10月31日が千秋楽だった雪組の新トップコンビ早霧 せいな・咲妃 みゆのプレお披露目公演『伯爵令嬢』の感想です。新生雪組おめでとうございます!
『王家の紋章』などの細川智栄子あんど芙~みん氏作の『伯爵令嬢』(全12巻 秋田書店)は、観劇後に電子書籍で読みました。秋田書店刊行の『ひとみ』に1979年4月号から1984年11月号に連載されていた少女マンガです。古式ゆかしい瞳キラキラのヒロインは、少女マンガの本道。懐かしさで叫びそうになりました。気恥ずかしくなるほどの溢れるロマンス夢の世界ヅカにピッタリ。
遠征しての観劇後、東では若き新聞王が孤児院育ちの少女にひっぱたかれ(伯爵令嬢)、西では若きホテル王が両親のいない少女にひっぱたかれていた(PUCK)と独りごちてました。
最初から最後までとことんロマンスが貫き通されていて、(途中で何があろうと)些細なことは気にしてはいけない強引さで、アラン(早霧 せいな)とコリンヌ(咲妃 みゆ)がハッピーエンドになる絶対になる。
「ご都合主義」と呼ばれて批判の対象となりやすい強引な展開や唐突な成り行きも、偶然や幸運の繰り返しは、全て、アランとコリンヌが結ばれるためには許され、それどころか微笑ましく見ていられる。※この反応の差はなんなのだろう、と思わずにはいられない。
時は19世紀末、舞台はフランス。ヒロインのコリンヌ (咲妃 )はブリュターニュの孤児院で育ち、貧しい中で年下の子達を大切に面倒を見る、明るい少女である。コリンヌには初恋の人リシャール(彩凪 翔)がいた。リシャールは貴族の子息だが、盲目で公の場に出ることを避けていた。
ヒーローのアラン(早霧)は、公爵家の生まれだが、独立心が強く、パリで新聞社を創設し、豪腕で「若き新聞王」と呼ばれる。不法や非道を許さないアランは、精力的に暴露記事を載せ、一部から恨みも買っていた。アランの新聞の記事が元で父親ジュリアン(央雅 光希)が自殺したフランソワ(夢乃 聖夏)もアランを憎む一人であった。
ブリュターニュを訪ねたアランは村長(真條 まから)に連れられて借金を抱える孤児院に行き、明るく無邪気なコリンヌに一目惚れする。舞台ではアランがコリンヌに引っぱたかれて、「ジュ・テーム 君を愛さずにはいられない」と呟いていた。なんか、こう、クラクラする設定だよね。早霧せいなが演じるとまさしくナイトの登場といった趣きで、原作のアランにあるような傲慢さはなく、さっそうとした明るさがある。
そしてリシャールにもアランにもプロポーズされ、アランに復讐するつもりでコリンヌに近づいたフランソワ(夢乃 聖夏)まで虜にしてしまうコリンヌは、咲妃 みゆの愛らしさを存分に活かしたキャラクターになっていた。コリンヌ(咲妃)がアランの執事のじいや(真那 春人)とメイド達に囲まれて、家事勝負する場面が明るくておしゃまで、コリンヌを取り巻く温かな環境をイメージさせる。最後にアラン(早霧)が、「うん、美味しい」と言って勝負がつくのもタイミングが良かった。
で、コリンヌは15年前に召使によって連れ出されたロンサール伯爵家の令嬢だったのだった。この「みなしご」「実は貴族令嬢」「白馬の騎士」というありがち設定を、波瀾万丈のドキドキロマンスに仕立て上げている原作を、生田大和氏は豪腕で舞台向けの作品にしている。いや、ほんと豪腕で、物語的には細部がはしょられていて辻褄がいまいちのところがあったりするのだが、ラストの「幸福感」めがけてまっしぐらに突き進む姿勢が、終演まで観る側の心地よさを維持しているのだろう。萌えポイントをぐさぐさ突くセンスが、生田氏はずば抜けている。ただまぁ、そろそろお話作りももうちょっと丁寧にしてもいいかな。(^^;)
フランソワの夢乃 聖夏は、待ってました二枚目悪役!だが、ダーティーまでも行かず、情婦ジャンヌの舞咲 りんとの間合いも良くて、どこか憎めないのが夢乃らしい役作りだった。ドニーさんも重太夫も銭形警部も夢乃聖夏ならではの役に仕上がっているんだけれども、熱くって濃いーかっこいい役もできる人なので、こういう役が見れると嬉しいね。
リシャール役で金髪ロン毛の彩凪 翔や、おひげのロンサール伯爵のほかに、夜会で踊る若い貴族の男性も兼ねていた鳳翔 大という夢夢キラキラ感が出せる面子を持ってきたのも成功の一因だと思う。
コリンヌを陥れるアンナ(有沙 瞳)は、マドレーヌ夫人(美穂 圭子)を失いたくないあまりに逆上する破れかぶれ感が伝わってきて、共感も同情も出来ないけれども行動の動機は理解できるよ、というポイントを外さない演技だった。98期の有望株ですね。コンビを組む泥棒モリスの蓮城 まことは、使いっ走りになってしまっていて、それで良かったのかな?もったいない気もする。
さぁ、正月公演の『ルパン三世』が楽しみですね!
■主演・・・早霧 せいな、咲妃 みゆ
『伯爵令嬢』-ジュ・テーム、きみを愛さずにはいられない-
~細川智栄子あんど芙~みん作「伯爵令嬢」(秋田書店刊)より~
脚本・演出/生田 大和
[解 説]
19世紀末。エッフェル塔、パリ万国博覧会に代表されるベル・エポック華やかなりしフランスを舞台に、新聞王として世に勇名を馳せる公爵家の子息アラン、孤児院で育ち海難事故で記憶を失った少女コリンヌ、アランに復讐を企むフランソワ、かつてコリンヌと愛を誓い合った盲目のリシャール、狡猾な女スリのアンナなど、個性溢れる登場人物たちが織り成す愛の讃歌です。