[Zuka] 2014雪組『一夢庵風流記 前田慶次』(2)

ぼうぼうと草むす山里で、一頭の馬が草を食んでいる。

ふさふさとした、たてがみ。野山を駆け巡る堂々たる体躯。

馬を捕らえよと叫ぶ男達。

馬に縄がかけられる。馬は首を振り、荒々しく縄を振りちぎる。

そこに、ふらりと一人の偉丈夫が現れた。

悍馬、松風の主である前田慶次郎である。

『一夢庵風流記 前田慶次』『My Dream TAKARAZUKA』
雪組『一夢庵風流記 前田慶次』 『My Dream TAKARAZUKA』

というわけで、松風(馬)大活躍!!

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幕開けは、映像で始まるのだが大河ドラマのオープニングのようであった。風を切って走る松風のシルエットが素晴らしい。壮さん演じる前田慶次が、この松風にさっそう跨がり、殺陣を繰り広げる場面は見所のひとつである。

慶次の愛馬・松風は、演者が前足、後ろ足にそれぞれ入っている歌舞伎用の特製の馬で、歩くときや走るときは、前足と後ろ足になっている役者の足が、本物の馬のようにパッカパッカと動く。この足並みの揃い方や、愛嬌のある動きに、芸が細かく巧いなぁと感心する。

※松竹座公演「花の武将 前田慶次」(片岡愛之助主演)の松風を演じた同じ役者さん(片岡千蔵、鎌田雅尋、宮田真志、出村吉織)が助っ人に来てくれているという。

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慶次(壮 一帆)は、義理の叔父である加賀国大名・前田利家(奏乃 はると)とはそりが合わず、養父・利久の亡き後、領地を捨てて出奔する。

遡れば、尾張国荒子城を治めていたのは利久であり、順当に行けば慶次が家督を継いでいたはずだ。だが利家を重用する織田信長(透真 かずき)の命により、利家が跡目を継いだ。利家も若い頃は数々の武勲をたてた、いくさ人であったが、大名となった今は保身に汲々としていた。

そんな利家にとって、傾奇者として名を上げる慶次は目の上のたんこぶである。おまけに利家の妻まつ(愛加 あゆ)は、慶次の幼馴染みで慶次びいきであり、家老の奥村助右衛門(早霧 せいな慶次の親友(莫逆の友)である。何気に肩身の狭い利家は、利久の領地を取り上げるだの、松風を献上せよだの、慶次への嫌がらせを繰り返し、己の威光を示そうとした。

慶次(壮 一帆)も、加賀藩お抱えの忍び偸組(ぬすびぐみ)を使ってまで、松風を盗もうとした利家に見切りをつけ、傾奇者として無頼に気ままに生きていくために、松風に乗って身一つで京へ旅立つ。

雪がしんしんと降る中で、落ち着いた佇まいの助右衛門(早霧 が、名残惜しそうに、傾奇者として自由に生きていこうとする慶次()を見送る。二人の短い会話の中で、互いへの確かな信頼感が感じられる。それに対して、奏乃 はるとは、落ち着きがなく、小心で見栄っ張りな前田利家という役どころを見事に演じ、第一場からそれぞれの性格と関係性がくっきりと現されていた。

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さて物語は、慶次()の味方だか敵だか、良くわからない相手が複数出てきて、こちらの理解をかき回してくれる(笑)

まず加賀藩お抱えの忍び偸組(ぬすびぐみ)。偸組(ぬすびぐみ)は、利家の命で慶次を付け狙う。偸組の忍び・捨丸(咲妃 みゆ)は、兄の敵を討つため慶次のもとに押しかける。偸組は慶次に対して完全に敵対している上に、頭領・四井主馬(彩凪 翔)の兄で、家を出ていた牢人の雪丸(未涼 亜希)が登場し、さらに混迷を深めていく。

つぎに、庄司又左衛門(香綾 しずる)が率いる傀儡子(くぐつし)の集団である。又左衛門と息子の甚内(月城 かなと)は、旅芸人の一座である傀儡子の長であるが、仕官していない武士=牢人として登場する。浮動票のような存在である。

そして諸国を漫遊する大物っぽい二郎三郎(一樹 千尋)。歌比丘尼(早花 まこ)と願人坊主(久城 あす)を引き連れ、騒乱の始まりを嬉しそうに見ているという、いかにも「わしは黒幕だぞ。ふふふ」と言う風体である。

なんだろう、主役の慶次()自体が、何をするか判らない傾奇者なのに、周囲もあやしいのばっかり揃えて、どこへ行くんだよ、この話は!言うのが、舞台前半でした(笑)。

京都で、慶次に負けて、手下にさせられた深草重太夫(夢乃 聖夏)とその姉弟である深草屋しげ(麻樹 ゆめみ)、深草重三郎(彩風 咲奈) も賑やかしというか、美味しい役を好演していて、登場人物が個性派ばっかりなのである。

楽しい(笑)

続きまする。