続きを書いていたら、長くなって2回じゃ終わらなかった。( ̄□||||
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『ガイズ&ドールズ』の主人公はスカイ・マスターソン(北翔 海莉)。ラスベガスで5万ドルを稼いでニューヨークに帰ってきた凄腕のギャンブラー。
ブロードウェイに帰還したスカイは、久しぶりにギャンブラー仲間のネイサン・デトロイト(紅 ゆずる)に会う。ネイサンも凄腕クラップ・シューターだが、金回りは良くない。負けが込んでいるのか、なんなのか良く判らないが、クラップをやるショバ代1000ドルの現金がない。ネイサン(紅)の自慢は婚約して14年になるキャバレー・ホットボックスの踊り子アデレイド(礼 真琴)だ。
アデレイド(礼)は結婚を熱望しているのに、14年も婚約のまま放置しているネイサン(紅)だが、アデレイドのことは大事にしている。「アデレイドほどの女はそうそういないぜ」とスカイ(北翔)に自慢するが、スカイは鼻でせせら笑う。「女なんかそこら中にいるだろう」と。
確かにスカイは羽振りが良く、身なりもスマートなのでモテる。だが女を連れ歩くような派手な遊び方はしていないし、失敗して手ひどい目にあったというのも知らない。ネイサンは考える。賭けでスカイから1000ドルを巻き上げ、ついでにスカイが女で少し痛い目に会う方法はないか。
「ハバナに行くのに一人で行くのか。女を連れて行けるのに1000ドル賭けるかい」。
売り言葉に買い言葉だが、賭けと言われるとスカイも乗ってしまう。
ネイサンは考える、誰を指名しよう。
その時、ネイサンの耳に聖歌隊の太鼓の音が聞こえ、彼の目に救世軍の赤い制服を着た女が映った。神の愛に動機づけられ、身持ち堅く慎ましく、「魂を救う」布教活動に邁進する救世軍の女軍曹サラ・ブラウン(妃海 風)だった。
というわけでネイサンに、サラをハヴァナに連れて行ければ勝ちという難易度の高い賭けに乗せられてしまったスカイは、「オヤジ、やられたぜ」と呟く(うろ覚え)。このセリフがみっさまらしく、人情味に溢れ、賭けに乗せられて真面目に狼狽えている感じがして、『風の次郎吉』で夏美よう演じる甚八さんを呼ぶ次郎吉を思い出して、すごくみっさまだなと思って聞いていた。みっさまのスカイは育ちが良くて純情で、ギャンブルが生業とか必須の人生というよりも、高級な趣味(ギャンブルオタクでもない)の2代目実業家という感じなのである。
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サラを訪ねて救世軍の教会に赴いたスカイは、救世軍のアーヴァイド(天寿光希)やアガサ(毬乃ゆい)達に会い、罪を悔いたいと話し、サラとの時間を作る。そして生真面目なサラをからかい、罪人1ダース(12人)を連れて(懺悔に)来させる代わりに、ディナーに付き合う約束を取り付ける。ただし、ディナーの会場は、キューバのハヴァナだ。
ここから、ハヴァナで酔っ払ったサラが一暴れし、教壇に帰りたくないと駄々をこねるサラをスカイは愛おしいと思い始める。二人で、ブロードウェイに帰り着いて「はじめての恋」を歌う(第Ⅰ幕第9場B)。この流れでのみっさまは、スタイリッシュで格好良かった。
このスカイの格好良さを引き出すのに、何が効いたかというと、ハヴァナの踊り子クバーナの女(音波みのり)の誘惑だろう。サラの堅さを持て余すスカイは、ハヴァナの”エル・カフェ・クバーノ”の色っぽい踊り子とにやりと笑い合って、目と目で合図をする。スカイは、「すべてを知り尽くした俺なのにさ」と言いながら、堅気の女は避けてきたんだろうなと思わせられる。
この第7場のハヴァナの”エル・カフェ・クバーノ”では、クバーナの男女が歌い踊りまくっている豪華な場面で見応えがある。カフェのテーブルについたサラが「ハムサンド!!」と注文すると、音楽が一瞬止まり、しらーっとした(その質素な注文はなに?的な)ムードになるのも面白く、音楽と芝居のテンポが難しいけれど、上手く一体化している。そしてサラの見事な酔っ払いぶりとクバーナの女(音波)の見事な踊りっぷりが素晴らしい。
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その後、すったもんだあり、サラに振られたスカイは傷心で行方をくらまそうとするが、あるギャンブラーのひと言で罪人達(ギャンブラー達)を教団に連れて行くために大博打を打つことになる。
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第Ⅱ幕第2場b 下水道でクラップ・ゲームに興じていたギャンブラー達の所へナイスリー(美城れん)に連れられたスカイがやってくる。
そこでイカサマをやったシカゴのギャンブラービッグ・ジュールを巡って乱闘騒動が起きているが、全くやる気のないスカイに、ブロードウェイのギャンブラーである強面ハリー(壱城 あずさ)が、ビッグ・ジュール(十輝 いりす)を庇って、「ビッグの魂は救われないぜ」と叫ぶ。
すると傷心モードで生気が失せていたスカイが、低い凄みの利いた声で「何だって」と反応すると、ハリーはもう一度叫ぶ。「魂が救われねぇって言ってるんだよ!!」
このひと言が、スカイの闘争心に火をつけた。
このひと言は、スカイがサラに言われた「罪悪よ、スカイ」に呼応したのかもしれない。スカイにとってはサラに会わなければ贖罪はなされず、魂は救われない。それまでの陰鬱とした気持ちが吹き飛んで、「こいつらまとめて救ってやるぜ」的なノリだろうか。
スカイは、サラこそが運命の女神だと瞬間的に理解したのだろう。
ガイズはキリスト教のプロパガンダ的な要素を内包していて、「魂が救われる」という感覚をギャンブラー達も何となく持っているからこそのハリーのセリフかもしれない。
この場面での大ナンバー「運命よ、今夜は女神らしく」を歌い、ギャンブラー達を率いて踊る北翔 海莉の集中力はすごい。スカイは本気なんだなと、手に汗を握って舞台を見る。
みっさまが大劇場の舞台で真ん中を張るというのは、新人公演ぶり??(ヅカ歴短いんで判らない)。専科時代に特出はあるけれど、落下傘で来た星組でのトップお披露目公演はものすごく大変だったと思う。
おめでとう、みっさま、おめでとう。