[Zuka] 2015年星組『ガイズ&ドールズ』(1)

星組新トップコンビ 北翔 海莉と妃海 風の大劇場お披露目公演です。みっさま、風ちゃん、おめでとうございます!!

1950年のブロードウェイ初演の『ガイズ&ドールズ』をタカラヅカでは1984年初演、2002年に再演したそうだが、初演も再演も見ておらず、全くの初見でした。初日を観劇しましたが、終演後の挨拶で、みっさまが「不安もありましたが」と話していましたが、完成度は高かったです。それでも3日目、1週間目、10日目と日が経つほど熟れていくので、改めて舞台はすごい所だと思いました。

Guys& Dolls
Guys& Dolls

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幕開きはニューヨークシティのブロードウェイをバックにスカイ(北翔 海莉)が歌う。

大勢の人が行き交うタイムズスクエアの雑踏。紳士にマダム、背広を着たサラリーマン達、田舎からNY観光に来たツアー客、新聞少年にスリの少年、散歩する上品な婦人…。

そこに登場するギャンブラー達。新聞を両手で広げて紙面を睨みつつ歩くソフト帽を被った三人組。太めの身長168cm、細身の身長173cm、細身の身長175cmという見た目の並びが計算されている。太めの年配ギャンブラーのナイスリー・ナイスリー・ジョンソンは専科から美城れん。上下の肉布団を入れて丸い風船のような丸いフォルムの体を作ってはいるが、その重みを感じさせず軽々と動く。細身の若手ギャンブラーその1のベニー・サウスストリートは七海ひろき。耳に鉛筆を差し込み、競馬新聞をチェックする。二人の後ろをついて行くの若手ギャンブラーその2は、黒縁メガネのラスティー・チャーリーで麻央侑希が演じている。

競馬新聞でレースに出走する馬をチェックして、どの馬に賭けるか考える。そして三者三様に声を弾ませ、「この馬にきーめーた♪」。ギャンブラー達の最も興奮する瞬間だろう。

凄腕ギャンブラーのスカイ(北翔 海莉)とキリスト教の伝道事業を行う救世軍の軍曹サラ(妃海 風)の恋物語とクラップシューター・ネイサン(紅 ゆずる)とその14年越しの婚約者アデレイド(礼 真琴)のエピソードが縦軸に進行するストーリーだが、このギャンブラー3人組が横軸として、この作品のバックグラウンドを歌い上げる。

3人組が歌う『野郎どもと女達(GUYS AND DOLLS)』【公式の楽曲紹介】はものすごく時代を感じさせた。「すべては女のためにすること」と一見、女性を讃えながらも、ミソジニー(女性嫌悪)が入っている歌詞なのである。

「組合の会費を集めて / 女房に指輪買った」「昔ならした男がよ / 家で静かにテレビ見てる」「高い家賃 / 女のため / 払う男」って、どう考えても男性が女性のためにする行為をポジティブに歌ってないぞ、これ(苦笑)。今どきの曲としては歌えない(笑)。

可笑しいのは、「賭に負けるより良い / 女のためにすることなら」というくだりで、それは「賭けに勝てるんだったら、女のためには何もしない」だよねーと、ネット上での「(男性)オタク」の言い分と共通性を感じてしまい、そっか、ギャンブラー三人組はギャンブルオタクかぁとかなり納得した。

こういう三人組が横軸で歌っているので判るように、『ガイズ&ドールズ』のガイズは、オタクのギャンブラー野郎達の物語である。

三人組では美城れんのナイスリーが抜群に良い。丸っとした体で、フットワークが軽く、見ていないようで色々な事を見ていて、したたかなベテランギャンブラーである。抜け目がなく、状況をよく見ているため、スカイ(北翔)の信頼も勝ち得ている。三人で歌う所では美城れんの美声が先行するので、続く七海さんや麻央くんも頑張ったと思う。そして肉布団を全身に巻いて、踊りまくるナイスリー。1789のルイ16世役でも踊っていたけれど!これが、きれいに足が上がり、キレキレに踊るんだ。さやかさん(美城)も元星組だからか、鍛えられたダンサー魂を感じる。

