[Zuka] 2016年星組『こうもり』(4)花々の饗宴

花組公演 『ME AND MY GIRL』 が、29日(金)から始まり、2日目の30日(土)に観劇してきましたが、その前に星組公演の書き残しを仕上げておこうと思いました。

星組公演 『こうもり』『THE ENTERTAINER!』 で、まさこさん(十輝 いりす)、ゆあちゃん(妃白 ゆあ)、ひなのちゃん(真衣 ひなの)、ちょびちゃん(凰羽 みらい)の方々がご卒業なさいました。おめでとうございます。

まさこさんがいる安心感って大きかったので次回公演から寂しくなるなぁと思っていたら、みっさまと風ちゃんの退団まで発表されて、やや放心状態でした。まさこさんのお芝居での安定感は素晴らしいものがあって、まさこさん演じた役は年配の男性役が多いけれど、悪役に見えて単なる、その内面の人間味を感じさせてくれて、まさこさんの造形はとても私の好みにピッタリでした。造形がぶれずに崩れないというのは得がたいものです。

ご卒業おめでとうございます。東京公演もマイペースで頑張っていただきたいです。

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千秋楽前日のマチネで観劇したときは、『こうもり』も『THE ENTERTAINER!』も完成度が高くなっていて、とても楽しかったです。公演中に微妙ながらも変貌していくのが生の演劇の魅力といえましょう。

宝塚版『こうもり』では、アイゼンシュタイン侯爵(紅ゆずる)の妻ロザリンデに夢妃 杏瑠、侍女アデーレにトップ娘役の妃海 風が配されて、どんなストーリーになるのかと思えば、アデーレが主役となったファルケ博士(北翔海莉)に恋をするという流れに潤色されていた。

メインストーリーであるファルケ博士(北翔海莉)の愉快な復讐劇に、恋愛の達人ラート教授(汝鳥 伶)を登場させて、恋物語を織り込んでいくのは、やはり宝塚歌劇というべきだろう。愉快であろうが、復讐劇である『こうもり』がハッピーになったのは、ファルケ博士に恋するアデーレがいて、ファルケ博士の助手4人(十碧 れいや、麻央 侑希、瀬央 ゆりあ、紫藤 りゅう)とアイゼンシュタイン侯爵家の侍女4人(妃白 ゆあ、真彩 希帆、小桜 ほのか、天彩 峰里)のカップルが出来上がって、ほんわかとした幸せをもたらしてくれたからだと思う。

妃海 風が、「ファルケ博士に恋をして良いんでしょうか」と脚本・演出の谷 正純氏に尋ねたというエピソードがあるが、そこはさすが風ちゃんの面目躍如である。

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アイゼンシュタイン侯爵に復讐しようと思うファルケ博士は、侯爵家の侍女アデーレを計画に誘い込む。アデーレは女優志望ではファルケ博士は、女神公園で彼女がお稽古している姿を見かけていたからだ。(ここの誘い方は謎で、なぜ空中からオルロフスキー公爵(星条 海斗)のパーティの招待状が落ちてくるのだろうか。これもラート教授の発明のひとつか。)

アデーレは、侍女として働きながら女優を夢見ているが、アイゼンシュタイン侯爵家では、侯爵や夫人に振り回され執事アルフレード(礼 真琴)に言い寄られる日々である。そんな所に降って湧いた(!!)オルロフスキー公爵主催パーティへの招待状。最大のチャンスとばかりに、ダンサー志望の妹のイーダ(綺咲 愛里)まで一緒にパーティーへ。アイゼンシュタイン侯爵夫人ロザリンデ(夢妃 杏瑠)も、ラート教授と助手達の導きで、パーティに次女の扮装で潜り込む。

妃海 風の演じるアデーレは、復讐劇というメインストーリーの上では、アイゼンシュタイン侯爵に恥をかかせるためにファルケ博士が仕組んだ罠のひとつであるが、女優志望のアデーレはファルケ博士という理解者に出会って恋に落ちてしまう。妃海 風は、刺激の少ない平板な日常から、抜け出した場所で出会った最大の理解者へのときめきを、北翔海莉と銀橋を渡りながら、艶やかな歌声とともに披露する。侍女の毎日から豪奢なドレスに身を包んだシンデレラへ。『LOVE&DREAM』での素晴らしい美声に磨きをかけ、歌劇団で有数の歌唱力の持ち主である北翔海莉と歌い合う。

退団が発表された今、このコンビの短い活動期間に出会えた僥倖をしみじみと噛みしめている。

娘役としては、妃海 風に次ぐ大役であるロザリンデを演じるは、夢妃 杏瑠。アイゼンシュタイン侯爵夫人として、破天荒な夫アイゼンシュタイン侯爵(紅ゆずる)の手綱を引き締めようとやきもきする。だが、侍女に侯爵を誹られると、「でも悪い人じゃないわ!」と庇う。実は夫想い。だが、アイゼンシュタイン侯爵は、ロザリンデを置き去りにしてパーティに出かけ、若くて可愛いイーダ(綺咲 愛里)を誘惑するのに夢中になっている。なんたる理不尽!嫉妬で怒り狂うロザリンデ。当たり前だよね、と夢妃 杏瑠のロザリンデは腑に落ちる女性像で、どちらかというと、アイゼンシュタイン侯爵を見捨てても罰は当たりません、きっとうん。

綺咲 愛里は、イーダの愛くるしさも良いが、ショー『THE ENTERTAINER!』で紅ゆずるを娘役で囲んだ第21場”DAZZLING ENTERTAINER!”でのスウィート・レディーSが印象的だった。夢咲ねね時代には貴族の姫が多く、『ガイズ&ドールズ』の開幕当初、踊り子ミミにやや手こずっていた印象があっただけに、スウィート・レディーSはこんな艶やかな表情もするようになったんだなと思った。

あとは、オルロフスキー公爵のパーティが始まるときに、緑のお衣装の壱城 あずさ音波 みのりカップルと水色のお衣装の如月 蓮&白妙 なつカップルに両側から迎えられる、真紅のドレスのレブロフ伯爵夫人(万里 柚美)が威風堂々。やはり真紅に金の縁取りのあるお衣装を着こなしたオルロフスキー公爵(星条 海斗)の威風堂々に合うのはこの方という感じでございました。