[Zuka] 2015年月組『1789-バスティーユの恋人たち-』

26日11時公演を観劇。花組公演の感想をまだ書き切れていないのに、月組公演が始まってしまった。

フランス製『1789』。小池修一郎氏の潤色・初演なので、3日目にしてもまだぎこちない部分が見受けられましたが、今の月組の勢いで押し切ってきました。見応え抜群です。

タカラヅカ版『1789』は、タカラヅカ版『ベルサイユのばら』と対を成す物語だった。「対」というのは、補完し合うという意味である。

  • 主人公は貴族⇔主人公は極貧農民
  • 主人公を中心とした少数⇔群像劇
  • フランスを背景にした恋愛物語⇔恋愛要素を取り入れた革命物語

どっちがどっちだかは、すぐに判る。前者がベルばら、後者が1789。方法論が対照的なのにも関わらず、人としての在り方を探し、人としての生き様を描くという、作品に流れる思想性、方向性は同じように感じる。

プロローグの場面で、主人公のロナン(龍真咲)がバスティーユの城壁を登り、真咲さんの声で、「大海の藻屑かもしれない。けれど、フランスの未来のために」(うろ覚え)とナレーションが入り、なんだろう、ぐっとこみ上げるモノがあった。龍真咲の存在感ハンパない。

1789は、貧しく無学な若者ロナンが、パリに出て、革命の思想に触れ、身分違いの恋をして、「大海の藻屑かもしれない。けれど、明日のフランスを救う」と革命の同志達と共に立ち上がるまでのお話で、『ベルサイユのばら』で、オスカルが、「われらは祖国の名もなき英雄になろう!!」と立ち上がったのとリンクする。

フランス革命の時代に生きたロナンという名もなき英雄の物語である1789は、『ベルサイユのばら』と対を成している物語で、宝塚歌劇の新たなる挑戦であると思う。

宝塚歌劇にはまって、最初にリピートしたのが月組の『ベルサイユのばら』だったことが懐かしい(まだたった2年か)。初めてのお茶会参加は、ベルばら真咲茶でしたわ。

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ロナン(龍真咲)は飢えたる人です。金もない身分もない知識もない技術もない。パリに出てきて、仕事を得て食べられるようになったら、周りが見えだす。革命だ平等だと言っている友人たちは、裕福で立派な仕事についている。餓え焦り別れ自暴自棄。

マリー・アントワネット(愛希れいか)は虚無の人です。国で最も高貴な身で欲しい物は何でも手に入る。でも私は生きた人間なの。ああ、美しいお人形のように心を持たずに生きていけるのなら、こんなに虚しさに苛まれることもないだろうに。

人は、自分の無力さとちっぽけさを知ったときに、ほんとうに欲するものを知るのかもしれない。

  • 龍真咲愛希れいかは劇中、全く絡まないが、芝居の間合いや大事にしているところが似ていて、ここが大事という所を二人とも外さない。ラストで、せり上がってきたロナン真咲さんと、その後方で壇上に立つマリーちゃぴの存在感がすごかった。
  • オランプは役替わりで、海乃 美月。ほころびかけた蕾。清楚な美しさで、常に真剣に生きるオランプは、もう少し恋の輝きを表に出せれば一気に花開きそうな。
  • 歌の難易度がかなり高く、歌うまのかちゃ(凪七 瑠海)がちょっと手こずっているかな?と思う箇所があった。
  • マギーさん(星条海斗)が、こんなマギーさんが見たかったという、マギーさんで、カッコ良かった。貴族の超越性を疑う事もせず、職務に忠実。黒いけれど、力強い黒さ。
  • 美城れんのルイ16世と美弥るりかのアルトワ伯が素晴らしい!かなりロックオンしていました。
  • ロベスピエール役の珠城りょうがボディパーカッションを始める場面は、舞台にいるキャストも観客も固唾を飲んでたまきち氏を見守っていて、さすがのたまきち氏も緊張の面持ちだけれど、力強い手拍子と足踏みでセンターを張っていた。しかし、ロナン(龍)が駆け寄ってくると、一気に組子がほぐれて、センターに立つという重みを感じた一瞬だった。
  • 紫門 ゆりや、朝美 絢、輝月 ゆうまの秘密警察トリオのコミカルさに、客席はまだ笑う余裕がない。ここ、笑っていいとこ?みたいな空気で、ゆりやくんが、オランプちゃーんって、叫んで追いかける所で笑いそうになったけれど、客席は緊張を保っていた。大丈夫、ちゃんとおもろいから。リピーターが増えると笑いが出る場面だな。
  • 「若いツバメ」に見えたフェルゼン役の暁 千星。童顔も3年鍛えられれば、立派な男役の顔になる。同じく童顔と言われた礼真琴を見ていると、そう思う。いま大変だろうけどね。楽しみです。

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【あらすじ】

  • 1788年夏 初頭フランスのボース地方

農民達は、干ばつによる飢饉で税金が払えなくなり、取立てと処罰に来たペイロール伯爵(星条海斗)によって、農地を取り上げられる。ペイロール伯爵(星条)に農民達の窮状を訴えたロナン(龍真咲)は、父親を国王の名のもとに射殺されてしまう。