七海ひろきのベニーは、3人組でも動くけれど、ちょこまか単独行動も多く、ネイサン(紅)にも可愛がられている。周りをキョロキョロ見渡してあっちに付いたら良いかな、こっちに付いたら良いかなと動くけれど、チャンスがあれば食いつこうと機を伺っている聡い所がある。調子は良いけどちゃらんぽらんではなくて、根が親切なので憎めない。

そしてネイサンに「賭けのことだけ考えろ」と言うギャンブルオタクなので、ネイサンを慕ってはいるが、どうしてネイサンが、ギャンブル嫌いのアデレイド(礼)と婚約しているのか不思議に思っていそう。彼にとって、「女」という存在は、男にギャンブルを止めさせようとする生き物なのである。

七海さんは喉の調子も良さそうで、声も通るし、細かく役も創り上げていて、舞台上をちょこまか動いていて小芝居している。紅ネイサンや麻央ラスティとの絡みも多く、見ていてすっごく楽しい。

麻央侑希のラスティは、ナイスリーにはまだギャンブラーとしては見習いだなと思われていそうな鷹揚な初心さがある。兄貴分2人の後を付いて見よう見まねで動いていて、オーバーにベニーにシンクロしたり、ポーズを取ったりするのが天然ぽくて面白い。麻央くんは、背が高くて見栄えがするね。チリチリパーマにソフト帽も良い感じである。

この三人組がブロードウェイのギャンブラーの代表格に見えるが、強面ハリー・ザ・ホース(壱城 あずさ)もブロードウェイの人だし、車庫の持ち主だけど明らかにギャングっぽいジョーイ・ビルトモア(十碧 れいや)などもいる。シカゴから来たクラッップ(サイコロ賭博)が大好きなビッグ・ジュール(十輝 いりす)はギャングだし、ギャンブラーにも「オタク系」と「ギャング系」があって、片方だけか両方の属性があるかでギャンブルの目的も変わってきそう。ブロードウェイのギャンブラー達も様々である。

主役に入れなかった。続く。

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“GUYS AND DOLLS”
A Musical Fable of Broadway
Based on a Story and Characters of Damon Runyon
Music and Lyrics by Frank Loesser
Book by Jo Swerling and Abe Burrows
原作/デイモン・ラニヨン 作曲・作詞/フランク・レッサー
脚本/ジョー・スワーリング、エイブ・バロウズ
脚色・演出/酒井澄夫
翻訳/青井陽治 訳詩/岩谷時子
“GUYS AND DOLLS is presented through special arrangement with Music Theatre International (MTI).
All authorized performance materials are also supplied by MTI.
421 West 54th Street, New York, NewYork 10019 USA Phone:212-541-4684 Fax:212-397-4684 www.mtishows.com”

『ガイズ&ドールズ』は、ブロードウェイでも最も陽気なミュージカル・コメディの一つとして人気と評価の高い作品です。1950年のブロードウェイでの初演では、1200回ものロングランを記録。その後の度重なる再演でも大ヒットを収めた、ミュージカル・コメディの傑作中の傑作と言われています。
1948年頃のニューヨーク。ギャンブラーのスカイは、仲間のネイサンから“指名した女を一晩で口説き落とせるか”という賭けを申し込まれる。指名されたのはお堅いことで有名な救世軍の娘サラ。プレイボーイを自認するスカイは、言葉巧みにサラを口説き始めるが…。
宝塚歌劇では、1984年に大地真央、黒木瞳を中心とした月組により初演、2002年には紫吹淳、映美くららを中心とした月組によって再演され、いずれも大好評を得ました。今回は、星組新トップコンビ北翔海莉と妃海風の大劇場お披露目公演となります。