[OSK] 2014年7月『開演ベルは殺しのあとに-刑事X 華麗なる事件簿-』

7月12日にOSK日本歌劇団の『開演ベルは殺しのあとに-刑事X 華麗なる事件簿-』を観てきました。

OSK日本歌劇団は、宝塚歌劇団と同様に、キャストが未婚の女性だけで構成される劇団です。【団員一覧(スタープロフィール)】には40人掲載。

1922年に松竹楽劇部として結成された少女歌劇をルーツとしており、松竹傘下の大阪松竹歌劇団(OSK)を経て、近鉄傘下のOSK日本歌劇団として活動していましたが、親会社近鉄の業績悪化のため、2003年(平成15年)5月に近鉄の支援打ち切り、一時解散の憂き目に遭いました。しかし団員有志により存続活動が継続され、2014年4月に再出発をしています。劇団付属の研修所もあり、大阪ミナミを本拠地に大阪松竹座、京都南座等で公演を行っています(常設専用劇場はない)。

現在のトップスターは桜花昇ぼる。8月には退団が決まっていて、本公演には出演していませんでした。

__

今公演は、桐生麻耶(きりゅう・あさや)と楊琳(やん・りん)のW主演で、サスペンスタッチのミステリ物。

OSKは「春のおどり」などのレビュー物がメインというイメージだったが、今年からOSK Dramatic Theaterと銘打って、ミュージカルに取り組んでいるようだ。本作はドラマティック・シアターの第二弾。終演後に桐生麻耶が、「今までレビューが中心だったが、感情表現の基本はお芝居だと思うので」と(いうような)挨拶していたので、芸幅を広げるという狙いがあるのだろう。

脚本・演出は、道頓堀極楽歌劇団のスタッフであり、OSKにショー作品の提供もしている、北林佐和子氏が担当している。サブタイトルに「刑事X 華麗なる事件簿」とついているように、刑事X=アレックス(楊琳)を主役にしたシリーズ物のひとつのように感じた。

ブロードウェイを舞台に設定し、ダンスシーンも多いし、宝塚歌劇と同じように、フィナーレはキャストが勢揃いしたダンスで締めくくる。ショーダンスはさすがに迫力があり、舞台が狭く見えたほど(音響のボリュームが大きくてびっくりしたけど。(^^;)

物語は犯人である脚本・演出家のジェイ(桐生麻耶)の回想で始まる。元ダンサーのジェイは、脚本・演出を手がけてブロードウェイのヒットメーカーになる。努力家で、見栄っ張り。舞台の成功で有頂天で傲慢になっているが、世渡りがうまい方ではない。彼が売れっ子に育てた女優マリリン(舞美りら)に振り回され、妻で女優のクレア(朝香櫻子)とも別れた。そして…。

二幕では、刑事X・アレックス(楊琳)が、ジェイに目をつけ、彼を追い込み、犯行を解き明かしていく。ここでは謎解きより、アレックスが「特殊な能力」を使う過程の表現に重点が置かれている。犯人当ての推理物ではなく、叙述トリックの一種と言える。

ジェイと刑事Xが探り合う場面や刑事Xがジェイを追い詰める場面は、熱のこもった演技で見応えがあった。ただアレックスの生い立ちとその能力・ジェイの凋落・クレアの孤独・マリリンの苦悩などてんこ盛りで力点がどこに置かれているのか見えにくくなっていた。刑事X=アレックスは、キャラ立ちしていて、事件簿はシリーズ化しやすいとは思うのだが。

「OSK Dramatic Theater」は、「OSKならではの芝居」を形作っている道程なんだろうね。

【出演】
桐生麻耶/朝香櫻子/緋波亜紀/楊琳/舞美りら/遥花ここ/愛瀬光/榊紫之/実花もも/星南ゆり/美月あんじゅ/栞さな/千咲えみ/翼和希

【作・演出】北林佐和子

【会場】大丸心斎橋劇場(大阪市中央区心斎橋筋1-7-1)

【ストーリー】
ショービジネス界でヒット作を連発するジェイ(桐生麻耶)は、かつて場末のクラブで踊っていたマリリン(舞美りら)を見出し、スター女優のクレア(朝香櫻子)と張り合うまでの人気者に育てた。
だが数年後、次第にヒット作を生めなくなったジェイを、マリリンは見限り次のジェイの作品には出演しないと言う。
既にマリリン主演を条件に契約していたジェイは一計を案じ……。

数日後、マリリン失踪のニュースが世間を騒がす。
早くもクレアを代役に上演に漕ぎつけようとするジェイのもとに、一見、頼りなさそうな青年アレックス(楊琳)がやって来る。しかし彼こそ鋭い洞察力で数々の難事件を解決、その能力はX(未知)であることから、刑事Xと異名を取る天才刑事だった。

【上演時間】約2時間5分(休憩25分を含む)