ロナンは、生きるために、妹ソレーヌ(役替:晴音アキ/花陽ミラ)を故郷に残し、パリに出る。

  • 1789年パリ

警察が立ち入り出来ない繁華街パレ・ロワイヤルでは、革命家でジャーナリストのデムーラン(凪七 瑠海)の演説のもとに、三部会の議員であるロベスピエール(珠城 りょう)や弁護士ダントン(沙央 くらま)、医師でかわら版を営むマラー(綾月 せり)ら、多くの民衆が集っていた。

そこに空腹と疲労で倒れそうになりながら辿り着いたロナン(龍)は、デムーラン(凪七)の口利きでマラー(綾月)の印刷所で働くことになる。見ず知らずの人間に、食事を与え、仕事を世話してくれたことにロナンは感謝し、恩義の念を持つ。革命家達は王政に意義の声を上げ、自由・平等・友愛を掲げて、貧困と飢えにあえぐ民衆の支持を集めていた。

  • 1789年ベルサイユ宮殿

ベルサイユ宮殿では、国民の窮状をよそに毎夜、華やかな舞踏会や賭け事が行われ、その中心である王妃マリー・アントワネット(愛希 れいか)は、退屈と虚無におぼれ、スウェーデン将校ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン(暁 千星)との恋に生きがいを見出していた。

ルイ16世(美城 れん)は、国政には関心が薄く、ギヨタン博士(響れおな)が開発した新しい処刑道具に夢中になっていた。大蔵大臣ネッケル(光月 るう)は、フランス国庫の破綻状態を説明するが、ルイ16世の弟であるアルトワ伯(美弥 るりか)は、国民から税金を取れば良いと一笑に付し、ルイ16世はネッケルの説得を聞き入れない。

マリーとルイ16世の共通の関心事だったのは、脊椎カリエスで病床にある王太子ルイ・ジョゼフのことである。ルイ・ジョゼフには、王妃の信頼が厚いオランプ(役替:早乙女 わかば/海乃 美月)が養育係としてついていたが、体調は予断を許さないものであった。

  • 1789年パレ・ロワイヤル

ロナンは、ジャック(宇月 颯)やミシェル(煌月 爽矢)、ジュリアン(千海 華蘭)、イブ(貴千 碧)らとともに印刷所で働き、なんとか食べるだけの賃金を手にしていた。パレ・ロワイヤルに行くと、デムーラン(凪七)やロベスピエール(珠城)、ダントン(沙央)らの話を聞き、啓蒙思想に触れる。革命家達は、出身は第3身分の平民だが、ルイ=ル=グラン学院で高等教育を受けていた。

デムーランやマラー(綾月)の記事を印刷所で刷ることも、ロナンの喜びであった。そんな折、ロナンが、遊び好きなダントン(沙央)に恋人として紹介されたのは、パリに出て娼婦となっていた妹ソレーヌ(役替:晴音/花陽)であった。ロナンは、妹が娼婦に身を落としていたことに衝撃を受けるが、ソレーヌは自分を捨てて出て行ったロナンにいう権利はないと怒る。革命家達は、所詮は裕福なプチブルジョワであり、生きていくためには仕方がないとソレーヌはいう。

身分は同じでも、彼らと自分達とは違う。憂さを晴らすために飲んだくれて広場で寝込むロランだった。

一方、マリー・アントワネットは、王太子のことを気にしながらも、ポリニャック夫人(憧花 ゆりの)の手引きで、オランプを案内役にして、フェルゼンとの密会に出かける。目指すは、革命家達のたまり場パレ・ロワイヤル。

そして、貧しい農民出身のロランは、王太子の養育係オランプと出会う。

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かんぽ生命 ドリームシアター
スペクタクル・ミュージカル

『1789 -バスティーユの恋人たち-』【公式
Le Spectacle Musical ≪1789 – Les Amants de la Bastille≫
Produced by NTCA PRODUCTIONS, Dove Attia and Albert Cohen
International Licensing & Booking, G.L.O, Guillaume Lagorce
潤色・演出/小池 修一郎

1789年初頭、官憲に理不尽に父親を銃殺された青年ロナンはパリに出て、パレ・ロワイヤルで、デムーラン、ロベスピエール、ダントンら革命家と知り合い、新しい時代の到来に希望を託して行く。一方ヴェルサイユ宮殿では、ルイ16世や王妃マリー・アントワネットが、華美な生活を続けていた。病弱な王太子の養育係オランプは、王妃のお供で、お忍びでパレ・ロワイヤルに赴く。
その夜ロナンは、対立する立場のオランプと運命的な出会いをする。
王弟アルトワ伯は革命を潰そうと密偵を放つが、革命家たちの理想の炎はますます燃え上がる。ロナンは革命に身を投じ、遂に7月14日、バスティーユ襲撃に参加するが……。
革命勃発のパリに生きた若者たちの、激しく熱い愛と理想に満ちた青春を描く。

本作品は、2012年にフランス・パリの「パレ・デ・スポール」で初演され、絶賛を博し、以降、フランス語圏で度々上演されてきたヒット作です。日本では宝塚歌劇団が、小池修一郎潤色・演出により宝塚バージョンとして日本初上演。フランス革命に翻弄される様々な人間の生き様を、ポップな現代音楽に乗せて描くフレンチ・ロック・ミュージカルです。また、宝塚大劇場公演は第101期初舞台生のお披露目公演となります。