[Zuka] そこに息づく世界~宙組『SANCTUARY』

宙組『SANCTUARY』千秋楽おめでとうございます。スタッフ、宙組生一丸となって作り上げていた舞台でした。お疲れ様でした。

何と言っても脚本が良かった。脚本・演出の田渕大輔氏は、2012年バウ公演『Victorian Jazz』(花組 主演:望海 風斗)も面白かったですし、本作もツボを突いた設定とストーリーで、観る側としては舞台に息づいている世界に入り込みやすかった。世界観や設定のスケールが大きいので、もっと大きな箱でも上演できそうな作品だと思いました。音楽も全て『SANCTUARY』用のオリジナル(作曲・編曲 斉藤恒芳)で、世界観にぴったりマッチしていて、音源も歌だけじゃなくて、インストゥルメンタルもあれば良いなと思ったりしました。

私が一番好きな場面は、ルーブル宮に到着したナヴァール王アンリ(愛月ひかる)が、舞踏会で王女マルゴ(怜美うらら)と踊る第4場です。

アンリは、ルーブル宮についた途端にアンジュー公(春瀬央季)に田舎者と嘲られ、ギーズ公(凛城きら)には邪教徒呼ばわりされ、周り中、敵だらけであることを悟る。そんな状況で初めて顔を合わせた政略結婚の相手マルゴは、アンリにルーブル宮の権力構造について教え、宗派の争いや権力闘争を冷めた目で見詰める美しく理知的な女性だった。

アンリとマルゴがワルツを踊る数分の間に、二人の心境に変化が起きていることが判る。ここは、怜美うららの王女マルゴ像が素晴らしく、奔放ではすっぱに見せかけて、アンリの境遇を案じ忠告する優しさとマルゴ自身が置かれた境遇を客観視する強さを現す。そしてマルゴの美しさに、敵地であることを一瞬忘れて、マルゴに求愛するアンリ。

男役を引き立て、自身も輝く娘役の醍醐味を見た気がした。

本作は、出演者23名と少ないこともあってか、みんながみんな、自分の持てる力を精一杯発揮しようとしている舞台だった。みんな良くて一人一人書いていたら、ほぼ全員の名前を挙げなきゃいけなくなるので、特にというと秋音光のシャルル9世、七生眞希の小姓オルトンが目につきました。あと愛白もあの侍女シャルロット。みんな熱演でした。良かった。