を作る、と私は思っている。そして花組の『ME AND MY GIRL』は、明日海ビルが花乃サリーを大大好きで、サリーのことしか考えていないビルであった。苦手であろう勉強をしても(字が読めると言うことは学校か何かには行っていたのか)、ヘアフォード家を継ぐのは花乃サリーに楽をさせてやりたいから!という、そんな明日海ビル。

その二人を受け入れるヘアフォード家の人々は、役替わりもあり、A,Bそれぞれで雰囲気が違っていた。その中で変わらぬ態度でビルとサリーを受け入れ続けたのが、”「家」を守り、「家」に住む”ジャスパー・トリング卿(夕霧 らい)と執事のチャールズ・ヘザーセット(天真 みちる)とチーフメイド(鞠花 ゆめ)やヘアフォード家の使用人達である。

現役世代は頑張っとくれとばかりに楽隠居を決め込み、ビルやサリーを見守るジャスパー卿を夕霧 らいはとぼけた味で演じてみせ、登場すると温かな笑みをもたらしてくれる。脇を固める年配の男性役を担う事の多い、夕霧らいだが、演じる男性像はいずれも味わい深く、時にほのかな色気を漂わせ、時にコミカルながらも温かく他者を受け入れる(ブイエ将軍はちょっと違うか)。紫峰七海退団後の今の花組にはなくてはならない名男役の一人だと思う。

そして天真みちるの執事チャールズ・ヘザーセット。舞台上でのヘザーセットの立ち位置がとても良かった。

「ヘアフォード家の人々の事や、来訪者の事情も判っているけれど、どの人に対しても丁寧に接する。家を守る執事チャールズ・ヘアフォードは「好き嫌いを表に出さない」人なのである。かと言って好みがないわけではない。ビルとサリーを大事に見守り、受け入れる。念入りに準備をしたパーティ会場にランベスの人達が乱入して来て、予想外の事態にフリーズしていたが、怒るでもなく、チーフメイド(鞠花 ゆめ)と共に宴席の準備に行く。
きっちり整えたオールバックに数本の白髪を入れて、厳格ながらもオシャレなヘザーセットは、明日海ビルと花乃サリーの拠り所であったろうと思う。(ビルは、ヘザーセットを”チャールズ”と呼ぶ)。

お茶会の時、たそ(天真)に「ヘザーセットは何があってもビルとサリーを受け入れてくれそう」と言ったら、「ああ、(二人が)大好きです」と破顔してくれた。

そりゃ、ヘアフォード家始まって以来、地下のキッチンに降りてきたのは、ビル1人という歴史的な出来事に立ち会ったら、ヘザーセットも大好きになるよね。