[stage] 上方花舞台(2)

[stage] 上方花舞台(1)の続きです。

玉様の「雪」が終わり、次の幕が上がる前の緊張感というか、周囲含めて観客が固唾をのんで舞台を見守っている。幕が上がり、祐飛さんがセリ上がりで登場した途端、大きな拍手が起きる。そして拍手もそこそこに、オペラグラスを構えるという光景が広がっていた。当然、あおきもオペラグラス持参(笑)。

  • 三段返花絵草子 長唄 業平  振付:山村 若
  • 踊り
    • 大空祐飛

在原業平を謡っている長唄なので、業平のお衣装を身につけた祐飛さんが舞台に立っている。立烏帽子に片袖を脱いだ狩衣姿で、平安貴族の貴公子だ。狩衣は水色主体で、片袖脱いだ左肩からは、オレンジの打衣が見え、袴は紫色で、とても色鮮やかなすっきりとしたお衣装でよく似合っていた。化粧は、白塗りなんだけど、薄めの白塗りで、つけまつげにシャドウは入っていたが、割合に控えめだった。

舞うのは、『伊勢物語』の東下りの場面である。在原業平が、天皇の孫という高貴な家柄の出自で、しかも美男というのを良い事に、あっちゃこっちゃの女性に手を付け、京に居られなくなって東国に流れて いくというストーリーだ。

海辺の波と松の絵を背景に、小鼓と扇を持ち替えて、途中で足を踏み鳴らし拍子を取る。太鼓の音も入り、動的な舞である。小鼓を打ち、扇に持ち替える所作や扇を返してくるりと身体を回す所作などは日舞を踊り慣れている人でないと、かなり難しそうに感じた。あと足拍子は、歌劇の舞台にはない動作なので、難易度が高そうだ。

祐飛さん、がんばってお稽古したんだろうな、との印象。優雅な身のこなしで、すっきりした清々しい貴公子振りを披露してくれた。退団後7か月たったけど、まだ女役(女優)をやる気にはなっていないかも…という感じ。植田紳爾先生もその辺りを理解して、祐飛さんに業平を振ったような気がした。

最後は、客席を貫通している花道からはけるという演出で、あおきの席は後方なんだけど花道の真横だったので、祐飛さんの表情がよく見えた。この回が千秋楽で、最後の業平の舞をやり終えたという誇らしげな表情だった(ような)。

  • 三段返花絵草子 義太夫 海士
  • 踊り
    • 海    士 坂東玉三郎
    • 房前の大臣 上村吉太郎

房前の大臣役の上村吉太郎くんが花道から登場した。上村吉太郎くんは、2001年(平成13年)生まれの12歳。五代目 片岡 我當丈のお弟子さんらしい。玉様との共演者に選ばれるということは、かなり期待されているということだろう

讃岐の国志度の浦。別名房前の地に、生みの母の菩提を弔いに奈良の都からやってきた房前の大臣は、1人の海士と出会う。海士は、房前の大臣の母の話を始める。母は、時の大臣(房前の父)との間に房前を産んだが、母の身分が低いため子の将来に悪い影響があることを気にした。そして、竜王から宝珠を取り返す代わりに、房前を世継ぎにしてほしいと父大臣に頼み、海底の竜王と戦い、宝珠は取り返したが、命を落としたと述懐する。

こう物語った海士はさらに「我こそは御身の母なるぞ、跡弔いてたび給え」と打ち明けて、はかない親子の縁を嘆きつつ、夜の波間へきえてゆくのでした。

玉様は、「雪」の場面では、40代の気品ある女性っぽかったが、この場面では身分が低いために子どもの将来と引き替えに命を落とし、母として我が子にしてやれなかった心残りのある年配の女性を見事に演じていた。ただ、房前の大臣はただ黙って無表情に聞いているだけに見え、玉様の海士が激しい分、ちょっとギャップを感じた。

義太夫と三味線が入り、「三段返花絵草子」の中で最も盛り上がる場面だと思うが、前段よりストーリーが入ってきたので、一見さんにはちょっと難しかったです。今これを書いていて筋をちゃんと理解した。すんません。

玉様が素敵だった。祐飛さんは元気そうで、変わらぬ姿で嬉しかった。そして文楽を観たことがないので、機会を作ろうと思った。宝塚歌劇でも、もう少し和物を増やせばいいのに。この幕以降は所用で退席したので、レポ&感想もこれまで。

上方文化芸能協会 設立30周年記念「上方花舞台」

「上方花舞台」は、1983年に作家司馬遼太郎氏が中心となって発足させた上方文化芸能協会が、お座敷でしか見られない芸妓の芸を誰もが見られるようにと、劇場で、能や歌舞伎、狂言、落語、宝塚歌劇の上方伝統芸能の方々の協力を得て実現したのが始まりです。

【公演名】三十周年記念上方花舞台
【日  時】 1月30日(水)・31日(木)
【構成・演出】植田紳爾
【場  所】 国立文楽劇場(大阪市中央区日本橋1-12-10 TEL:06-6212-2531)
【出演者】 坂東玉三郎、大空祐飛、榛名由梨、瀬戸内美八、山村流、OSK日本歌劇団
【主  催】 財団法人 上方文化芸能協会
【協  力】 松竹 株式会社
【後  援】 公益財団法人 関西・大阪21世紀協会