[stage] 蘭寿とむ『ifi』Bヴァージョン

本日、『ifi(イフアイ)Bヴァージョン 』大阪公演の千秋楽おめでとうございます。

宝塚歌劇団元花組トップスター蘭寿とむ 退団後の初主演作品ですが、大阪公演は3日間しかなく、Bヴァージョンしか上演しないという…。動員が難しいんでしょうかね。私は中日に観ました。

主演:蘭寿とむ
作・演出:小林香
音楽:スコット・アラン、扇谷研人

キャスト:蘭寿とむ パク・ジョンミン ラスタ・トーマス
辻本知彦 白川直子 ストーリーボードP / ケント・モリ 他
〈Aバージョンのみ出演〉ジュリアン
〈Bバージョンのみ出演〉黒川拓哉[LE VELVETS]

企画・制作・主催:梅田芸術劇場

ifi(イフアイ)──
ダンス&ソング・エンターテインメントショー。
一つのストーリーから生まれる二つの結末。
運命の選択を迫られたとき、
あなたが選ぶ道がもし二つあったとしたら?

蘭寿とむ『ifi』
蘭寿とむ『ifi』

SPECIAL! 「ifi(イフアイ)」制作発表レポート 『omoshiiオモシィ』

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ニューヨーク・マンハッタンで、インディーズ系の映画監督として人気を博するユーリ(蘭寿とむ)は、同棲中だった映像カメラマンのヒロ(Aジュリアン B黒川拓哉)を、若者達のケンカの巻き添えで死なせてしまう。

巻き添えの発端は、ケンカを撮影しようとしたユーリに若者達が絡んだことだった。ユーリは後悔にさいなまれ、夢にうなされ、眠れないようになる。「あの時、撮影をしようとしなければ、撮影を続けようとしなければ…」。自分の選択を苦しむユーリは、ヒロの弟・パク(パク・ジョンミョン)が経営する食料雑貨店<This or That>に居着いている占星術の占い師ケント(ケント・モリ)の占いに依存するようになる。

「占い依存症」。ヒロを失うまでは、ユーリが軽い軽蔑の眼で見ていた「占いに自分の行動を決めて貰う人達」にユーリも加わってしまう。そんなユーリに、ケントは言う。

彼に会いたいか、会っても話しては行けない、そして二つのうち、どちらかを選択するのだ。

”If I said …”

ヒロ、あの時、あなたは何を言おうとしていたの?

私が正しい選択をしていたら、二人は何事もなく家に帰り着いていたの?

そしてユーリの選択した道は…。

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開幕した途端に、「ああ、蘭寿さんが楽しそう」と思い、その思いが開演中ずーっと続いていた。出演キャストの人達も、蘭寿さんの後押しをしてくれているようで、暖かい空気が流れていた。

とにかく!蘭寿さんが!飾り気のないナチュラルな可愛さで!!

恋人のヒロとのラストも、バリバリ働くんだけれど、大事な人がいるから、大事にしてくれる人がいるから、まっすぐ前を向いて歩けるんだね、って気付いた。柔らかくて切なくて、良い表情をしていてグッときた。

キャストは、ケント・モリ氏や白川直子氏など選りすぐりのダンサー達と、パク・ジョンミョン氏、黒川拓哉氏といったシンガー達で、ミュージカルというほど、お芝居の要素は強くなく、「ダンス&ソング・エンターテインメントショー」という冠が似合う。

一流ダンサー達のダンスは圧巻で、ステップがそれぞれ違うのに、リズムは揃っていたり、多国籍mixで混沌としているのに最後には一つに収斂していくという、素晴らしいダンス・アクトだった。

蘭寿さんは、どちらかというと歌担で、アルトの奥行きのある歌声は健在。バリトンの黒川拓哉氏とのデュエットは良くマッチして柔らかい二重奏が美しく響いた。ダンスは2幕ケント・モリ氏とのダンスが迫力で、蘭寿さんの身体能力の高さを目の当たりにした。

ストーリーは、 ユーリのエピソードと平行して、食料雑貨店<This or That>に占いを求めて来店する人達のエピソードが脇で進行していたり、過去のユーリの岐路を遡ったり、冥界?をさまよったりするシュールさがあり、非現実感が強い。プロジェクションマッピングで六角形のスクリーンに様々な映像や時計が映し出され、現実と非現実が入り乱れ、不安定感を煽る。

(一人の男性(ラスタ・トーマス)をユーリともう一人のゲイの男性(A佐藤洋介 B SHUN)が取り合うのは、おお、N.Y.だなぁという感じ)。

最後にユーリが選んだ選択は正しかったのか。どれが本物の選択で、どれが現実なのか。その辺りも実は判らず、はぐらかされたような気になる。ただ最後にユーリが言うセリフが美しい。

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人生は映画のように編集はできない。けれど人生は美しい。カメラのアングルを変えるように視点を変えれば、違う面が見えてくる。

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女優 蘭寿とむ、”蘭寿スタイル”を造形中。