[Zuka] 2014年星組『The Lost Glory』ネタバレ編

柚希礼音 退団記者会見の様子が公式に出ました。

2014/08/20 星組トップスター・柚希礼音 退団記者会見

トップとしての6年間:
「100周年へと向かっている時に何度もくじけそうにもなりましたが、今振り返ればあっという間でした。そして自分の中では120%頑張れたと思っています。」

公式には載っていませんが、日刊スポーツには、「つねに進化し続けないと、ファンはついてきてくれない」という言葉も記載されていて、トップ6年の厳しさ凄さに思いをはせました。どれほど卓越し、努力する人でもね、山あり谷あり。

各記事

第二の道は、絶対にたくさん出来ますよね。本気で元ジェン・ユニットとか出来そうだもん。

今日のひとこま
今日のひとこま「どいてくれると嬉しいな」^^;

★ネタバレ警報★

専科から轟悠、美城れんが特出する『The Lost Glory ―美しき幻影― 』

第一次世界大戦後の空前の好景気に沸くニューヨーク。建築王と呼ばれるオットー・ゴールドスタイン(轟悠)は、美貌と才能を持つ大富豪令嬢ディアナ(夢咲ねね)との結婚を発表した。20歳年が離れている二人の結婚は、周囲を驚かせた。

オットーはその実力によってアメリカンドリームを叶えた男だが、その素性はギリシャからの貧しい移民であった。方や、ディアナはアメリカ屈指の名門キャンベル家の令嬢でニューヨーク社交界の宝石と呼ばれていた。ディアナの両親や一族は、地位をと名誉を重んじ、二人の結婚に猛反対していた。

しかし、新進の女流画家としても活躍しているディアナは周囲の反対を物ともせずに、オットーと結婚する。その二人のあずかり知らぬところで、オットーの片腕イヴァーノ(柚希 礼音)は、デイトレーダーのスタンリー(汐月 しゅう)を使って、ディアナの昔の恋人ロナルド(紅ゆずる)を株式投機の道に誘い込む。

煌びやかなゴールデンエイジの虚栄と空虚さを背景に、人間の思惑の複雑さを描き出そうとする本作。キャッチコピーは「愛する人を信じられますか?」。モチーフとなったシェイクスピアの「オセロ」とは、時代背景や人物設定はがらりと変えてある。

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シェイクスピアの「オセロ」で、オットーにあたるオセロは、アフリカ系黒人(ムーア人)の武勲の誉れ高い軍人として描かれている。イヴァーノ(柚希 礼音)ことイアーゴーは、同じく軍人であるが、同輩キャシオー(本作ではカーティス:真風涼帆)がオセロに取り立てられて自分より先に出世したことから、オセロを憎むようになる。

つまり原作では、イアーゴーの本来の憎しみの相手はキャシオー(カーティス)であるが、オセロがキャシオーを取り立てたこと、オセロが黒人なのに元老院議官の娘であるデズデモーナ(本作ではディアナ:夢咲)と結婚したことなどから、オセロをターゲットにする。原作オセロでは、イアーゴーはオセロがイアーゴーの妻エミリアに手を出したという妄想を膨らせ、オセロへの悪意を増幅させるそうだ。 イアーゴーの憎しみの裏には、黒人蔑視と出世欲がある。デズデモーナは本当にただ巻き込まれただけだ。【→シェイクスピア劇のハイライト イヤーゴ(Iago):シェイクスピアの悪党像

『The Lost Glory』で複雑だと思うのは、オットーとイヴァーノ、ディアナの関係性である。イヴァーノはなぜオットーへの復讐の材料としてディアナを選んだのだろう?会社を乗っ取られるだけでもオットーにとっては痛手のはずだ。ディアナの醜聞をでっちあげるために、ロナルドまで巻き込んでいる。イヴァーノはディアナのことをどう思っていたのだろうか。

イヴァーノとディアナが会話を交わす場面は第14場しかない。

「(オットーは)移民である劣等感から逃れられず、嫉妬に我を失い、心の弱さに打ちのめされる男」
「彼はあなた(ディアナ)の愛を得るにふさわしい男ではない」

そして第15場で、イヴァーノは、オットーに告白する。
「あなたが、憎かったからだ。あなたは、私の信頼を裏切った」
「あなたがうらやましい。このような人(ディアナ)の愛を得ることのできたあなたが…」

多くの人の人生を踏みにじってまで、イヴァーノは何をしたかったのだろうか。

結局、「移民である劣等感から逃れられず、嫉妬に我を失い、心の弱さに打ちのめされ」たのは、イヴァーノ自身であり、信頼するオットーに裏切られた絶望感に打ちのめされ、ディアナに選ばれることで自分を救おうと切望したが、それも叶わず、自滅の道を選んだとしか、私には思えなかった。

シェイクスピアの「オセロ」をモチーフに使っているとは言え、時代背景や人物設定は違うし、結末も全く違うため、これは既に植田景子氏のオリジナルと言って良いと思うのだが、どうなんでしょうね。

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ひと言感想

紅ゆずるのロベルト・マーティン。設定はちょっとストーカーっぽいんですが、思い詰めた感じが出て、「しがない美術教師」としての気持ちの動きが良くわかる演技でした。

真風 涼帆のカーティス・ダンフォード。元々の持ち味で、あんまりチャラくは見えず、好感度抜群の好青年でした。これから真面目に仕事に励み、ミラベル(綺咲 愛里)と結ばれる予感のするラスト。

オットーの母エヴァ(妃海風)。風ちゃん、包容力が増したような。『太陽王』のフランソワーズもすごく良かったですが、今回は短い登場で、ばっちり印象を残してくれました。

美城れんのサム。いやもう、言うことなし。

しーらんのおかまの宝石商。場の緊張がほぐれるナイスキャラ☆☆ しーらん=壱城 あずさ

書き足りないのですが限界。星組生みんな良い仕事してますねえ。