[Zuka] 2014年花組『ベルサイユのばら-フェルゼンとマリー・アントワネット編』(1)

遅くなりましたが、感想を書きました。6月29日(日)に千秋楽を迎えた花組の中日劇場公演『ベルサイユのばら―フェルゼンとマリー・アントワネット編―』。

5月12日から花組新トップスターに着任した明日海りおのトッププレお披露目公演でした。組子達の気合が入った良い舞台だったなぁと、しみじみ。それそれの生徒が自分なりの役づくりで個性を発揮して、寄り添い、ぶつかりあい、支え合い、調和していた。大劇場での花組トップお披露目公演『エリザベート』が楽しみでならない。

喜びと歓迎の心がこもった明日海りおによる開演アナウンスが響いた。開演アナウンスも舞台のうちである。

小公子・小公女による「ごらんなさい」の合唱で幕が開く。宝塚歌劇の『ベルサイユのばら』であると確実に認識できるプロローグA。

プロローグBでは、フェルゼン(明日海りお)、マリー・アントワネット(蘭乃はな)、オスカル(芹香斗香)、の3人が出会った18歳の仮面舞踏会をパペット(操り人形)仕立てで描く。この場面だけ、オスカルは矢吹世奈、フェルゼンは真輝いずみが演じ、パペットのように手足をぎくしゃくと動かし、非現実感を醸し出す。

仮面をつけ、真っ白なドレスを着たマリー・アントワネット(蘭乃はな)が、オスカル(芹香斗香)によってフェルゼン(明日海りお)から引き離され、女官たちに囲まれる。18歳の皇太子妃マリー・アントワネットは、女官たちの手でドレスの白いレース部分を引き抜かれ、一瞬にして赤と白のドレスを身にまとい、豪奢な羽根飾りをつけた王妃マリー・アントワネットとして姿を現す。

過去から現在への素早い切り替わり。そしてフェルゼン(明日海りお)が、仮面舞踏会で会った時からアントワネットのことを忘れることが出来なくなったと、「愛の面影」を歌いだす。明日海りおが演じるスウェーデン貴族ハンス・アクセル・フォン・フェルゼンは、穏やかで飾り気のない美しさに溢れていた。

↑ お衣装はタカラヅカらしい豪華さだけど。

蘭乃はなは、ガラス細工のような繊細さと気品に満ちたアントワネットだった。声はやや高めのファルセットで自然に演じ切っていたのが意外というか、アルト寄りだと思っていたのだが、訓練を重ねたのだろうか。蘭ちゃんのアントワネット像があるからこそ、みりおのフェルゼン像がくっきりと浮かび上がっていた。蘭ちゃん、トップ娘役丸4年の貫録。さすが。

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昨年の雪組ベルばらはフェルゼン編だったが、今回の花組ベルばらは、 フェルゼンとマリー・アントワネット編ということで、マリー・アントワネットの出番が増えていた。1幕のキモは、6場のベルサイユ宮殿庭園の運河で、小舟に乗るフェルゼン(明日海)とマリー・アントワネット(蘭乃)の語らいである。

昼間はしきたりや儀式でがんじがらめのお人形、夜にフェルゼンと会うときだけ生きていると話すアントワネットと、18歳の時に皇太子妃とは知らず、アントワネットに恋したと答えるフェルゼン。14歳で政略結婚のためオーストリアからフランスに来たマリー・アントワネットの孤独を受け止めようとするスウェーデン貴族フェルゼン。

この場面でのフェルゼンは、フランスを支配する王の妃というより貴族の美しい女性を愛し抜く抜く覚悟で生きている人で、アントワネットも王妃ではなく、一人の恋する女性として生きている人だった。

そしてフランスの動乱の中で、この二人の想いがズレていくのが、フェルゼンとマリー・アントワネット編だった。

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フランス近衛隊の隊長であるオスカル(芹香 斗亜)は、財政が悪化しパリの街が荒んでいるのを、ベルナール(大河 凜)の案内で見る。

オスカルは、浪費が激しいと非難の的になっているアントワネットを心配し、フェルゼンに王妃と別れるように忠告する。アントワネットとフェルゼンの恋は、醜聞となって広まっていた。アントワネットの望みに応え、彼女を一人の女性として愛すと決意しているフェルゼンは激高する。

たたみかけるように、アントワネットのお目付役としてオーストリアから来ていたメルシー伯爵(英真 なおき)がフェルゼンの元を訪れ、アントワネットと別れるように諭す。メルシー伯と激しい論争するフェルゼンだったが、アントワネットがフランス王妃である現実を直視せざるを得なくなるのだった。

メルシー伯爵(英真 なおき)とフェルゼン(明日海りお)との激論は真剣勝負だった。メルシー伯はあくまでアントワネットのフランス王妃としての立場を主張する。フェルゼンは、「一人の平凡な女性でありたい」と願うアントワネットの心情をおもんばかる。議論は平行線に見えたが、オスカルに続き、メルシー伯という、心底アントワネットのことを心配する人たちの気迫にフェルゼンは葛藤し、スウェーデンに帰国することを決意する。

『ベルサイユのばら』のフェルゼンは、あくまでマリー・アントワネットありきの人なのである。雪組ベルばらは、愛加あゆの控えめで可憐なアントワネットが、壮一帆のフェルゼンの押し出しの良さを支えていた。花組ベルばらでは、アントワネット(蘭乃はな)を思う明日海フェルゼンの熱情が、蘭乃アントワネットをより美しく強く輝かせた。コンビというのは、いろいろな在り方があるものだと思う。

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スウェーデンに帰国することになったフェルゼンは、ルイ16世の問いかけに、フランス国王に忠誠の証として、心情を告白してフランスを去る。

ここで第一幕が終了する。ストーリーは「フェルゼン編」より、まとまりが良くなった気がする。宮殿でのボートの場面が幸せです。

予想外に長くなったので続く。