[Zuka] 2016年星組『こうもり』(3)愉快な復讐劇

みっさま(北翔海莉)のトップスターお披露目公演『ガイズ&ドールズ』のBD・DVDと主題歌集のBD・DVDの発売見合わせのお知らせにビックリしていますが、「不備の恐れ」ってなんでしょうね。製造物に異常でも??そうすると長引くのでしょうか。楽しみにしていますので、株式会社宝塚クリエイティブアーツ様、歌劇団様、よろしくお願いいたします。

星組宝塚大劇場公演『ガイズ&ドールズ』BD・DVD、『THEME SONGS 2015 宝塚歌劇主題歌集』BD・DVD発売見合わせのお知らせ

__

宝塚版オペレッタ『こうもり』は、相変わらず、ファルケ博士を演じるみっさま(北翔海莉)の歌唱力は抜群で、すでにオペラの発声方法は『THE MERRY WIDOW』で経験済みで、しかもポップス的な歌唱力も『LOVE&DREAM』で立証済み。7月にはVOCAL中心のステージである星組公演 『One Voice』 も控えています(しかし、トップコンビがバウホール公演って!!かなりのチケット難が予想されます)。

『こうもり』はファルケ博士が、アイゼンシュタイン侯爵に悪戯返しをする話だが、アイゼンシュタイン侯爵に悪戯されて仕返しに至るまで3年間の月日があるらしい。この辺りは舞台を観ているだけでは、時の流れがいまいち判りづらいのだが、原作はそうなっている。アイゼンシュタイン侯爵の悪戯で「コウモリ博士」の異名を取ってしまったファルケ博士は、そう呼ばれる度にいつか仕返ししてやるぞ、と思ってきたのだろうか。北翔海莉のファルケ博士は、知恵と理性を持って、仕返し計画を立て、余裕たっぷりに愉しそうにアイゼンシュタイン侯爵の狼狽えぶりを笑っているので、この二人は親友というか、悪友と言ったほうが良いんじゃないかとも思う。

ファルケ博士がアイゼンシュタイン侯爵への仕返しの場に選ぶのが、ロシア皇太子オルロフスキー公爵(星条 海斗)の舞踏会である。

ファルケ博士は、役人侮辱罪で刑務所に8日間の拘留が決まっているアイゼンシュタイン侯爵を唆して、オルロフスキー公爵の舞踏会に誘う。このね、マギーさん(星条)のオルロフスキー公爵がまた素晴らしくてね!胆力のある歌声を響かせる金髪の美丈夫なのに、変に可笑しいんですよ。北翔海莉のファルケ博士とは、月組時代のつきあいがあるためか、丁々発止と息の合ったところを見せてくれる。ファルケ博士の強い味方だ。

さて、この刑務所拘留のエピソードでアイゼンシュタイン侯爵は相当の悪戯好きというか、トラブルメーカーであることが暴露される。

アイゼンシュタイン侯爵家のお抱え弁護士?である、ブリント弁護士(七海ひろき)によると、5日間の刑期が8日間に延びたのは、侯爵が裁判官を怒らせてブリント弁護士の弁護を混乱させたからだという。侯爵は「無能なロバめ」とブリント弁護士に怒っていたが、ここでクイズである。ブリント弁護士は本当に無能なのか?明らかに弁護には失敗しているが、それは侯爵のトラブルメーカーぶりがハイパーだからなのか?

私としては、アイゼンシュタイン侯爵がハイパーだから、というほうに一票を投じたい。なぜならばファルケ博士の余裕っぷりには、アイゼンシュタイン侯爵のハイパーで対して欲しいからだ。

主役をアイゼンシュタイン侯爵からファルケ博士にしたことで、けっこうアイゼンシュタイン侯爵が可哀想なことになった気がしている。舞踏会で侯爵家の侍女アデーレ(妃海 風)が扮したトランシルヴァニア公国の侯爵夫人を疑ったことで笑いものになり、妻ロザリンデ(夢妃 杏瑠)が扮したメイドにシャンパンをかけられ、刑務所長フランク(十輝 いりす)が扮するシュバリエ・シャグランにも笑われ、オルロフスキー公爵に笑いを提供する道化役扱いをされている。紅ゆずるは、コミカルな演技と笑いを取り、その演技の軽妙さと受け答えのセンスは抜群であるが、最後もややもすると惨めなオチで終わる。

なので、個人的にはアイゼンシュタイン侯爵には、七海ひろき演じるブリント弁護士、見た目は丸メガネでスーツにネクタイで重そうな黒カバンを抱えているという、こうもりの登場人物の中では異色の出で立ちをした弁護士、「誠実、正義、人権・・」と歌う弁護士の有能さを振り切るハイパーさがあって、多少のことではへこたれなず、今回の復讐劇のあとにもファルケ博士と騒動を巻き起こして、ご機嫌に暮らしていると思っていたい。

ブリント弁護士は、アイゼンシュタイン侯爵のハイパーレベルの基準になると思う。弁護士という資格は伊達じゃない。

__

『こうもり』の物語的な印象はこんな感じなのだが、私が個人的に好きな場面は、オルロフスキー公爵邸の舞踏会で星組子が大勢揃っている場面と、アイゼンシュタイン侯爵の身代わりに独房に入れられたアルフレード(礼 真琴)が独房からむにっと出てくる、ファンタジー感溢れる場面である。