国立文楽劇場で行われた上方花舞台を、 31日(木)の16時~18時45分回で観てきた。残念ながら、後に所用があったので、最後の幕以降を観ずに退席したが、五代目 坂東玉三郎様の舞台と退団後初舞台の元宙組トップ大空祐飛さんの舞を観ることができたので、超満足した。
- 口上
口上で玉様は、上方花舞台の来歴を語り、文化が豊穣ではないとその都市が死んでしまうという司馬遼太郎氏の言葉を紹介した。今日の舞台である国立文楽劇場は、大阪に発展した人形浄瑠璃文楽の本拠地だが、公益財団法人 文楽協会は橋下大阪市長が示唆した補助金打ち切り施策で揺れている。
玉様は、上方花舞台なのに自分は関東の者で、と笑いを取り、大和屋の女将さんから声をかけられ、自分も屋号が大和屋だし、現代では関東も関西もなく、文化を継承し、発展させていくことに力を尽くしたいと出演の意図を説明した。2012年に重要無形文化財の保持者(人間国宝)として認定された五代目 坂東玉三郎が上方芸能の応援に来てくれたということで、上方文化芸能協会 設立30周年記念というのもあるが、かなり力の入った公演だということが判った。
玉様は、上方花舞台の来歴紹介あたりは、つっかえたり、人の名前間違えたりの即興トークみたいな感じが、ご愛敬だったが、口上の最後の「すぅみからすぅみまでずず ずーいぃっとおねぇがーいもうしあげたてまつりぃまぁ~す(隅から隅までずずずいっとお願い申し上げ奉ります)」はさすが超絶すごくて、背筋がシャキッとしました。
- 地唄 松竹梅 作曲:三橋勾当 振付:山村 若
- 踊り
- 山村 光
- 山村 若有子
- 山村 若峯芳恵
- 山村 楽春代
- 山村 楽風女
日本舞踊は(も)、全く判らないので、一人舞が二人舞になり、五人舞になり、きれいに揃って舞う姿に美し~と感心するばかりだった。日本舞踊の静けさの中にある華やぎの表現に荘厳な印象を持った。地唄の解説サイトによれば、「松竹梅を主題とした、三福対の華麗な慶祝曲」とのことで、設立30周年記念のお祝いで選ばれた曲だろう。地唄FAN「松竹梅」の項に歌詞の解説と訳が掲載されている。
- 三段返花絵草子 地唄 雪
- 踊り
- 芸妓 坂東玉三郎
「雪」は、地唄の代表的な曲で、屈指の名曲と言われているそう。無知でまったくすみません。「出家して清い境地にいる尼が、芸妓であった頃の昔の恋人を思い出し涙するという内容」である。
舞台は照明を落として薄暗く、玉様には、黄みがかった柔らかい光があたり、薄闇の中に浮かび上がるように、真っ白なお着物を着てすんなりと立っている。華やかな浮き世を捨てて仏門に入った元芸妓に扮する玉様が、昔の恋しい人を想いだし、涙しながら舞う。傘を開け閉めしたり、持ち替えたりするわずかな手の動き、そして哀しげに目を伏せ、首をかしげる。中腰で立っているのだが、優美で美しい身体のラインがわかる。女性の思慕や哀しみが全身で表される。いやもう、玉様は素晴らしい。立っているだけでも存在感があった。迫力である。
これだけでも元取ったという気分になった。そして…(2)に続く。
「上方花舞台」は、1983年に作家司馬遼太郎氏が中心となって発足させた上方文化芸能協会が、お座敷でしか見られない芸妓の芸を誰もが見られるようにと、劇場で、能や歌舞伎、狂言、落語、宝塚歌劇の上方伝統芸能の方々の協力を得て実現したのが始まりです。
【公演名】三十周年記念上方花舞台
【日 時】 1月30日(水)・31日(木)
【構成・演出】植田紳爾
【場 所】 国立文楽劇場(大阪市中央区日本橋1-12-10 TEL:06-6212-2531)
【出演者】 坂東玉三郎、大空祐飛、榛名由梨、瀬戸内美八、山村流、OSK日本歌劇団
【主 催】 財団法人 上方文化芸能協会
【協 力】 松竹 株式会社
【後 援】 公益財団法人 関西・大阪21世紀協会