[Zuka] 2013年雪組『Shall we ダンス?』(2)

開演から2週間ほどたって舞台はこなれてきて、客席にも暖かいムードが流れていました。各キャストの感想です。以下、箇条書き。

ヘイリー・ハーツ@壮一帆の歌う主題歌Refrainに優しさが溢れていて涙目になる。静かな夜の街に似合うバラード調だが、繰り返す日常の息苦しさに戸惑い、自分を変えたいと明日へ向かう人たちへの限りない愛情が籠もっていた。

夢乃聖夏のラテン好きドニー・カーティスが、ますますノリノリになっていた。最初は、「会社の連中を見返してやりたいんですぅ」と、身体をくねらせて言っていたドニーが、競技会途中棄権の記事をキャシー@透水 さらさ達に嘲笑されても、敢然と立ち向かい、ボールルームダンスを馬鹿にされたことを怒る。競技会を経て、ドニーも何かが変わったんだなぁ。そしてキャシーはドニーに一瞬で変えられてしまった。ドニー・キャシーコンビの誕生かも。ドニー@夢乃を友人として、対等にがっつり受け止められる、ヘイリー@壮に懐の深さを感じる。

早霧せいなのエラは、女っぷりを上げて、きりりとした清潔感ある色気を漂わせていた。前半はピンと張り詰めた緊張感を保っているが、ヘイリー達が競技会に出ることになった途端に雰囲気が柔らかくなる。エラは、本当に競技ダンスの世界を愛している女性なのだ。

大湖 せしるのバーバラは最初は男好きっぽい態度で登場するが、実際は気っぷの良い姉御肌の女性だった。競技会でドニーを叱咤激励する姿が素晴らしい。大湖せしるは男役の経験を存分に活かして、変化自在の活躍ぶり。安定感も抜群である。

ダンス教室に入会してきた不器用なサラリーマン・ジャン@鳳翔 大とチャラいホストのレオン@彩風 咲奈が、真面目ヘイリーとラテンなドニーの緩衝材になっている。ジャン@鳳翔のもじもじ感をものともしないレオン@彩風のチャラさがGood。鳳翔 大は『春雷』、彩風 咲奈は『若き日の唄は忘れじ』で、それぞれ一皮むけたようだ。

ボールルームダンス競技会で婚約者アニス@早花 まこと踊るジャン@鳳翔の表情が面白すぎて、オペラで追いかけてしまった。レオン@彩風と踊るバーバラの娘コニー@桃花 ひなは、バーバラを支えて生活しているしっかり者で、さすがのレオンも大人しくなりそうである。ヘイリーの娘エミリア@星乃 あんりは中学生、コニー@桃花 ひなは高校生の設定だと思うのだが、中学生と高校生が観客に分かるように選ばれたお衣装や演技に感心する。

探偵クリストファー@奏乃 はるとと、代役で抜擢された探偵助手ポール@帆風 成海のコンビが絶妙に巧い。奏乃 はるとが、帆風 成海のコミカルで機転の利いた演技を受け止めて相乗効果を上げている。帆風 成海は役を自分のほうにたぐり寄せて、自分の個性を発揮できるタイプで本番に強いね。

ダンスインストラクターのアーカム@香綾 しずるは、なんだろう密かにへんな面白さを発揮している。キザでナルシストっぽいのだが、ダンス教師としての本分は忘れない律儀さが良い。同じくダンスインストラクターのリジット役の夢華 あみは品の良い華がある。退団は惜しいが実力がある人なので、外部で思いっきり活躍して欲しい。

教室で一番(?)年長のダンスインストラクターのシーラ@梨花 ますみは、気の良い世話好きさんだが、バーバラ@大湖の生活状況を知った後で、「苦労していない人なんていないわよ」と、さらりと言う。そのさらり感だけで、「ああ、この人も苦労してきたんだ」と思ってしまった。たった一言の台詞で、その人の人生を表現してしまうという芸の凄み。これは年を重ねないとできない、としみじみ。個性の代わりはない。

ダンスホールのエキシビションや競技会で踊るダンサー達が華やかで、張り切って楽しげに踊っているのが嬉しい。ボールルームダンスは宝塚歌劇のレビューのダンスやバレエとは違うねえ。ステップ難しそう(ひえ)。新人公演の感想は後ほど。