[Zuka] 2014年宙組全ツ『ベルサイユのばら―フェルゼンとマリー・アントワネット編―』

千秋楽おめでとうございます。宙組の皆様、スタッフの皆様、お疲れ様でした!

99周年だった昨年から続く『ベルサイユのばら』攻勢ですが、宙組全国ツアーで終わりかな。再演を重ねた演目で、個性的な役づくりというのも、たいへんそうですが、舞台を見ると、その時のキャスト同士で響き合い、その時こっきりの舞台が作られていくものなんですね。

宙組全国ツアー公演
宙組全国ツアー公演

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「フェルゼンとマリー・アントワネット編」は、スウェーデン貴族フェルゼン(朝夏 まなと)とフランス王太子妃マリー・アントワネット(実咲 凜音)が仮面舞踏会で出会った場面で始まる。

フェルゼンは、スウェーデンの名門貴族の出身とは言え、この時点では無位無冠の若き留学生である。パリの仮面舞踏会で出会った美しい親切な女性、それがマリー・アントワネットであった。マリー・アントワネットは、オーストリアからフランス王妃になるために輿入れし、数十年先まで敷かれたレールの上で、「ただ退屈するだけを恐れていれば良い」生活を送っていた。そして二人は、互いの身分を知らずに惹かれ合う。

信頼関係で深く繋がっている朝夏フェルゼンと実咲アントワネットだった。この二人の立ち姿はすっきりしていて、芯が強く涼やか。朝夏フェルゼンはスウェーデン軽竜騎兵の白を基調に緑のアクセントがある軍服が、実咲アントワネットは凜然としたブルーのドレスが良く似合う。いいね(ΦωΦ)イイネ!!

アントワネット(実咲)は、フランス王妃という立場であることを自覚しようとしているのに、他人からは「オーストリア女」と呼ばれる。地位をはぎ取られ、家族の世話をする妻であり母になったと思ったら、今度は夫も子ども達も奪われ、カペー未亡人と呼ばれる。

そして「オーストラリア女」と呼ばれたアントワネットが、フランス王家の象徴として死ぬことを要求される。母マリア・テレジアから立派なフランス人になるようにと言われた言葉を守るためにアントワネットに出来ることは、ただりっぱに死ぬこと…。

アントワネットを救うために、ただ死ぬために生きている王妃に会うために、馬を飛ばすフェルゼン。ベルナール(星吹 彩翔)とロザリー(瀬音 リサ)の手引きで牢獄に侵入したフェルゼンに会い、涙するアントワネット。「嬉しいのです。本当に、本当に私のことをまだ、まだこんなに思ってくれる人のいることを…」。

さあ!見るがいい
マリア・テレジアの娘の死にかたを

この首がおち、血がしたたるとも
わたしは永遠に眼を見ひらき
祖国フランスのゆくすえをみつめるだろう…

しっかりと見るがいい!!
これがフランス王妃の死にかたです!!

池田理代子『ベルサイユのばら』

こっそり(エトワールがみりおんだったし、きっとつぎもたぶんときたいしております。)

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フェルゼンとアントワネットの出会いの場面に立ち会ったのが、近衛隊員としてアントワネット付きになっているオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ(七海ひろき)である。

オスカル(七海)は、女として生まれたが、男として軍人としてジャルジュ家後継ぎとして生きるようにレールを敷かれ、女としての心の内をだれにも明かすことは出来ない。フェルゼンとアントワネットの出会いに立ち会い、フェルゼンの潔さに打たれたオスカルは、彼にほのかな恋心を抱き始めるが、それを誰かに打ち明けることはできない。しかし、オスカルの側に付き従うアンドレ(蒼羽 りく)は気付いていた。

原作でオスカルは、フェルゼン(朝夏)の妹のソフィアに「だれよりもフェルゼン伯の心はよく知っているつもりです」と言っているが、オスカル(七海)はフェルゼンの好ましさに真っ先に気付き、また11歳からお側についているアントワネット(実咲)の気持ちも良く知っている。

だが、荒れるフランス国内の世情を見て、断腸の思いでフェルゼンに帰国を進言する。

この流れが、幕開けの三人の出会いの場面に、オスカルの「我ら三人」のセリフと、1幕の終わりのフェルゼン(朝夏)のセリフ「白バラのような人、紅バラのような人」が反響し合い、(私の中で)やたら盛り上がった。そうだった、『ベルサイユのばら』の前半は、「我ら三人」の物語だったんだ。

ああ、神よ!


なにゆえに

遠き異国に生を受けし

我ら三人を


このフランスの地に

むすびあわせたもうたのか!?

原作でアンドレが格好良くなって(←主観)活躍し始めるのは、髪が好き勝手なほうに向いてから(黒い騎士編)だった。「フェルゼンとマリー・アントワネット編」だから、これで良いのだろう。

七海オスカルは爽やかな軽やかな潔さがあり、蒼羽 りくのアンドレはずしりと落ち着いて、第2幕第4場の橋の場面で、七海オスカルと見つめ合って優しい笑みを浮かべるアンドレが、お互いの信頼関係がしっかり築いているぞ感があって、とても印象に残った。そして場面は、バスティーユに突入し、七海オスカルが真ん中でバスティーユとかとか!2幕最初の花祭りも七海&蒼羽という珍しい並びで、楽しかった。

フィナーレで愛の棺を歌いながら、娘役に囲まれて超ドヤ顔の七海さん。なんか、ドヤ顔で嬉しそうに踊る姿に気圧されました。波乗り七海さん??Σ(゚д゚;) ヌオォ!?

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風羽 玲亜のおかげでプロバンス伯爵のイメージがちょっと変わった。冷静に兄ルイ16世(寿 つかさ)をサポートするプロバンス伯爵だった。いや、史実はともかく(^^;)。

ジェローデル(澄輝 さやと)は、落ち着いて、やるべきことをきちんと遂行するジェローデルで、格別に派手なことをするわけではないのに、頼もしいあっきージェロ様。そうだ、あっきーがいた、あっきーだ、頼むよ!という安堵感が更に増す。なんですかね、これ。

えびちゃんソフィア(綾瀬 あきな)も兄フェルゼンを見つめる表情が痛ましさと優しさでいっぱいで、これ以上、兄が傷つくのを止めたい!という気持ちが溢れるソフィアだった。

ベルナール(星吹 彩翔)とロザリー(瀬音 リサ)のカップルは初々しかった!「ロザリーはうちのマスコットだったんですからね」とジャルジェ夫人(大海 亜呼)に言われて、自慢げに破顔するベルナール(星吹)を見て、ごちそうさまですと思いました(笑)。

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次のタカラヅカ版『ベルサイユのばら』の上演は、いつでしょうね。ありがとうございました。(^_^)/