ドラマとか見てあんまり泣かないんですが、タカラヅカでは、『モンテ・クリスト伯』、『翼ある人々』、『シトラスの風II』の3演目で涙ぐみました。全て宙組公演なんですが、なんでしょうか。相性が良いんでしょうかね。『モンテ・クリスト伯』は感想にも書きましたが、ダンテス(かなめさん)とメルセデス(みりおん)が相対する場面で、『翼ある人々』はシューマン(キタさん)が、いまわの際でブラームス(まーさま)と話している場面です。
『シトラスの風II』は、プロローグと第6章『明日へのエナジー』の2場面。思ったのは、コーラスの宙組は健在だなというのと、ショースターは自然に生まれるものではなくて作るものだと。大切なのは自覚で、それがあってのチャンス。細かいことは気にしない。「無理をせず。基本を大切に」。ファンは待っているよ。
作・演出の岡田敬二氏によると、シトラスとは、地中海地方産の柑橘類の事で、タイトルには、「新鮮でさわやか」の意味が込められているという。『シトラスの風』は宙組の第一回公演(トップコンビは姿月あさと・花總まり)で上演され、今回は中日劇場版として構成がかわり、『シトラスの風II』として登場した。時間も5分ほど短縮されている。
いまから見ても、宙組の立ち上げメンバーは、姿月あさと(初代宙組トップ)、花總まり(トップ娘役の在任期間最長記録保持者)、和央ようか(二代目宙組トップ)、湖月わたる(組替え後、星組トップ)と凄い面子だ。100周年のこの年に、『シトラスの風II』と『ロバート・キャパ』を、宙組で再演できた意義は大きい気がする。
プロローグは、組子達が階段にスタンバっている板付きの幕開け。
組子の着ているお衣装の色が目にも鮮やかなシトラス・カラー↑(画像)で、ライム系のグリーンからブルー、イエローとグラデーションになって階段を埋め尽くしている。基本的に宝塚歌劇のお衣装は、色あわせが見事で、キンキラキンでもカラフルでも下品にならない。ああいう繊細な色がのるっていうのは多分、生地が良いのだろう。
並びが緩やかに崩れて、舞い始める組子達。娘役がお衣装をひるがえして舞う。優雅な美しいドレス捌きは、娘役ならでは。
組子達が左右に割れ、中央から赤みがかった濃いピンクのお衣装の凰稀 かなめが現れる。
実咲 凜音が上手から登場し、凰稀 かなめと踊りだす。そしてリフト。
二人の左右にパープル系のお衣装を着た、蓮水 ゆうやと七海 ひろきが並ぶ。
美しい光景だった。
全員が揃っていたらもっと良かったのかもしれないけれど、DC公演のほうもとても素敵な舞台だったし、DC公演メンバーもこの公演を観に来てはしゃいでいたので、これはこれで有りなんだろう。とにかく、宙組のパワーを感じた。(しかし本当に2番手3番手扱いなんですね。びっくりした。みんな、どこへ行っちゃったのと客席で思っていた←答:DC公演です)。
第2章のステート・フェアは、アメリカの各地で年に1回開催されるお祭り(収穫祭・品評会)【→ワイオイング・ステイト・フェア】だそう。
ステート・フェアに向かうトロリー列車にのって、パラソルを持った乙女達が歌う。森の中で開催されているステート・フェア会場には老若男女が集まり、お祭りを楽しんでいる。突然、激しい雨が降り出し、会場に残ったフレッド(凰稀 かなめ)とアグネス(実咲 凜音)は恥じらいながら見つめ合ってデュエットを踊る。しっとりとしたダンス。そして晴れ間が見え、人々がふたたび集まり、ステート・フェアを祝って大コーラス。アットホームで和気あいあいと楽しい場面で、レビューに慣れていない人でも楽しめる。
写真屋のこずちゃん(天風いぶき)が、1人だけ違った格好で目立っていました(笑)。
間奏曲の「スマイル」を蓮水 ゆうやと七海 ひろきが歌い、そして中詰のラテンな「そよ風と私」へ。 私は、かなめさんの「オラオラ」というかけ声が勢いがあって大好きで、あの嫋やかで美しい姿から出るとは思えないほど、たくましくて頼もしい。
かなめさんとみりおんのお衣装が、頭をすっぽり覆う赤のターバンと赤地に白の水玉で、最初は「イチゴ?」と思ってしまいました。ごめんなさいごめんなさい。イチゴはシトラスではなくて、バラ類バラ科です。←ヲイ。この場面のお衣装は色の洪水で、ちーさまのお衣装が紫にオレンジ(水玉いり)、かいちゃんが緑にピンク(水玉いり)と、とにかくカラフルで元気印。かいちゃんが笑顔だった。
3組のデュエット(凰稀 かなめと実咲 凜音、蓮水 ゆうやと大海 亜呼、七海 ひろきと愛花 ちさき)もあり、楽しい好きな場面ですね。
第4章ノスタルジアは、1860年シチリアが舞台の哀しい恋のショートストーリー。実咲 凜音がソロで歌った、プッチーニのアリアにガツンとやられた。みりおん、あの細い身体でいくらマイクがあるとは言え、鳴り響くような美しいソプラノでした。そしてマチルド(実咲 凜音)を取り合う、セバスチャン(寿つかさ)とヴィットリオ(凰稀 かなめ)。すっしーさんが、すっしーさんが、上着を脱いで開襟してた。無言の気迫がね、すごかった。
第5章のロケットは、16人といつもの半分ほどで、下級生男役が、ぶいぶい踊っている中で、かのちゃん(花乃まりあ)が可憐に踊っていました。
第6章『明日へのエナジー』は、原曲はFavorite Song Of All 作詞・作曲Dan Deanのゴスペル。宝塚版の歌詞は岡田先生なんでしょうか?真ん中の3人を中心に組子は歌い踊り、魅せる。踊りまくる組長すっしーさん。あおいさん(美風 舞良)が率いるコーラス部隊(天風いぶき、瀬音 リサ、花咲 あいり、桜音 れい)が素晴らしい。今の宙組のエネルギーが爆発する見応え聞き応えたっぷりの名場面です。
人として生まれた誇りに満ちて
人であることの喜びあふれて人として生きる
愛と夢で 繋がろう……
さあ飛んでゆけ さえぎるものはない
限りない力と 輝く若さと 夢を信じて(『明日へのエナジー』Favorite Song Of All 作詞・作曲Dan Dean)
その後、燕尾服の紳士と淑女のデュエット。燕尾服の紳士達によるボレロ。そしてパレード。時間があっという間に経った。『翼ある人々』と合わせて、100周年の宙組を見せてもらった。嬉しい。私は笑顔のかいちゃんが好きだな、と再認識した公演でした。引きつった作り笑いは謹んでお返しするけどw。
←テーブル |
ロマンチック・レビュー『シトラスの風II』
作・演出/岡田 敬二
[解 説]
1998年に姿月あさと・花總まりを中心とした宙組で上演された、岡田敬二のロマンチック・レビュー・シリーズ第12弾。「シトラス」は地中海地方に産する柑橘類、総じて“清々しさ、爽やかさ、若さ”を意味し、“飛翔”“誕生”など新しい時代への飛躍をテーマとした作品。今回は、凰稀かなめを中心とした宙組のためにリメイクした舞台となります。